仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 交通事故 > 任意保険会社への直接請求 >    

加害者代位請求についての昭和57年9月28日最高裁判決まとめ

   交通事故無料相談ご希望の方は、「交通事故相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
平成26年 5月 8日(木):初稿
○「加害者代位請求についての昭和57年9月28日最高裁判決全文紹介」の続きで、そのまとめです。
昭和57年9月28日最高裁判決(判タ478号171頁)は、自動車保険普通保険約款に、加害者の保険会社に対する保険金請求権は、加害者と被害者との間で損害賠償額が確定したときに発生し、これを行使することができる旨の規定があつても、被害者が加害者に対する損害賠償請求と保険会社に対し加害者に代位してする保険金請求とを併合して訴求している場合には、右保険金請求訴訟は将来の給付の訴えとして許されるとしました。

○この判決の事案は、第一審である昭和53年11月30日東京地裁判決(判例タイムズ382号118頁、判例時報924号115頁)を見ると判りますが、次の通りです。。
・昭和51年8月23日の交通事故で死亡した子の両親が、加害車両保有者A社に対し損害賠償(各自1798万円)の支払を求める訴え提起
・同時にA社に代位し保険会社である東京海上に対し、A社が東京海上に有する自動車対人賠償責任保険金の支払を求める訴えを併合提起
・両親は、A社に損害賠償請求権があるが、A社は支払能力がなく、A社は東京海上に保険契約に基づく保険金請求権があるので民法第423条で代位請求ができると主張
・論点は、両親のA社対する損害賠償請求の損害額が確定される前に、A社に代位してA社の東京海上に対する保険金を請求することができるかどうか

○これに対し、一審判決は、昭和51年約款17条によると、被保険者(A社)の保険者(東京海上)に対する保険金請求権は、損害賠償責任額について被保険者と損害賠償請求権者との間で判決が確定したとき、または裁判上の和解、調停もしくは書面による合意が成立したときに発生し、これを行使することができるとされており、本件においては、右いずれの条件も満たされないことが明らかであるから、被保険者たるA社の保険金請求権は発生しておらず、したがつて、両親が東京海上に対し、A社の保険金請求権を代位行使するに由ないとして、両親の東京海上に対する請求を棄却しました。

○これに対し、原審昭和54年11月28日東京高裁判決(民集 36巻8号1671頁、交民12巻6号1477頁)は、被害者が同一訴訟手続内で加害者に対して損害賠償を請求するとともに、保険会社に対し加害者の保険金請求権を代位行使して保険金の支払を併せ請求し、併合審判のされる場合においては、裁判所は、被害者の加害者に対する損害賠償請求を認容するとともに、被害者の加害者に代位してする保険金請求を将来の給付請求としてその必要性があるかぎり認容することができるとして、A社や東京海上が両親に対する損害賠償義務、保険金支払義務を争つていることや両親の速やかな救済が必要とされることを考えれば、本件はあらかじめその請求をなす必要がある場合にあたるということができるとし、東京海上は、両親のA社に対する本判決が確定したときは、A社の損害賠償すべき範囲内にある保険金請求に応ずべき義務があるとして、条件付きで東京海上に支払を命じました。

○そこで、東京海上が上告し、両親の保険金請求権の代位行使を認めたうえ東京海上に対し将来の給付として保険金の支払を命じた原判決には法令の違背があると主張しましたが、昭和57年9月28日最高裁判決は、被保険者(A社)の保険金請求権は、保険事故の発生と同時に被保険者(A社)と損害賠償請求権者(両親)との間の損害賠償額の確定を停止条件とする債権として発生し、被保険者(A社)が負担する損害賠償額が確定したときに条件が成就して保険金請求権の内容が確定し、同時にこれを行使することができることになり、且つ、害賠償請求権者(両親)が、同一訴訟手続で、被保険者(A社)に対する損害賠償請求と保険会社に対する被保険者の保険金請求権の代位行使による請求(保険金請求)とを併せて訴求し、同一の裁判所において併合審判されている場合には、被保険者(A社)が負担する損害賠償額が確定によつてこの停止条件が成就するので、裁判所は、損害賠償請求権者の被保険者に対する損害賠償請求を認容して、この認容損害賠償額について債権者代位に基づき保険会社に支払を命じることが出来るとしました。

○この事案は、両親が損害賠償請求債権者として有する債権者代位権に基づき代位行使として加害者A社の東京海上に対する保険金請求の支払をしたものです。昭和51年当時はすでに現在と同じ直接請求約款があったはずで、この約款に基づいて被害者として保険会社に損害賠償請求権の直接行使をすれば良かったものを、債権者代位なんて回りくどい請求をしたため面倒なことになりました。当時、まだ直接請求約款が弁護士に知れ渡っておらず、伝統的に行われていた代位請求になったものと思われます。

○しかし、直接請求約款が知れ渡るようになってからは、代位請求ではなく約款1号要件の「判決確定」を停止条件とする直接請求訴訟が一般的に行われるようになり迂遠な代位訴訟は取られなくなりました。私の直接請求は、3号要件の「損害賠償請求権不行使承諾書面提出」を要件とする直接請求です。おそらく、この要件での直接請求は、日本で初めてのだったと思われます。それまで誰もやっていないことをやると、抵抗されるのが常ですが、何しろ、約款そのままを請求原因としていますので、相手方になった弁護士の殆どは事前に「損害賠償請求権不行使承諾書面提出」があれば争わないとして50数件の3号要件直接請求訴訟が行われてきました。

○上記の通り3号要件での損害賠償請求権直接請求と昭和57年9月28日最高裁判決の保険金代位請求とは、事案は全く異なりますが、平成26年3月28日仙台高裁判決は昭和57年9月28日最高裁判決論理を誤って適用した驚愕の論理で3号要件直接請求を否認しました。これは最高裁でなんとしても正して貰わなければなりません。
以上:2,427文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
交通事故無料相談ご希望の方は、「交通事故相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 交通事故 > 任意保険会社への直接請求 > 加害者代位請求についての昭和57年9月28日最高裁判決まとめ