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平成21年 3月 6日(金):初稿 |
○「H19.2.13福岡高裁脳脊髄液減少症否定判決全文紹介1」で紹介した判決分は全文ではなく、主文と事実及び理由の内の「事案の概要」までです。事案(以下、本件事案と言います)の概要を見ると、停止中に後続車から追突されるという交通事故による頸椎捻挫に基づく損害賠償の典型的事案となっており、この種事案の実務的ポイントを押さえるのに好適の事案です。 ○この追突による損害賠償請求事案では、先ず追突による衝撃の程度が争われ、被害者側は、相当(ある程度)の衝撃があったと主張するのに対し、加害者側は大したことはなかった,殆ど衝撃はなかったと争います。 本件事案では、被害者側は 「被控訴人は,本件事故の際,停車した被控訴人車両の車内でたまたま横を見ていたとき,突然に控訴人車両に追突され,自車が約40センチメートル前に押し出されたもので,相当の衝撃があった。」と主張し、 加害者側は 「その衝突時の速度は時速1,2キロメートルであり,控訴人車両は衝突と同時に停止し,両車両はほとんどくっついた状態であったし,車両にほとんど損傷はなかった。したがって,衝突の衝撃はごく軽微であり,被控訴人が受傷するはずはない。」と激しく争っています。 ○次にこの追突による傷害の程度・内容が争われ、被害者側は、追突の衝撃でどいむち打ち症(頸椎捻挫)となり、整形外科だけでは治癒せず整骨院等様々医療機関の長期間の診察・治療を受けるも各種疼痛・しびれ・めまいなどの症状が完治せず苦しい状態が続いていると主張するのに対し、加害者側はその程度の衝撃でそんな重い症状が出る訳がなく詐病に違いなく,仮に症状が実際にあるとしても原因は加齢や心因性等で交通事故とは無関係なものであると主張します。 ○本件事案でも被害者側は、 「当初,i病院で,頚椎捻挫等の診断を受けたが,その後,近所のj医院に転院し,さらに,k病院のl医師により,低髄液症候群,外傷性脊椎髄液漏が認められると診断されて,以後その関係の治療を受ける一方,頚椎の専門医であるm医院やカイロプラクティック,鍼灸院等で頚椎捻挫の治療も継続し,また,漢方治療を試みるなどしている。」と主張し、 加害者側は、 「衝突の衝撃はごく軽微であり,被控訴人が受傷するはずはない。(中略)上記のような本件事故の態様からして,被控訴人には外傷性頚部症候群の発生もない。仮に,その発生があるとすれば,被控訴人の場合,バレー・リュー症候群か頚椎神経根症が考えられるが,通常3か月の通院治療で十分である。」 と主張しています。 ○本件事案では、被害者側が現在の症状発生の原因として低髄液圧症候群という診断名を出したために、マスコミでも取り上げられ、話題となりました。被害者側が、追突事故の衝撃で低髄液圧症候群に罹患したと主張したのに対し, 加害者側は 「起立性頭痛の症状が見られないし,硬膜外血液パッチの効果もなかったから,被控訴人は,低髄液圧症候群ではないことになり,また,画像所見からも疑問がある。被控訴人の主張は,低髄液圧症候群の定義を理由なく拡大しているだけで,医学的根拠がない(被控訴人の主張の根拠となっている見解の診断基準は曖昧で,他の疾病との区別すらできない。)。」と主張し、 これに対し被害者側は 「それらは,今日の医学が認めている低髄液症候群とは異なる過去の理解に立った指摘であって,その病像に対する正確な知識が不足した,いわば控訴人の御用医師の偏頗な見解を根拠とするものであり,不当である。現に症状に苦しんでいる患者がいるのに,自分の限られた医学知識で分からなければ,詐病であるかのようにいうのは許されない。」と激しく反論しました。 これらの争点についての判決全文及びその解説は別コンテンツで行います。 以上:1,537文字
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