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日本歯周病学会発行”歯周治療のガイドライン2022”紹介-序文・定義

令和 5年 2月 8日(水):初稿
○「小西昭彦歯科医師著”歯周病の新常識”紹介-歯周病判定方法1」を続けます。現在残っている25本の歯のうち25本が歯周病と診断されて、歯周病に関する文献を集めていますが、ネット検索で、日本歯周病学会発行「歯周治療のガイドライン2022」を発見し、早速Amazonに発注しました。

○以下、序文と歯周病の定義部分を紹介します。「歯周病は非プラーク性歯肉疾患を除き,歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり,歯肉,セメント質,歯根膜および歯槽骨よりなる歯周組織に起こる疾患をいう」なんて定義を読むと怖くなります。

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「歯周治療のガイドライン2022」の刊行によせて

 日本では,2010年に高齢化率が23%を超え,超高齢社会を迎えました。8020運動が開始された1989年には,75歳以上の「8020」達成率は10%未満でしたが,その割合は年々増加し,2016年の歯科疾患実態調査では,75~84歳の51%が「8020」を達成しました。そのため,歯周病を有する高齢者や有病者の増加が,今後問題になると思われます。

また,歯周病が全身の健康を脅かすリスクファクターになることが示され,歯周治療は口腔の健康を維持し,全身の健康を管理する点からも重要であり,歯周病の予防を含めた,適切な歯周治療のガイドラインが求められています。

2015年に「歯周治療の指針2015」を発刊しましたが,既に刊行から6年以上経過し,社会情勢の変化に合わせたガイドラインの改定が必要になったことから,今回の「歯周治療のガイドライン2022」の刊行に至りました。また,主要学会が作成したガイドラインは,医療行政に大きな影響力を持つため,本学会としての歯周治療に対する方向性を含めて考慮しました。

 本ガイドラインの基本的な考え方は以下の通りです。
1.本ガイドラインは,2007年に本学会で初めて作成した歯周治療の総論である「歯周病の診断と治療の指針2007」と,2008年にその各論として作成された「歯周病の検査・診断・治療計画の指針2008」を基盤とする。

2.2015年に,上記2つの指針を統合・改定する目的で「歯周治療の指針2015」が発刊され,その改訂版として「歯周治療のガイドライン2022」が今回作成された。

3.本ガイドラインは,日本における歯周病の実態,分類,全身性疾患への配慮,検査,診断,治療計画,口腔バイオフィルム感染症,インプラント周囲疾患の治療,さらには継続管理までを視野に入れて作成された。

4.高齢者,有病者あるいは在宅医療,周術期患者,障害者への歯周治療を行うにあたり,医療従事者との連携を含め,考慮すべき事項に焦点を当てた。

5.本ガイドラインは,臨床研修歯科医師を含む多くの歯科医師が,歯周治療を行う際の客観的な指標となることを目的とした。

6.本ガイドラインは,教育機関における歯周病学,歯周治療学の講義・実習,歯科医師国家試験の出題基準の参考となることを目的とした。

 本ガイドラインを基盤として,歯周病および歯周治療の正しい理解と,高齢者,有病者,周術期患者,障害者を含む国民の皆様に,適切な歯周治療が実施され,良質な歯周治療を行うことを通じて,口腔保健の向上のみならず,全身の健康維持,増進に寄与することを期待しています。

 最後に,本ガイドラインの編纂に尽力頂いた,ガイドライン作成委員会(日本歯周病学会医療委員会)五味一博委員長,委員各位,理事の皆様,ならびに医歯薬出版の編集部の皆様に深く感謝いたします。

 2022年3月 特定非営利活動法人 日本歯周病学会理事長 小方 賴昌


1 歯周病とは
①日本における歯周病の実態

 歯科の2大疾患とされる歯周病およびう蝕は,その発症や進行により歯の喪失が生じると,口腔機能障害を引き起こし,歯や口腔の健康のみならず,全身の健康にも悪影響を及ぼす。また,歯や口腔の健康を保つことは,単に食物を摂取・咀嚼するだけでなく,食事や会話を楽しむなど生涯豊かな生活を送るための基礎となる。高齢者においても歯の喪失が10歯以下であれば食生活に大きな支障が生じないことから,生涯を通じて自分の歯で好きなものをおいしく食べ,生き生きとした会話や笑顔をもち続けるために,80歳になっても20歯以上の自分の歯を保とうとする「8020運動」が提唱・推進されている1)。

 国民の口腔衛生に対する意識の向上と歯科医療従事者(歯科医師,歯科衛生士など)の努力の結果,平成17年度には80歳で20歯以上の歯を有する者の割合は初めて20%を超え2),平成23年度では38.3%3),平成28年では51.2%4)となり平均歯数は約15.3歯となった。「健康日本21」における歯の喪失防止の目標は,「8020達成者を20%以上に,6024達成者を50%以上にする」であことから,その目標は達成できたことになる。しかし,一方で4mm以上の歯周ポケットを有する高齢者の割合は増加している。

 現在,わが国は世界有数の長寿国であるが,80歳前後の高齢者の残存歯数をみると,決して高い数値とはいえない。「国別年代別残存歯数」や「歯科疾患実態調査」でわかるように,中高年以降,急速に歯を失う傾向がある1)。さらに,わが国の歯周病の有病率は他の疾患に類をみないほど高く,社会および国民に与える影響はきわめて大であり,歯周病の治療および予防への取り組みは今後の重要な課題となっている。

1)歯周病の定義
 歯周病は歯周疾患ともよばれ,歯肉病変と歯周炎とに大別される。歯周病は非プラーク性歯肉疾患を除き,歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり,歯肉,セメント質,歯根膜および歯槽骨よりなる歯周組織に起こる疾患をいう。さらに,歯周病には上記疾患の他に壊死性歯周疾患,歯周組織の膿瘍,歯周-歯内病変,歯肉退縮および強い咬合力や異常な力によって引き起こされる咬合性外傷が含まれる(表1)。ただし歯髄疾患の結果として起こる根尖性歯周炎および歯周組織を破壊する新生物(悪性腫瘍など)は含まない5)。

 近年,歯周病は生活習慣病として位置づけられ,食習慣,歯磨き習慣,喫煙,さらに糖尿病などの全身性疾患との関連性(歯周病が全身の健康にも影響を与える:ペリオドンタルメディシン)が示唆されており,歯科医療従事者による保健指導の重要性が示されるようになっている。患者個人の生活習慣の改善,自助努力,さらには医療連携(全身性疾患など)などが必要である。

2)歯周病の罹患状態
 「平成28年歯科疾患実態調査」によると,4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合は年齢が高くなるにつれて増加し,45~49歳の年齢階級層で約50%,65~74歳では約57%を示す4)。とくに残存歯数の増加とともに高齢者において4mm以上の歯周ポケットを有する者の増加が著しい。
 また,歯肉出血を有する者の割合は15~29歳では30%を超え,30歳を過ぎると40%を超える。若年期から歯周病に対する予防,あるいは重症化予防を行うことが今後さらに求められる。

3)受診状況
 自治体で行われている歯周疾患の検診受診率は「地域保健・健康増進事業報告6)」と住民基本台帳人口を用いて調べた報告7)によると,平成27年で4.3%であり,検診受診率のさらなる増加が望まれる。また,「平成28年歯科疾患実態調査」によると「歯肉炎および歯周炎」の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は,398万3,000人であり,平成23年の調査より66万人以上増加している。「平成28年歯科疾患実態調査」を元に,歯周病患者数を推定すると約7,000万人となる。しかし,実際に歯科診療所で治療を受けている患者は,約400万人である。総患者数からするとまだまだ少ない。この数字の差から,「歯周病であることに気づかないでいる人」や「気づいていても治療をしないでいる人」がいかに多いかがわかる。今後さらなる検診率,受診率の改善が望まれる。
以上:3,325文字

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