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2023年12月01日発行第354号”弁護士の確率(2)”

令和 5年12月 2日(土):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和5年12月1日発行第354号弁護士の確率(2)をお届けします。

○某女性政治家が妻帯者とホテル同泊を追及され「一線は越えていない」と弁明し、これが流行語になったこともあり、さら某有名元政治家女性弁護士が政治家時代に依頼していた某弁護士とのホテル同泊を追及され「一線を越えていない」と弁明し白々しいと非難されたこともありました。

○ホテル同泊が認められると、殆どの裁判例は「一線は越えていない」との弁明を認めませんが、数ある裁判例の中には「ホテルへ行ったが一線は越えていないとの言い訳が通用した判例紹介」で紹介したような裁判例も散見されます。

○「人妻と子らの前で上半身裸で過ごしたこと等で不貞行為否認高裁判決紹介」で説明していますが、人妻と子らの前で上半身裸で過ごしたり子も一緒に宿泊した事案で、一審判決は「不貞関係にあったと強く推認される」としたものが、二審高裁判決は「性的関係があったことを認めるに足りるものとはいえない」と一審・二審で判断が分かれる事案もあります。「多数回ラブホテルに滞在するも不貞行為を否認した地裁判決紹介」のような判例もあります。

○不貞行為慰謝料請求事件ではホテル同泊が動かせない事実として証明されても「一線は越えていない」と頑張る余地は残され、頑張ることもありますが、敗訴的和解に至ることが多いのが実情です。男女が一線を越えたかどうかで、損害賠償の有無が決まるなんて制度は馬鹿馬鹿しいとは思いますが、不貞慰謝料請求専門弁護士も多く現れ、今や弁護士の重要な飯のタネの一つで、有り難い制度とも言えます(^^;)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の確率(2)

前回は、「高確率」と「事実」は違うのだという話をしました。一方、法律の世界では、高確率のことがらについて、意味を持たせる場合も多くあります。少し前に、政治家と弁護士の不倫の問題が取り上げられました。この二人ですが、ホテルに一緒に行ったことは認めていましたが、「一線は越えていない」と主張していました。ホテルの部屋の中で性的関係があったかどうか、立証するのはほぼ不可能でしょう。しかし、二人でホテルに入った以上、非常に高い確率で性的関係があったに違いないと、ほとんどの人が思います。このような「確率」による判断を裁判実務も肯定しており、一緒にホテルに入った証拠があれば、不倫関係もあったと認めているのです。

こういった、事実上高い確率で認められることを前提に、判断しようということは、裁判でもよくあることです。離婚の際に、小さい子供の親権は、基本的に母親に認められています。これに対して不満を持っている父親は沢山いますし、具体的な事案においては私ももっともな不満だと思います。ただ、一般的には、お腹の中から長く付き合ってきた母親の方が、愛情をもって子供に接する可能性は高そうです。養育費さえ支払わない父親も、世の中に溢れています。そんな中で、裁判所も母親に親権を認めているのでしょう。

高確率のことがらについて、事実と判断することは、法律にも規定があります。例えば時効取得の問題です。土地を20年間占有していれば、時効によって所有権を取得できます。自分の土地だということで、フェンスで囲って占有しているような場合ですね。でも、20年間ずっとフェンスがあったことを証明するのは難しい。そこで法律は、「前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する」と規定しているのです。

通常、前後の時点でどちらも占有していたら、相当程度高い確率でその間占有していたと考えられますよね。ずっとフェンスで囲われていたことの証明はできなくても、1年目と10年目の写真にフェンスが移っていれば、その間もフェンスがあって、占有を続けていたと認定して貰えるわけです。そう言えば、沖縄の基地反対の座り込みで、何百日座り込み継続なんてやっていますよね。それに関して、「実際は誰も座り込んでいなかった」なんて、写真付きのSNSで取り上げられたことがありました。「そんな大人気ないことしなくても。。。」と私は思いましたが、こういった「反証」が出てくると、推定は破られることになります。5年目にはフェンスが無かったことの証拠が出てくるようなものです。

高確率をもとにした、裁判等での事実認定の話に戻ります。世の中には、「高確率」ではあるけれども、認めて良いのか悩んでしまう、不都合な事実があるのです。例えば電車内の痴漢事件で、捕まった人が「あんなババアに触るわけないだろう」なんて言った事件がありました。この言い草、たとえ弁護人の立場でも「ふざけるな!」と怒りたくなります。その一方、うちの事務所では多くの痴漢事件を扱ってきましたが、被害者の圧倒的多数は、10代20代の大人しそうな女性であったことも事実なのです。

私が現実に担当した痴漢事件で、「あんな怖そうな女性に間違っても触りませんよ」と、被疑者が無罪主張していた事件がありました。でも、「間違って触ったかもしれないからお詫びする」ということで、私が示談に行ってきました。この「被害者」、奇人変人のオーラが全開で、とても怖かったのです。私もいきなり叱られました。大きな声では言えませんが、「この人に痴漢しようなんて人、居るわけないのでは」と私も思ったものです。この件、示談はできなかったのに、理由は不明ですが検事は不起訴にしてくれました。検事も被害者から事情聴取をしてみて、私と同じ感想を持ったのではと思ってしまったのです。

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◇ 弁護士より一言

ライフワークとして減量を続けています。頑張って少し痩せると、またすぐに油断してせんべいを食べてしまう。すると家族から「もう、減量は止めたの?」なんて聞かれると、自分で分かっているからこそ、腹が立つ! 前後両時点において減量した証拠があれば、その間減量していたと認めて欲しいものです。
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