平成23年12月17日(土):初稿 |
○「脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準紹介1」を続けます。 この基準を作成された脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究班の代表である嘉山孝正氏は、研究者代表挨拶で、「現在、医療の現場には、例えば『いわゆる「むち打ち症」の愁訴のほとんどは脳脊髄液減少症が原因である』と考える医師がいる一方、『「むち打ち症」の中には脳脊髄液減少症は全く無い』と考える医師も存在します。そこには、過剰医療と見逃し医療、種々の疾病がこの脳脊髄液減少症とされるものに含まれている可能性があります。本研究班の研究成果が、これらの混乱を科学的に解明し、医学的にも社会的にも貢献できることを期待しています。」 ○交通事故によるむち打ち症での厳しい症状が継続された方には、脳脊髄液減少症が原因ではないかと考える方が多いのですが、保険会社はそれを認めず、裁判で争われている数が相当増えており、これまでは敗訴事例が圧倒的に多いものでした。平成23年10月に至り、ようやくこの新判断基準が出来ましたので、慎重に検討することが出来ます。この新基準が広く認知されることを願って、引用を継続します。 ********************************************* B.脳槽シンチグラフィー 1.硬膜外のRI集積 【判定基準】 〈陽性所見〉 ①正・側面像で片側限局性のRI異常集積を認める。 ②正面像で非対称性のRI異常集積を認める。 ③頸一胸部における正面像で対称性のRI異常集積を認める。 〈付帯事項〉 ①腰部両側対称性の集積(クリスマスツリー所見等)は参考所見とする。 <理由> *technical failure (half-in half-outや穿刺部からの漏出等)を除外できない。 *PEG(pneumoencephalography)では硬膜下注入がしばしば認められた。 〈読影の注意事項〉 ①正確な体位で撮像されていること、側湾症がないこと。 ②腎や静脈叢への集積を除外すること。 ③perineural cyst や正常範囲のnerve sleeve 拡犬を除外すること。 ④複数の圃像表示条件で読影すること。 *脳槽シンチグラフィーは撮像条件や画像表示粂件が診断能力に強く影響するが、未だ条件の標準化はなされていない。(本研究班では、フアントムスタディーを行い、撮像・画像表示を標準化している。) 【特徴】 本法は脳脊髄液漏出のスクリーニング検査法と位置づけられる。 本法のみで脳脊髄液漏出を催実に診断できる症例は少ない。 【解釈】 片側限局性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 非対称性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 頸一胸部における対称性の集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 2.脳脊髄液循環不全 【判定基準】 24時間像で脳槽より円蓋部のRI集積が少なく、集積の遅延がある。 *いずれかの時相で、脳槽内へのR1分布を確認する必要がある。 【特徴】 脳脊髄液漏出がある場合に、一定の頻度で認められる。 【解釈】 円蓋部のRI集積遅延は、脳脊髄液循環不全の所見とする。 脳脊髄液漏出の『疑』所見に加えて脳脊髄液循環不全が認められた場合、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 脳脊髄液漏出の『強疑』所見に加えて脳脊髄液循環不全が認められた場合、脳脊髄液漏出の『確実』所見とする。 3.2.5時間以内の早期膀胱内RI集積 【判定基準】 観察条件を調整して膀胱への集積を認めれば、陽性とする。 【特徴】 正常者でも高頻度にみられる。正常所見との境界が明確ではなく、今回の診断基準では採用しない。 【解釈】 客観的判定基準が確立されるまでは参考所見にとどめ、単独では異常所見としない。 4.まとめ 片側限局性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『強疑』所見とする。 非対称性のRI異常集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 頸一胸部における対称性の集積は、脳脊髄液漏出の『疑』所見とする。 脳脊髄液漏出の『疑』所見と脳脊髄液循環不全があれば、『強疑』所見とする。 脳脊髄液漏出の『強疑』所見と脳脊髄液循環不全があれば、『催実』所見とする。 C.CTミエログラフィー 1.硬膜外の造影剤漏出 【判定基準】 硬膜外への造影剤漏出を認める。 ①画像上、解剖学的に硬膜外であることを証明すること。 ②穿刺部位からの漏出と連続しないこと。 ③硬膜の欠損が特定できる。 ④くも膜下腔と硬膜外の造影剤が連続し、漏出部位を特定できる。 【特徴】 症例の蓄積が少ない。 technical failure (half-in half-outや穿刺部からの漏出等)を否定できれば、現時点で最も信枡既が高い検査法と言える。 【解釈】 硬膜外に造影剤を証明できれば、脳脊髄液漏出の『確実』所見である。 硬膜の欠損や漏出部位を特定できれば、脳脊髄液漏出の『確定』所見である。 2.硬膜下腔への造影剤漏出 【判定基準】 硬膜下腔への造影剤漏出を認める。 ①画像上、解剖学的に硬膜下腔であることを証明すること。 ②穿刺部位からの漏出と連続しないこと。 ③くも膜の欠損が特定できる。 ④くも膜下腔と硬膜下腔の造影剤が連続し、漏出部位を特定できる。 【特徴】 理論上あり得るが、実際の診断例はない。 *くも膜嚢胞との鑑別が必要である。 【解釈】 異常所見には含めない。 3.まとめ CTミエログラフィーで硬膜外に造影剤を証明できれば、脳脊髄液漏出を診断できる。 穿刺部位からの漏出を否定できれば、脳脊髄液漏出の『確実』所見である。 硬膜の欠損やくも膜下腔と連続する硬膜外造影剤貯留は、脳脊髄液漏出の『確定定』所見である。 以上:2,382文字
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