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交通事故での胸郭出口症候群等を認めた名古屋地裁判決紹介3

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平成23年 5月 8日(日):初稿







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第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件事故による原告の傷害及び後遺障害)について

(1)前記前提事実に加え,証拠(甲2~28,33~35,38,41,42,44~46,48,50~52,乙1,5,6~10〔枝番のあるものは枝番を含む。以下同様〕,証人加納道久の書面尋問の結果,原告本人)並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

ア 原告は,平成16年6月30日に本件事故に遭い,同日から平成17年12月30日までBクリニックに通院し,治療を受けた。実通院日数は,平成16年は,6月が1日,7月が16日,8月が17日,9月が15日,10月が17日,11月が17日,12月が14日の小計97日、平成17年は,1月が7日、2月が7日,3月から8月が各月4日ずつ,9月が2日,10月が5日,11月が5日,12月が3日の小計53日の合計150日である(甲2~21〔枝番のあるものは枝番を含む。〕)。初診時の傷病名は外傷性頚椎症,外傷性腰椎症である。同クリニックの院長服部達哉医師(以下「服部医師」という。)作成の本件事故当日の平成16年6月30日付けの診断書には,症状の経過・治療内容および今後の見通しとして「追突され受傷,頚部痛,背部のはり,耳閉感,排尿困難が出現。腰部および頚部の理学療法施行,投薬にて改善傾向だが首の可動域制限は続いている」と,主たる検査所見として「C5/6頭椎椎間板ヘルニア,前方すべり,C3前方すべり」と,既往症および既存障害として「なし」と記載されている。また,治ゆ見込みとして平成16年9月30日と3か月後の日が記載されている(甲2の1)。

イ 服部医師作成の平成16年7月31日付けの診断書には,症状の経過・治療内容および今後の見通しとして「追突され受傷,頚部痛,腰痛出現,可動域制限,耳閉感,眼痛出現。頚椎カラー処方。投薬及び温熱療法を含む理学療法を施行」と,主たる検査所見として「C5/6椎間板ヘルニア、と後方すべりによる脊柱管狭窄。C3/4すべり症」と,既往症および既存障害として「なし」と記載されている。また,治ゆ見込みとして平成18年9月30日と記載されている(甲3の1)。

ウ 服部医師作成の平成16年8月31日付けの診断書には,症状の経過・治療内容および今後の見通しとして「追突され受傷,頚部痛,背部のはり,耳閉感,排尿困難が出現。頚部,背部への理学療法を施行。天候にて悪化を認める」と主たる検査所見として「C5/6頚椎椎間板ヘルニア,前方すべり。C3前方すべり」と既往症および既存障害として「なし」と記載されている。また,治ゆ見込みとして平成16年9月30日と記載されている(甲4の1)。

エ ほぼ同様の記載が,その後の服部医師作成の診断書にも記載されている。
 排尿困難は同医師作成の平成16年9月30日付け,同年10月31日付け,同年11月30日付け,同年12月31日付けの各診断書にも記載されている(甲5ないし8の各枝番1)が,平成17年1月31日付けから同年12月30日付けまでの毎月末ころ作成の各診断書には記載がない(甲9ないし20の各枝番1)。そして,服部医師は,平成17年12月30日付けの診断書において,「症状固定と思われる」と記載した(甲20の1)。また,同日診断,作成日平成18年1月16日の自動車損害賠償責任保険後道障害診断書に,症状固定日を平成17年12月30日,自覚症状として「頭痛,項頚部痛,背部痛,腰痛,左上肢しびれ感,頚椎運動制服,耳閉感,排尿障害」,精神・神経の障害,他覚症状および検査結果として「右スパーリングテスト陽性。握力右37 k g左35.5k g。頚椎XP,MRI:C5/6前方すべり,同部で左外側型の椎間板の突出。腰椎XP,MRI:L3/4前方すべり,L3/4,L4/5で椎間板の膨隆があり,L4/5にはhigh intensity zone が認められ,外傷性と思われる」と記載した(甲21)。なお,治ゆ見込みの日は,平成16年9月30日に同年12月30日に変更され(甲5の1),平成16年12月31日に平成17年2月28日に変更され(甲8の1),平成17年2月28日に同年4月30日に変更され(甲10の1),平成17年4月30日に同年6月30日に変更され(甲12の1),平成17年6月30 日に同年8月31日に変更され(甲14の1),平成17年8月31日に同年9月30日に変更され(甲16の1),平成17年9月30日に同年12月30日に変更された(甲17の1)。

オ 服部医師は,平成19年3月9日付けの照会・回答書において,原告の自覚症状の推移について,頭痛は,初診時になく,平成16年9月1日ころに出現し,その後は症状に変化なく終診時(平成19年3月3日)にもあった旨,項頚部痛,背部痛,腰痛,頚椎運動制限,耳閉感は,初診時も終診時もあったが症状は軽減した旨 上肢しびれ・放散痛(右),下肢しびれ・放散痛(左右),めまい・ふらつき感,悪心・嘔気は初診時も終診時もなかった旨,上肢しびれ・放散痛(左)は初診時にはなく,平成16年8月9日ころに出現し,終診時もあったが軽減していた旨,排尿障害は初診時はあったが終診時には消失していた旨記載している。さらに,神経学的所見の推移については,膀胱直腸障害が初診時(平成16年6月30日) にはあったが,症状固定時(平成17年12月30日)及び終診時にはなかった旨の記載がされている(乙5。以下,これを「服部医師の照会回答」という。)。
 服部医師は,原告訴訟代理人らの平成22年1月24日付けの照会書に対する回答において,上記照会・回答書の記載は,後記カのC病院の平成18年3月6日付けの診断書を確認せずにしたとし,排尿障害が終診時に消失したと判断した理由について,「排尿障害の訴えが消失したので,当院での治療中止という意味で,消失と記載しました。排尿障害に関しては,C病院泌尿器科の診断が正しいと判断します」としている(甲55)。

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