平成22年 9月30日(木):初稿 |
○「”ブラック・トライアングル”自賠責保険調査1」で、自賠責後遺障害等級認定手続は,被害者にとっては「藪の中」と表現しましたが、谷清司弁護士著”ブラック・トライアングル”では「ブラックボックス」とよりかっこ良い表現をされています。同著での「ブラック」は、闇という意味で、副題は、「温存された大手損保、闇の構造」となっています。「トライアングル」とは英語で三角形を意味しますが、同著での意味は、被害者の大きな壁となっている3つの壁として、任意保険会社、自賠責システム、裁判所の3つを挙げて、「ブラックトライアングル」としています。 ○交通事故損害賠償紛争は最終的には裁判所で決着がつけられますが、裁判所での熾烈な争いになる事案の最初の関門が自賠責後遺障害等級認定システムです。当事務所で抱えている交通事故訴訟事件の大半は、後遺障害等級の争いが含まれています。この後遺障害等級の実質的な認定機関が、「”ブラック・トライアングル”自賠責保険調査1」で紹介したとおり、損害保険料率算出機構の調査事務所であるところ、そこでの認定経過が被害者にとって「藪の中」であり、谷清司著作では「ブラックボックス」でブラックトライアングルの一角です。 ○損害保険料率算出機構HPでの説明によると、 ・損害調査の過程において、自賠責保険(共済)から支払われないか、もしくは減額される可能性がある事案、後遺障害の等級認定が難しい事案など、自賠責損害調査事務所では判断が困難な事案については、自賠責損害調査事務所の上部機関である地区本部・本部で審査が行われます。とのことですが、認定書にはこの審査段階・程度については明らかにされず、結論だけしか表示されません。 ○損害保険料率算出機構HPでは、「自賠責保険(共済)審査会には、審査の客観性・専門性を確保するため、日本弁護士連合会が推薦する弁護士、専門医、交通法学者、学識経験者等、外部の専門家が審議に参加します。また、事案の内容に応じ専門分野に分けて審査を行います。」とあります。後遺障害等級が激しく争われる事件では、訴訟提起前に本人が異議申立をして却下されたものが多くあります。訴訟なると被告保険会社側では,本件は「自賠責保険(共済)審査会において慎重に審査した上で却下の決定を出したものでその結論は揺るぎない」との主張を出して,あたかも自賠責保険(共済)審査会の結論を金科玉条、絶対正しい判断である如く主張します。しかし肝心のこの自賠責保険(共済)審査会の中身・構成までは主張してきません。 ○”ブラックトライアングル”163頁で「真っ先に必要とされるのは、損害保険料率算出機構の情報公開であろう」と主張されていますが、私も全く同感です。別コンテンツで記載しますが、裁判所の認定は,結局、この損害保険料率算出機構の結論の後追いが多く、この結論を覆す結論を大胆に出してくれる裁判官は少なく、損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所の結論は裁判においても重きをなしています。従って損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所の結論も裁判と同様に先ず認定主体(認定機関構成員名)を明確に表示し、更に判断過程も参照証拠を特定列挙して詳しく表示すべきと思っております。 以上:1,492文字
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