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交通事故被害者の加害者任意保険会社に対する直接請求権復習

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平成25年 5月28日(火):初稿
○交通事故被害者の加害者任意保険会社に対する直接請求権について、保険毎日新聞社発行「自動車保険の解説」記載の約款サンプルを元に関係約款条文とその趣旨等について、私なりの解説を※を付した文章として整理します。
先ず関係約款から記載します。

第2条(保険金を支払う場合-対人賠償)
(1)当会社は、対人事故により、被保険者(※加害者)が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、この賠償責任条項および基本条項に従い、保険金を支払います。


※この規定は、①対人事故の発生と②被保険者(※加害者)が法律上の損害賠償責任を負担することによって損害を被ることの2要件充足によって、保険会社が被保険者(加害者)に「保険金」を支払うことを定めています。これは保険会社から被保険者に支払う「保険金」についての規定であり、損害賠償金ではありません。この被保険者(加害者)から保険会社に対する「保険金」の請求に関しては約款第23条(保険金の請求)以下に規定していますが、被害者の「損害賠償金」についての直接請求とは無関係なので解説はしません。

第10条(当会社による解決)
(1)被保険者が対人事故にかかわる損害賠償の請求を受けた場合、または当会社が損害賠償請求権者から次条の規定(※直接請求)に基づく損害賠償額の支払の請求を受けた場合には、当会社は、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社の費用により、被保険者の同意を得て、被保険者のために、折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続(注)を行います。
(注)弁護士の選任を含みます。
(2)(1)の場合には、被保険者は当会社の求めに応じ、その遂行について当会社に協力しなければなりません。
(3)当会社は、次のいずれかに該当する場合は、(1)の規定は適用しません。
①乃至③(省略)
④正当な理由がなく被保険者(※加害者)が(2)に規定する協力を拒んだ場合


※これは被害者から対人事故にかかわる損害賠償について
①被保険者(加害者)が請求を受けた場合
②保険会社が直接請求を受けた場合
に、対人事故解決のため保険会社が被保険者に代わって、直接、被害者と「折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続」を行うことを規定したものです。
保険会社が被害者と直接「折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続」を行うことは弁護士法第72条(非弁活動の禁止)違反となる恐れがあり、「被害者直接請求権」と合わせて、保険会社に当事者性を持たせるために規定されたものです。
この規定により保険会社は、被害者に「代わって」、「折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続」を行う面(代理人的側面)と、保険会社自身が直接被害者に対し債務を負う当事者としての面(本人的側面)と2面を有することになります。

第11条(損害賠償請求権者の直接請求権-対人賠償)
(1)対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者は、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社に対して第3項に定める損害賠償額の支払を請求することが出来ます。
(2)当会社は、次の各号のいずれかに該当する場合に、損害賠償請求権者に対して(3)に定める損害賠償額を支払います。ただし、当会社がこの賠償責任条項および一般条項に従い被保険者に対して支払うべき保険金の額(注)を限度とします。
(注)同一事故につきすでに支払った保険金または損害賠償額がある場合は、その全額を差し引いた額
①損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額については、被保険者と損害賠償請求権者との間で判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合
②被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合
③損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合
(以下省略)


※これは対人事故被害者が保険会社に対し損害賠償請求額(※保険金ではありません)を「直接」請求できることを定めた規定です。

自動車損害賠償保障法第16条(保険会社に対する損害賠償額の請求)
 第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる

との規定で、被害者が自賠責保険会社に直接請求できる損害賠償請求権と同様規定ですが、こちらは自賠法で認められていますが、任意保険会社に対する直接請求は約款で認められたものです。

この被害者直接請求権は、保険会社が直接支払義務を負うことにして当事者性を持たせることによって、弁護士法第72条で禁止された他人の法律事務を取り扱うことに違反するのではとの疑問を解消し、最終的には被害者救済をより充実させるために設けられたものです。

その法律構成は、保険会社と保険契約者との間で締結される責任保険契約で被害者に対して直接請求権を付与する第3者のためにする契約(民法第537条)とされ、この契約により被保険者(加害者)が損害賠償請求権者(被害者)に対して負担する損害賠償債務を保険会社が重畳的に債務引受をして、第3者である被害者の受益の意思表示は保険会社に直接請求をしたときになされたと評価出来ます。

直接請求権が発生する要件は、
①対人事故により、被保険者(加害者)が法律上の損害賠償責任を負担すること
②保険会社が被保険者に対し支払責任を負担すること
であり、被保険者(加害者)の同意は、直接請求権「発生」の要件ではありません。

但し、直接請求権を行使しても、これに対し保険会社が支払を実行するための要件が定められており、主なものは被保険者(加害者)の負う法律上の損害賠償責任の額ついて
①被保険者(加害者)と損害賠償請求権者(被害者)との間の判決確定・裁判上の和解もしくは調停の成立
②被保険者と損害賠償請求権者との間での書面による合意成立
③損害賠償請求権者(被害者)が被保険者(加害者)に対し請求しないことを承諾する書面の提出
の3つです。

私が利用しているのは③で、免責証書とも呼ばれますが、これは免責証書の提出を受けて保険会社が損害賠償額を支払った後は、被保険者(加害者)は再び損害賠償請求権者(加害者)から請求を受けることはなく当該対人事故は解決したことになります。この支払条件は被保険者(加害者)の負担する損害賠償責任の内容を事実上確定させるものですが、直接請求に際し、予め損害賠償請求権者(被害者)に承諾書(免責証書)を提出させることを条件とするものでなく、支払のための条件です。

以上:2,769文字

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