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平成24年 9月19日(水):初稿 |
○出し渋りの保険会社対応に不満を持って当HPに頂いた加害者側からの質問メールに対する感想を以下に記載します。 「加害者は任意保険(共済)契約締結で誠意ありと割り切る」で、被害者側の考え方として、「加害者が任意保険に加入している場合、そのことだけで誠意ありと見なして、誠意がない、態度が悪い云々は考えず、保険会社から出来るだけ多くの賠償額を取得することに専念した方が賢明です。」と記載していました。その理由は、「保険会社がついている場合、その保険会社が倒産でもしない限り合意・確定した金額は100%支払われ」るからです。損害賠償請求実務では、加害者に対して1000万円賠償判決は取っても、加害者に支払能力がないため、現実は回収できない例はごまんとあります。その意味で確実に回収できる保険制度は大変有り難い制度です。 ○しかし損害内容に争いがあるなど保険会社が支払を拒否した場合、被害者は加害者本人に直接支払を求める例があります。加害者本人としては、相手に損害を与えた弱い立場にあるため、相手の言うとおりの損害賠償をしたいところ、保険会社が支払を拒否する以上、加害者自身が自動車保険契約に基づき、加害者(被保険者)が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害について保険金を支払えとの訴えを提起する方法がない訳ではありません。しかし、加害者自身が、「法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害」を特定して主張・立証することは、事実上不可能であり、この訴訟提起は、被害者の全面的強力がない限り、事実上不可能です。 ○では、被害者と加害者が全面協力関係になり、共同の原告となって、保険会社に対し、保険会社に対し、加害者(被保険者)が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害について保険金を支払えと訴えを提起することが出来るないものかとの問題提起については、現時点では私自身、ここまでは考えたことがなく、実務的にどのような請求の趣旨になるのか自信を持って答えることは出来ません。 ○現時点で言えることは、いわゆる任意保険としての自動車保険契約を締結した加害者の方は、被害者から直接請求をされた場合、保険会社に請求されたいとの態度で一貫して、安易に加害者の請求する金額を支払うのは止めるべきと言うことです。と言うのは、保険会社が保険金として支払うべき「被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害」が如何なる金額になるかは、最終的には裁判所の判断になり、確定していないからです。 ○しかし、かといって被害者から休業補償等現在の生活を維持するために必要な金額だと言われて請求をされた場合、これを拒否するのは加害者としては大変辛い立場になります。それでも加害者としては、やはり、保険会社に対し支払を要求するも保険会社が支払を拒否した場合は、損害金額が争いになっている訳ですから、被害者に対し、弁護士を依頼するなどして法的手続で、保険会社に対して請求されたいとお願いし続けるしかありません。例えば小松弁護士のように被害者側専門で熱意を持って真摯に取り組む弁護士を紹介するのも一法です(^^)。 ○私自身、被害者からの相談が圧倒的に多く、最終的には訴えを提起して欲しいとの依頼を受けていますが、保険会社が支払わないので直接本人請求して欲しいとの依頼は受けたことがありません。本人に直接請求したいとの相談自体滅多にありませんが、希にあった場合、上記の通り、「加害者が任意保険に加入している場合、そのことだけで誠意ありと見なして、誠意がない、態度が悪い云々は考えず、保険会社から出来るだけ多くの賠償額を取得することに専念した方が賢明です。」と答えて、加害者本人に請求する依頼は受けません。法治国家においては、損害確定は法的判断即ち裁判所の判断を仰ぐべきであり、これを経ずして加害者から無理矢理回収することは許されず、また、任意保険があれば保険会社(自賠責保険会社と合わせて)が全損害を支払うことになっているので保険会社に請求すれば必要十分だからです。 以上:1,672文字
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