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平成24年7月31日横浜地方裁判所判決紹介3

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平成24年11月27日(火):初稿
○「平成24年7月31日横浜地方裁判所判決紹介2」の続きです。



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オ C病院
(ア) 平成19年7月に原告が作成した、C病院の丁山医師の診療予約申込書には、「常に頭痛がする」「頭が重い」という項目には○が付けられているものの、「起き上がっているときのみ頭痛がする」という項目には○が付けられていない。
 原告は、平成20年11月5日から、C病院への通院を開始し、丁山医師の治療を受けた。

(イ) 原告は、平成20年11月29日、MRミエログラフィー検査を受けた。

(ウ) 原告は、平成20年12月1日、頭部のMR検査を受けた。同検査において、硬膜の肥厚増強効果の所見は認められず、小脳扁桃の位置にも異常は認められないと診断された。

(エ) 原告は、平成20年12月1日、RI脳槽シンチグラフィー検査を受けた。同検査によると、RI注入から1時間後に膀胱内にRI集積がみられたほか、3時間後及び6時間後の画像上、腰椎部からRIが滲み出ている様子が映し出されている。また、RI残存率は、24時間後で17.2%であった。

(オ) 原告は、平成20年12月2日に、ブラッドパッチを受けた。その後、原告の症状は改善傾向にあり、丁山医師は、平成21年3月2日、原告について、復職可能である旨の診断書を書いた。

(カ) 原告は、平成21年6月29日及び同年12月28日に、MRミエログラフィー検査を受けた。

(キ) 原告は、平成22年1月6日、ブラッドパッチを受けたが、症状は、軽減しなかった。

(ク) 原告は、平成22年6月2日、RI脳槽シンチグラフィー検査を受けたが、同検査においては、膀胱内のRI集積は注入6時間後に見られ、髄液漏出の所見はなく、24時間後のRI残存率は31%であった。

カ L接骨院・Dクリニック
 原告は、平成17年9月29日から平成18年10月31日まで、頸部捻挫及び右前腕部挫傷のため、L接骨院に通った。
 また、原告は、平成21年10月23日から、Dクリニックに通院している。

キ 等級認定等
 原告は、平成20年7月16日、G共済により、自賠法施行令別表第二第14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当すると判断された。

ク 勤務状況等
(ア) 原告は、昭和57年12月に生まれM大学を卒業し、平成17年4月にF会社に入社して、工作機械を使って金属を削る等の仕事をしていた。
 原告は、本件事故後、同社を休職し、同年9月22日に出勤したものの、痛みにより、翌日から再び休職した。その後、平成17年11月30日付けで、F会社を退職した。
 原告は、平成19年に、レンタルビデオ店で、約2ヶ月間、週に3回、1回約6時間、DVD等の貸出しや返却等のアルバイトをした。
 原告は、就職活動をし、平成20年1月21日、N会社に入社し、当初は鎮痛剤で痛みを抑えて仕事をしていたものの、梅雨になって頭痛等の症状が悪化し、また、薬の副作用による倦怠感等があり、復職したが、平成21年10月27日ころに再び休職し、平成22年11月30日付けで、休職期間満了のため、同社を退職した。
 上記休職の後、原告の症状に特段の改善はなく、働いていない。

(イ) 原告は、B病院で、痛みを抑えるため、星状神経ブロック及び頸部硬膜外ブロックによる治療を受けていた。
 原告は、B病院で、麻薬性の鎮痛剤であるリン酸コデインの処方を受けていたが、痛みの増大により、C病院でモルヒネの処方を受け、その後、平成23年8月からは、モルヒネより鎮痛作用がかなり強いフェンタニルの処方を受けている。

(ウ) 平成23年9月16日時点の原告の症状は、拍動性頭痛(脈の動きで感じる頭痛)、緊張性頭痛(常に肩が凝って起きる頭痛)、光による頭痛(不意に光を見たときに起こる頭痛)、耳なり、後頸部痛、あごの違和感、背痛、腰痛などである。

ケ 脳脊髄液減少症の診断基準
(ア) 脳脊髄液減少症ないし低髄圧症候群は、硬膜から髄液が漏れ出し、頭蓋内圧が低下し、又は脳組織が下方変位し、頭痛等が生ずるという病態である。
 立位では髄液漏出が増大するため、頭痛が悪化し、臥位では症状が改善する(起立性頭痛)のが一般的である。

(イ) 国際頭痛学会が発表した国際頭痛分類のうち、特発性低髄液圧性頭痛(髄液漏れの原因が不明なもの)の診断基準(以下「国際頭痛分類基準」という。)は、別紙1のとおりである。

(ウ) 日本脳神経外傷学会は、髄液漏出の診断方法が医師によって異なっていたことから、科学的根拠に基づく診断基準等を確立するため、「頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会」を設置し、同部会は、別紙2の外傷に伴う低髄液圧症候群の診断基準(以下「脳神経外傷学会基準」という。)を発表した。

(エ) 丁山医師を委員長とする「脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会」は、別紙3の診断基準(以下「ガイドライン基準」という。)を作成した。

(オ) 厚生労働省の研究班である「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班」は、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)が頭頸部外傷後に続発すると報告されたことに端を発し、あたかもむち打ち症の患者のすべてが脳脊髄液減少症であるかのごとく誤解されるなどの事象が生じており、その原因は、医師ごとに独自の診断基準を用いていたことにあるとして、厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業として、脳脊髄液減少症の研究を行い、平成23年10月ころ、その中間報告を行った。同中間報告には、暫定的な診断基準(内容は別紙4のとおり。以下「厚労省中間報告基準」という。)が含まれている。

(2) 原告は、本件事故により脳脊髄液減少症を発症したと主張し、その証拠として丁山医師の意見書を提出し、また、丁山医師は、証人尋問において、同旨の証言をしている。そこで、まず、同意見書及び証言について検討する。

ア 丁山医師は、ガイドライン基準に基づき、
①受傷後まもなく起立性頭痛等の症状があったこと、
②画像所見として、平成20年11月のRI脳槽シンチグラフィー検査において注入から1時間後に膀胱内にRIの集積が見られたこと、3時間後及び6時間後には腰椎部から明瞭な髄液漏出像が認められたこと、24時間後のRI残存率は13.8%と低いこと、平成22年6月のRI脳槽シンチグラフィー検査においては膀胱内にRIが集積したのは注入から6時間を経過した後であり、髄液漏出像はなく、24時間後のRI残存率は31%と正常であったこと、
③ブラッドパッチに一定の効果があったこと
を主な根拠として、原告が脳脊髄液減少症を発症したと判断している。

イ ①症状について
 前記(1)ア、イによると、原告は、H病院及びJ病院において、頭痛を訴えた時と訴えなかった時があり、前記(1)エ(イ)、(ウ)によると、B病院において、原告は、起立性頭痛があると診断されているものの、その診療録には、臥位でも頭痛は軽減しない旨の記載などもあり、原告の頭痛が起立性頭痛であるかどうかは、必ずしも明確でない点がある。


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