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1人暮らしの人の家事労働と休業損害・逸失利益

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平成18年 9月14日(木):初稿
○「家事労働の逸失利益-特に高齢者主婦の場合」に記載した「一人暮らしで無職の78歳の女性に、78歳で家事労働に従事していたとして65歳以上の女子労働者学歴計の平均賃金293万8500円の基礎収入を認めた判例(東京高裁H15.10.30、判例時報1846号20頁)」について質問メールがありました。

具体的個別的事件についてのメール相談は実施しておりませんが、考える機会を与えてくれる一般論としての相談は大歓迎です。今回は、一人暮らしで年金生活の老人が交通事故で後遺障害を残し或いは死亡した場合、休業損害・逸失利益は請求できないのかと言うものです。

○前記78歳の女性についての判例の事案は、夫と死別して一人暮らしをしていた女性が交通事故による傷害で神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することが出来ないもの(後遺障害等級第3級)や上肢や拇指等の障害の併合で後遺障害第2級に認定されたものです。

○前記判例事案では年金の有無は争点になっていませんが、夫と死別しとなっていますのでおそらく遺族年金を受給していたものと思われます。年金受給権は事故によって影響を受けるものではなく、年金の有無と休業損害や後遺障害による逸失利益とは無関係です。年金受給だけを理由に休業損害や逸失利益が否認されることはありません。但し、死亡の場合の逸失利益には年金も含まれますが、遺族年金部分は残念ながら逸失利益としては請求できません。

○例えばAさん(78歳)が夫の死後遺族年金を毎月15万円受給して夫が残した家で一人暮らしをしていて事故に遭い1年間入院生活を経て後遺障害2級になったとした場合、前記判決の例では、事故当時まで自分の生活を維持するために家事労働に従事することが出来なくなった場合においても、それによる損害を休業損害と評価するのが相当であるとして事故時から症状固定時まで65歳以上の女性平均賃金約293万円を基礎に休業損害と逸失利益を認めています。

○この判例では自分の生活を維持するための家事労働が出来なくなった場合も休業損害・逸失利益を認めるものですが、この論理では一人暮らしで自炊生活をする無職男女全てに認めて然るべきことになります。しかし一人暮らしでの家事労働は自ら生きるための生活行為で財産的損害に認められないとする判例も多いようです。

○私は、一人暮らしであっても実際事故によって身体が不自由になり家事労働も一部又は全部が出来なくなって家政婦を雇ったり施設に入って施設利用料金を支払う事態になれば明らかに財産的損害が発生していると評価すべきと思います。結局は正にケースバイケースで財産的損害を検討すべきと考えます。
以上:1,104文字

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