平成21年 8月11日(火):初稿 |
○平成21年8月現在、当事務所ではいずれも被害者側の交通事故損害賠償案件を19件扱っています。当事務所は,いわゆる町弁で何でも扱い、男女問題、相続事件、売買・賃貸借等様々の種類の事件を扱っていますが、現在、件数からは、最も案件の多い多重債務事件に次いで交通事故事件が多くなっています。 ○交通事故事案と言ってもその内容は様々です。死亡事案或いは四肢麻痺での後遺障害第1級1号事案等重大案件もありますが、最も多いのが「神経症状」です。後遺障害非該当或いは14級と認定されたものを少なくとも後遺障害第12級と主張して提訴している事案が多く、その神経症状の内容と程度は様々で、相当程度の医学知識が必要になります。そのため結構骨が折れる事案ですが、私は、交通事故事件となると「燃えて」取り組むことが出来、苦痛ではありません。 ○「神経症状」の典型は,いわゆる鞭打ち症の後遺障害として生じるもので、その症状も原因も様々です。 後遺障害第14級は「局部に神経症状を残すもの」 後遺障害第12級は「局部に頑固な神経症状を残すもの」 と定義され、「頑固な」が付くと14級が12級にアップしますので、この「頑固な」ものかどうかが、最大の争点となります。 ○日弁連青本による解説は、被害者が訴える各種の痛み、しびれ、めまい等の神経症状について 第14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」 第12級は「障害の存在が医学的に証明可能なもの」 と、「説明可能か」、「証明可能か」が14級と12級の分かれ目になっています。 医学的に「説明可能」とは、現在存在する症状が、事故により身体に生じた異常によって発生していると説明可能なこと、 医学的に「証明可能」とは、事故により身体の異常が生じ、医学的見地から、その異常により現在の障害が発生しているということが、他覚的所見をもとに判断できることと と説明されています。 ○私は、このような認定基準そのものに疑問を感じております。日本語として「頑固な」の意味は「取りついて容易に離れようとしないこと」などと,程度が強く且つ長く続く現象を示しています。ところが,医学的に「説明可能」か、「証明可能」かの認定基準だと、たまたま医学的に「証明可能」であれば、現象としてさほど頑固とは思えなくても12級が認定され、どれほど頑固な症状が長く継続していても、医学的には単に「説明可能」なだけで、「証明可能」に至らない場合は、14級止まりで、また「説明可能」でもないという理由で後遺障害非該当とされる事案も多数あります。 ○この14級と12級では以下のような大きな違いがあります。 自賠責保険金 労働能力喪失率 14級 金75万円 5% 12級 金244万円 14% このように12級と14級では自賠責保険金額で3倍強、労働能力喪失率で3倍弱と、いずれも3倍前後の差があり、これがいわゆる裁判基準での適正損害賠償額となれば、その方の収入・年齢等によっても異なりますが、数百万円から1000万円を超える差が生じます。 ○私は、鞭打ち症の後遺障害で苦しむ方々で、後遺障害非該当であった方、14級、12級に認定された方々に実際に多く接していますが、その認定に大きな疑問を感じることがよくあります。 以上:1,331文字
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