旧TOP : ホーム > 交通事故 > 交通事故判例-脊椎脊髄関係症等 > |
平成21年 9月29日(火):初稿 |
○本件の第2の争点は、休業損害及び逸失利益でした。休業損害については、本件事故時Xさんは、3年前の脳梗塞後遺症を引きずって殆ど仕事が出来ず、従って収入を証明する資料が皆無で収入が立証出来ず、また休業期間も事故以来口頭弁論終結時まで、ズッと休業のままで、取り敢えず1年365日間を主張していました。逸失利益については、症状固定時既に58歳になっており、58歳の就労可能期間11年を主張しましたが、後遺障害は神経症状であり、どれだけの期間を認めてくれるか心配でした。 ○それが休業損害については,一日当たりの収入をXさん主張額の6割に減ぜられるも休業期間を1年主張したところ、症状固定時までの511日間も認められ、大感激し、さらに逸失利益について就労期間11年をまるまる認められ、大感激でした。 ******************************************* 4 争点(4)について (1)治療費 45万3038 円 Xは,本件事故により,上記3(1)イの傷害を受け,その治療のために入通院等をしていたものであり,証拠(乙28,X本人)及び弁論の全趣旨によれば,そのうち,別紙明細表記載の治療に要した治療費は,45万3038円と認められる。 なお,被告Y1は,Xの治療期間は,受傷後1週間の安静,長くても受傷後3週間の経過観察が相当である旨の主張をするが,上記認定に照らして採用できない。また,被告Y1は,Xの入院は希望入院,平成16年9月からのC整形外科への通院は希望通院とされている旨の主張をするが,Xがこれらの入通院をした経緯は上記3のウ認定のとおりであり,これらは本件事故による受傷と相当因果関係のある治療と認められる。(2)交通費 55万7530円 上記認定の事実に証拠(乙28,X本人)及び弁論の全趣旨によれば,Xの通院交通費は,55万7530円であったと認められる。 (3)休業損害 534万6353円 ア 証拠(乙27,X本人)及び弁論の全趣旨によれば,Xは,本件事故前,住宅のリフォーム関係の設計やプランニングを行う会社を経営していたが,本件事故による傷害で仕事を継続できなくなり,事実上廃業状態になっていること,Xは,本件事故前に脳梗塞を患い,本件事故当時,従前の8割程度の仕事をできるまでに回復していたことが認められる。そして,Xの本件事故当時の収入を裏付ける客観的な資料は見当たらないが,被告Y1は,本件甲事件の本訴事件(平成17年第○○号事件)で,Xの収入を,Xの本件事故当時の年齢に対応する年齢別平均給与額に基づき,1日当たり1万6173円であると主張し,Xも,これを本件事故当時のXの収入として主張していることに,Xは,本件事故当時,脳梗塞からのリハビリを経て,従前の8割近くの仕事ができるくらいには戻っていたと思う旨の供述をするが,脳梗塞から完全に治ったわけではなく,その後の回復の可能性をうかがわせる具体的な証拠はないこと 平成15年初めころから,第6,7頚椎の椎間板の膨隆を原因とする頚椎症性神経根症により,両肩から肩甲骨の痛み等を発症しており,この症状が,本件事故当時,「局部に神経症状を残す」程度のものであったことをを考え併せると,Xの休業損害の算定に当たっては,基礎となる収入を,X主張額の6割である1日当たり9703円と認めるのが相当である。 イ Xの休業期間は,本件事故日である平成16年6月11日から症状固定日である平成17年12月13日までの551日間であるが,これに上記の1日当たりの休業損害を乗じると,Xの休業損害は,534万6353円と認められる。 (4)慰謝料 ア 入通院分200万円 Xは,本件事故による傷害で,上記のとおり,本件事故日である平成16年6月11日から症状固定の平成17年12月13日までの1年6か月の間に,36日間入院し,合計約353日英通院しており,これに対する慰謝料は,200万円が相当である。 イ 後遺貴障害分 180万円 上記認定の事実によれば,Xには,本件事故による後遺障害として,肩甲上部痛等があり,その程度は,後遺障害等級12級に相当するものであり,また,Xには,肩甲上部病等の既往症があり,その程度は,後遺障害等級14級に相当するものである。これらによれば,Xの本件事故による後遺障害についての精神的損害に対する慰謝料としては,180万円が相当である。 (5) 逸失利益 264万7483円 ア(3)ア認定の事実によれば,Xの逸失利益を算定する基になる基礎収入についても1日当たり9703円(年額354万1595円)と認めるのが相当である。 イ 弁論の全趣旨によれば,Xの症状固定時の年齢は58歳であるから,就労可能年数は11年(対応するライプニッツ係数は8.3 0 6)であり,労働能力喪失率は,上記認定のXの後道障害の程度及び既往症の程度によれば, 9パーセントとするのが相当である。 ウ 以上によれば,Xの逸失利益は,264万7483 円と認められる。 (6) 物損 22万6800円 証拠(甲3の1・2)によれば,Xは,本件事故によるX車両(平成4年型日産ローレル)の修理費用は58万8998円であったことが認められる。そして,X車両の本件事故時の価格を明らかにする資料はないが(X提出の乙29の1は,初度登録年度や走行距離がX車両とは異なるもので,被告Y1提出の甲4 は,平成12年当時の価格を示すものである。),被告Y1は,本件甲事件の本訴事件(平成17年例第6 8号事件)で,X車両の全損価格を22万6800 円と主張していたことによれば,X車両の本件事故時の価格は22万6800円と認められ,これが本件事故によるX車両の損傷によって生じた損害と認められる。 (7)既払い金 395万5017円 弁論の全趣旨によれば,既払い金額は395万5017円と認められる。 (8) 上記(1)から(6)までの損害額の合計は,1303万1204円であり,これに上記2のとおり過失相殺(X1割)をすると,1172万8083円となり,これから(7)の既払い金を控除した額は,777万3066円である。 (9)弁護士費用 70万円 本件における事案の内容,請求額,認容額その他本件に顕れた事情によれば,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は, 70万円と認められる。 (10) 以上の合計額は847万3066 円である。 以上:2,646文字
|