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交通事故傷害と統合失調症発症との因果関係否定判例紹介3

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平成24年 1月22日(日):初稿
○「交通事故傷害と統合失調症発症との因果関係否定判例紹介2」を続けます。
ここで紹介した平成15年10月9日千葉地方裁判所判決(平成12年(ワ)第2631号損害賠償請求事件自動車保険ジャーナル・第1560号)の事案で驚いたのは、自賠責保険の後遺障害認定手続で、おそらく統合失調症を理由に後遺障害等級第2級3号に該当する旨の認定を受けたことです。判決の争いのない事実によれば「訴外B(以下「訴外B」という。)が、普通貨物自動車を運転し走行していた際、前方を時速10㎞程度で徐行していた原告運転の普通自動二輪車に追突し、その結果、原告は、両膝打撲の傷害を負った。」に過ぎず、被害者は頭部に何らの傷害を受けていません。しかるに自賠責保険が統合失調症による障害を後遺障害等級第2級3号に該当する旨の認定したことは、私の経験では驚異的です。

○支払額の認定にあたっては、原告の統合失調症による症状と本件事故との間の因果関係の認否が困難な場合に該当するとして、後遺障害等級第2級3号の保険金額からは50%の減額が行われたとのことですが、このような柔軟な認定も私は出くわしたことがありません。統合失調症の発症原因究明は大変困難であり、事故による「両膝打撲の傷害」が発症原因の全てと断定できないことは、当然です。重要なことは、このような事案では、頭部外傷がないので、精神疾患即ち脳の病気である統合失調症とは因果関係が認められないと一刀両断する自賠責認定が多いところ、このような柔軟な認定もあるということです。

○平成9年当時の後遺障害等級第2級3号は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」とされ金2590万円が保険金額ですから,その半額の金1295万円が自賠責保険から被害者に支払われたはずです。平成18年4月1日以降の事故であれば、このレベルは介護を要する後遺障害として別表第1の第2級に該当し保険金は3000万円となっていますので、50%減額で1500万円が支払われます。

○この事案では、事故により精神分裂病(統合失調症)発症し後遺障害2級3号を残したとして約1億1800円もの大きな損害賠償を求めましたが、自賠責の認定では50%のおそらく素因減額がなされていますので、請求の際、50%程度素因減額をして請求した方が戦略としては戦略としては優れていたと思われます。判決には、原告損害額主張の内訳が記載されていないのが残念ですが、裁判官は、請求全部棄却のため請求の内訳を記載する必要はないと判断したのかも知れません。

○判決理由に「原告は、本件事故によってそれまでなかった統合失調症の症状が発症したとも主張している」とも記載されており、おそらく事故以前も精神疾患があったが、事故によってより厳しい統合失調症の症状が発症したと主張したと思われます。この主張についても判決は、「本件事故によって原告が受けた傷害の部位・程度からすれば、原告は頭部を打撲したり、脳実質に損傷をきたすような外傷があったわけではなく、両膝打撲は1週間の加療見込みとの診断であり、その治療は本件事故の日とその翌日の2日のみ」であり、本件事故直前の祖母が入院・死去、事故後直後の引っ越しによる環境変化等が被害者への精神的負荷となっている等諸事情を考慮すると、仮に本件事故が原告の症状の顕在化に影響を与えたとしても、それは原告を取り巻く他の環境要因の1つとして作用したと考えられ、その作用の程度・割合は限られたものにすぎないとして因果関係を否認しています。

○統合失調症については、ストレスがその発症・再発に影響するとする研究が重ねられ、ストレスとはライフイベント(日常生活の大きな出来事)とされており、交通事故に因る傷害との因果関係の割合については、交通事故による傷害がその治療経過、損害賠償請求交渉経過、傷害による仕事への影響等ライフイベントとしてのストレスが、どれだけ大きいものであったのかを、具体的且つ詳細に主張・立証する必要があるでしょう。
以上:1,654文字

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