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平成21年 5月16日(土):初稿 |
○人身傷害補償保険と「外来の事故」との関係についての重要判例を紹介します。 自動車総合保険契約の被保険者Aさんが、平成15年6月10日自動車を運転中、ため池に転落して溺死したとして、その相続人が同契約の人身傷害補償特約に基づき保険金支払を請求しました。 ところが保険会社は、Aさんは昭和56年頃に狭心症との診断を受け,狭心症発作予防薬を定期的に服用していたこと、本件事故の態様は,三さ路を直進してブレーキ操作をすることなくそのまま前方のため池に転落したという,かなり異常なものであり,事故原因として,Aが運転中に突然狭心症の発作に襲われて運転操作を誤ったことが疑われたことから、外来の事故に当たらないとして保険金支払を拒否しました。 ○そこでAさんの相続人が保険会社に対し保険金支払の訴えを提起しました。しかし、平成18年2月23日松山地裁判決は、身体疾患等の内部的原因を除外するための要件である「外来性」とは、事故原因が被保険者の身体の外部作用にあることをいい、これについては保険金請求者が主張立証すべきであるとした上で、事故態様などの諸事情を勘案すると、本件事故は、運転者の既往症である労作性狭心症による意識障害の影響下で発生した疑いが強く、運転者の死亡が「外来の事故」によるものとは認定できないとして、請求を棄却し、第2審の平成18年11月28日高松高裁判決も、同様の理由で請求を棄却しました。 ○ところが、平成19年10月19日最高裁判決は、自動車総合保険契約の人身傷害補償特約が,「自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により被保険者が身体に傷害を被ること」を保険金支払事由と定め,被保険者の疾病によって生じた傷害に対しては保険金を支払わない旨の規定を置いていない場合,自動車の運行に起因する事故等が被保険者の疾病によって生じたときであっても,保険者は保険金支払義務を負い,保険金の支払を請求する者は,上記事故等と被保険者がその身体に被った傷害との間に相当因果関係があることを主張,立証すれば足りるとして、原判決を破棄して、支払保険金額等の審理を尽くさせるため原審に差し戻しました。 ○本件自動車総合保険契約の人身傷害補償特約(本件特約)の概要は以下の通りでした。 ・本件特約の被保険者は記名被保険者及びその親族のほか,被保険自動車の正規の乗車装置又は当該装置のある室内に搭乗中の者。 ・日本国内において,次の各号のいずれかに該当する急激かつ偶然な外来の事故により,被保険者が身体に傷害を被ることによって被保険者又はその父母,配偶者若しくは子が被る損害に対して,この特約に従い,保険金を支払う。 (ア)自動車の運行に起因する事故(運行起因事故) (イ)被保険自動車の運行中の,飛来中若しくは落下中の他物との衝突,火災,爆発又は被保険自動車の落下(運行中事故。上記運行起因事故と併せて,「運行事故」という。) ・傷害には,日射,熱射又は精神的衝動による障害を含まない。 ・被保険者の極めて重大な過失によって生じた損害については,保険金を支払わない。 ・被保険者が当該事故の直接の結果として死亡したときは,死亡による損害(葬祭料,逸失利益,精神的損害及びその他の損害)につき保険金を支払う。 被保険者の脳疾患,疾病又は心神喪失によって生じた傷害に対しては保険金を支払わない旨の条項(疾病免責条項)は存在しない。 以上:1,403文字
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