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平成20年11月11日(火):初稿 |
○現在、交通事故による脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)を原因とした損害賠償事案を数件受任しております。この脳脊髄液減少症を原因とする損害賠償事案は多数あると思われますが,公刊された判決では交通事故との因果関係が否認されるものが圧倒的に多いようです。取り敢えず認容例と棄却例2例概要を紹介します。 認容例 横浜地裁平成20年1月10日判決(自動車保険ジャーナル・第1727号) 判決要旨 ①乗用車を運転して交差点を直進中、対向右折乗用車に衝突され、頭部打撲等から低髄液圧症候群を発症したとする事案につき、激しい起立性頭痛等があり、副作用の強いホルモン剤等服用しても改善しなかったが、ブラッドパッチ療法で仕事ができるまでに改善等から、Xは「本件事故後に低髄液圧症候群にり患した」と認定、17か月後治癒したと認めた。 事案の概要 42歳男子布団販売業のXは、平成16年2月22日午後1時34分ころ、横浜市内の交差点で乗用車を運転、直進中、Y運転の乗用車が右折してきて衝突、頭部打撲等から低髄液圧症候群を発症し、約1324万円請求の反訴を提起した。 裁判所は、直進右折の衝突事故で頭部打撲等から低髄液圧症候群を発症し、受傷直後から右眼奥の頭痛を訴え、「典型的症状とされる激しい起立性頭痛が生じ」「副作用の強い副腎皮質ホルモンブレドニンを服用しても改善が見られなかった」症状が、ブラッドパッチ療法を受けて消失等から、Xは「低髄液圧症候群にり患したものと認定できる」とし、約17か月で治癒したと認め、加害者に対し金676万円の支払を命じた。 棄却例 東京地裁平成20年2月28日判決(自動車保険ジャーナル・第1727号) 判決要旨 ①乗用車を運転、停車中に乗用車に追突されて、頸椎捻挫等から低髄液圧症候群を発症したとする29歳男子につき、頭痛訴えが事故1年4か月までに1回であり、国際頭痛学会の低髄液圧症候群基準からも耳鳴りの訴えが1年4か月後であり、典型的症状の「起立性頭痛がなく」、原告が低髄液圧症候群を「発症したと認めるに足りる証拠はない」と否認した。 事案の概要 29歳男子会社取締役のXは、平成14年6月7日午後4時05分ころ、東京都千代田区内で乗用車を運転、停車中、被告運転の乗用車に追突され、頸椎捻挫等から低髄液圧症候群を発症、約11か月通院して症状固定と診断後も約半年入通院して、ブラッドパッチ治療によって、治癒しており、その660日分の休業損害、治療費、慰謝料等1060万円を求めて訴えを提起した。 裁判所は、低髄液圧症候群を「認めるに足りる証拠はない」として否認した。 Xは、本件事故後1年4か月以上の間、頭痛を訴えていたのは、転医後の「初診時のみで」、国際頭痛学会の低髄液圧症候群診断基準に照らしても、頭痛以外の特徴とされる耳鳴りも1年4か月以降まで「訴えていなかった」、Xの「髄液圧は19㎝水柱であり、正常値よりもむしろ高い」「起立性頭痛がなく」、Xが低髄液圧症候群を「発症したと認めるに足りる証拠はない」として否認した。 原告の症状固定は、事故後約11か月で「症状固定診断されている」上、「医師から就労指導を受けていた」時点で「症状固定ないし治癒した」と認定し、Xの請求を全て棄却した。 以上:1,341文字
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