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平成26年 5月 2日(金):初稿 |
○「驚愕の約款3号直接請求否定平成26年3月28日仙台高裁判決全文紹介3」を続けます。 最高裁判決(最高裁昭和55年(オ)第188号同57年9月28日第3小法廷判決・民集36巻8号1652頁)を援用して、交通事故の被害者は、加害者に対する損害賠償請求訴訟を提起することと併せて、保険会社に対する将来給付の請求訴訟を提起し、両者を併合訴訟とすることによって、容易に任意保険会社から直接に損害賠償額の支払を受けることができるのだから、保険会社だけに直接請求しても、ダメだとの結論です。私は、実質当事者の被害者対保険会社紛争実態に合わせるため敢えて加害者には請求せず、保険会社だけに請求するために、約款3号要件の加害者自身に請求しないことを書面による承諾をして、保険会社に直接請求しています。敢えて加害者には請求しないで保険会社のみに請求しているのに、加害者に請求すれば足りるとの結論は、論理がまるでかみ合っていません(^^;)。 ○高裁判決では、一審判決で全く触れなかった頭部MRI冠状断像上、通常は造影されない小脳テントや大脳鎌が白く造影されている事実に触れて、「控訴人には低髄液圧症候群が発症している疑いは強いということはできる。」と述べてくれました。しかし、最終的には、その他の基準を100%満たしていないので、「高度の蓋然性の立証がされていると認めることはできない。」として、ナッシング判断でした。基準を100%満たしていないとしても、少なくとも80%程度は満たしているのだから、現実に発生している損害の80%は認めて下さいよと、強く、訴えたいところです。 ********************************************************** (4) これに対し、控訴人は、直接請求権は被害者保護のための制度であり、上記のような解釈を採ることは、直接請求権が被害者保護のための制度であるとの制度趣旨に反すると主張するが、交通事故の被害者は、加害者に対する損害賠償請求訴訟を提起することと併せて、保険会社に対する将来給付の請求訴訟を提起し、両者を併合訴訟とすることによって、容易に任意保険会社から直接に損害賠償額の支払を受けることができることに照らせば、上記のような解釈を採ることによって、控訴人の具体的な権利利益が侵害されるとはいえないのであって、控訴人の主張には理由がない(このような併合型の訴訟は、被害者が加害者(被保険者)に対する損害賠償請求権に基づき債権者代位権を行使して加害者(被保険者)の保険会社に対する保険金請求をする場合において、最高裁判決(最高裁昭和55年(オ)第188号同57年9月28日第3小法廷判決・民集36巻8号1652頁)が許容しており、また直接請求権に基づく訴訟においても実務上広く行われている。また、このような訴訟形態を損害賠償請求権者に求めたとしても過大な負担を課すものともいえない)。 よって、その余の争点について検討するまでもなく、控訴人の上記請求は理由がない。」 2 当審における控訴人の主張に対する判断 (1) ア 控訴人は、MRI画像上、控訴人の小脳テント及び大脳鎌が連続して造影されており、びまん性の硬膜造影所見が認められることからみて、控訴人に低髄液圧症候群が発症していることが明らかであると主張する。 そこで検討すると、証拠(甲39、41)によれば、MRI画像上、控訴人の頭部MRI冠状断像上、通常は造影されない小脳テントや大脳鎌が白く造影されている事実が認められるところ、厚労省研究班基準は、起立性頭痛がなく、びまん性の硬膜造影所見のみが認められる場合を低髄液圧症候群の「強疑」所見としているのであるから(乙10)、控訴人には低髄液圧症候群が発症している疑いは強いということはできる。しかし、他方で前記基準は、「起立性頭痛を前提に、びまん性の硬膜造影所見と60mmH2O以下の髄液圧(仰臥位・側臥位)」があった場合にはじめて低髄液圧症候群の「確定」所見とし、前記所見と明確に区別しているのであって(乙10)、びまん性の硬膜造影所見のみから低髄液圧症候群の確定診断ができないことは、国際頭痛分類基準(第2版)、脳神経外傷学会基準、研究会ガイドラインのいずれによっても同様であるのだから(原判決別紙1から3まで参照)、前記MRI画像検査の結果を踏まえても、起立性頭痛が認められない控訴人について、低髄液圧症候群発症につき、前記の強い疑いを超えて、高度の蓋然性の立証がされていると認めることはできない。 イ 控訴人は、本件各事故直後の起立性頭痛の発生を否定した原判決の認定には事実認定の誤りがあると主張するが、これが発生していたとは認められないことは、前記引用に係る原判決第3の1(3)アに説示のとおりであって、控訴人の主張は採用できない。 (2) 控訴人は、本件約款25条を本件に適用した原判決の誤りを主張するが、その当否を検討するまでもなく、控訴人の主張に理由がないことは上記1(4)に説示のとおりである。 3 以上によれば、控訴人の請求は理由がなく、いずれも棄却すべきであるから、これを棄却した原判決は結論において正当であり、本件控訴には理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官 水野邦夫 裁判官 本多幸嗣 裁判官 楕松晴子 以上:2,228文字
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