平成26年 5月29日(木):初稿 |
○「後遺障害等級標準労働能力喪失率と異なる認定の札幌地裁認判決全文紹介4」を続けます。 ***************************************************** 6 入通院慰謝料 278万円 入通院慰謝料については、原告は、前記のとおり、入院日数は138日であり、症状固定日である平成11年1月20日までの通院実日数は327日間(証拠略)の通院治療を受けたところ、治療経過等の諸事情を勘案すれば、入院は4.5月、通院期間はその余の2年2月とみて、278万円と認めるのが相当である。 7 後遺障害慰謝料 270万円 原告の後遺障害等級は12級と評価すべきものであるから、後遺障害の慰謝料は270万円が相当である。 8 抗弁(心因的要素による減額の有無)について 被告は、原告の症状について心因的要素があり、損害を減額すべきである旨主張するところ、確かに、証拠(括弧内に掲記する)によれば、平成8年12月25日付けのU病院の報告書中には、原告には心因的要素もありそうである旨の記載があり(証拠略)、平成10年3月4日のカルテには、「自賠責をまだ切れていない。困った。なかなか言い出せない。」「自賠責…そろそろ打ち切る頃」との記載があり(証拠略)、同年7月15日の同病院作成の書簡には、原告は、症状を訴えながら涙を流すなどの精神的な面も強いと思われる旨の記載があり(証拠略)、また、同月22日付けのN病院作成の診療情報提供書には、「抑うつ状態疑い」「やや神経症傾向はあるものの、心身症タイプで抑うつもあることから、やはり、末梢性の」神経性の痛みが抑うつ気分「で強められているということかも知れません」との記載がある(証拠略)ことが認められるが、証拠(略)及び前記認定の治療経過に照らすと、これらの記載が指摘する原告の心因的要素は、本件事故により発生した原告の疼痛等の症状が長期間慢性化し、そのための入通院治療を繰り返しているにもかかわらず、痛みが消失しないこと等についての原告の心理的不安感、焦り、いらだち、絶望感等によるものであると認めるのが相当であり、前記記載をもってしても、事故により障害を負った患者が陥る通常の心理状態の域を超えて、素因による減額をすべきであるような原告の特異な性格や精神的要因の存在を認めるには足りないから、被告の主張は採用できない。 9 損害の填補 請求原因(4)エは当事者間に争いがなく、原告が損害の填補を受けた747万1728円を損害金額合計2057万7271円から控除すると、損害残金は1310万5,543円となる。 10 弁護士費用 131万0554円 本件事案の内容、審理経過及び認容額その他諸般の事情を斟酌すると、本件事故と相当因果関係のある原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用は、131万0554円であると認めるのが相当である。 11 結論 以上によれば、原告の本訴請求は、被告らに対し、各自1441万6097円及びこれに対する本件事故の日である平成8年7月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこの限度で認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法64条本文、61条、65条1項本文を、仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日 平成17年12月13日) 札幌地方裁判所民事第3部 裁判官 生野 考司 以上:1,453文字
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