平成21年 9月 5日(土):初稿 |
○「交通事故による傷害に基づく妊娠中絶の慰謝料1」では、昭和の判決を紹介しましたが、平成になってからの判決紹介を続けます。 平成元年3月31日大阪地方裁判所判決(自保ジャーナル・判例レポート第83号-No,13) 【判決要旨】 ①家業に従事する主婦が給与のほかに家事労働分をセンサスによって休業損害を請求する事案につき、家業の対価は平均賃金を大幅に上回っており、特段の事情のない限り実収入と別個に家事労働分を認めることはできないとされ、実収入を基礎に算定された事例。 ②31歳で本件事故後妊娠し中絶して、中絶費用と中絶による慰謝料60万円を請求する右事案につき、中絶費用は認められたが慰謝料は斟酌された事例。 ③頭部外傷ⅠⅡ型、右肘・左腰部・左大腿・左眼球部打撲、頸部挫傷等で9月通院(76日実通院)の後、14級相当の神経障害を残して傷害分85万円、後遺症分188万円、中絶分60万円、合計333万円の慰謝料を請求する右事案につき、妊娠中絶慰謝料を斟酌して150万円の慰謝料が認められた事例。 平成5年12月7日東京地裁判決(交民26巻6号1484頁) 【判決要旨】 加害車両が信号待ちのため停車していた被害車両に追突した事故で、頚椎捻挫等のため、長期の入院を余儀なくされ、また、事故前妊娠しており、事故との因果関係は認められないものの切迫流産により入院した被害者につき、事故による傷害に起因する心労、苦痛は、懐胎のない場合に比して数段優ることは容易に推認されることを考慮して、傷害慰謝料を110万円とした事例。 平成6年1月19日大阪地方裁判所判決(交民集27巻1号62頁) 【判決要旨】 ①妊娠初期に気づかずレントゲン検査を受けたため中絶手術を受け1000万円の慰謝料を請求する事案で実通院15日間の慰謝料が100万円認められた事例。 平成7年10月27日静岡地方裁判所判決(自保ジャーナル・判例レポート第120号-No,15) 【判決要旨】 ①23歳女子が乗用車を運転中、乗用車に追突されて外傷性頸腕症候群を負って3日通院、レントゲン検査、投薬を受けたが、検査時が妊娠初期であったため妊娠中絶を受け、これの慰謝料が150万円認められた事例。 平成8年5月31日大阪地裁判決(交民29巻3号830頁) ①交通事故前に診察を受けていなかった妊婦が、事故の約1か月後に流産したことにつき、妊娠初期における腹部への圧力は流産の要因となりうること、他に同時期に流産の原因となる出来事もうかがえないことから、本件事故による衝撃により胎児が死亡したものと認められた事例。 ②一 交通事故による衝撃により流産(妊娠約2か月)した事案につき、母親に150万円の慰謝料が認められた事例。 ③交通事故による衝撃によって死亡した胎児(妊娠約2か月)の父親につき、胎児の死亡による損害は母親の慰謝料によって填補できるものであるとして、父親固有の慰謝料が認められなかった事例 平成16年7月14日京都地方裁判所判決(自動車保険ジャーナル・第1565号) 【判決要旨】 ①乗用車を運転、停車中、原付自転車に追突された有職主婦が「頸椎捻挫及び腰椎捻挫を受傷した」と認めた。 ②「レントゲン検査が不要であったとはいえない」し、奇形児出産の不安での中絶は「慰謝料の増額事由として斟酌する」とし、通院期間214日の慰謝料を180万円認めた。 以上:1,381文字
|