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2022年07月16日発行第321号”弁護士の手”

令和 4年 7月16日(土):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和4年7月16日発行第321号「弁護士の手」をお届けします。

○今回のニュースレターを読んで最初に感じたことは、ただより高いものはないということわざ?でした。次にうまい話には裏がある、楽して得はできないなど教訓が色々出てきました。弁護士業務の核となる裁判業務でも、良い結果を得るためには、地道な努力が必要です。楽して勝とうなんて思うと、却って酷い目に遭います。願いがかなうという「猿の手」なんて、決して、譲り受けない方が良いですね。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の手


本格的な夏の猛暑に備えて、少し怖い話をします。「猿の手」というのは、有名なホラー小説です。ある夫婦が、ミイラになった猿の手を譲り受けます。この猿の手にお願いすれば、どんなことでも3つかなうというのです。あまり本気にしていない夫婦は、家のローンが返せる程度の、まとまったお金が手に入るように願います。しばらくして、夫婦のもとに、最愛の子供の事故死の知らせが届きます。そして、子供の死亡見舞金が、夫婦が猿の手にお願いした金額だったのです。

読むほどに怖くなる小説ですが、教訓めいたことを言うなら、世の中には「対価」無くして、何かを手に入れることはできないという話のように思えます。以前読んだ本に、成功の秘訣が書いてありました。それぞれの成功には、そのための対価が必要だというのです。だから、成功しようと思ったら、ストイックに毎日毎日、その対価を支払い続ければ良いそうです。私も、どんな「対価」を払えば減量できるか知っていますが、実行はできないんです。

ということで、法律の話です。米国のロースクールに留学して、契約法を学んだときに、真っ先に説明を受けたのが、この「対価」の考えでした。契約というのは、何かと何かを交換する約束なのだから、対価無くして、契約は成立しないということです。言われてみれば当たり前のことですが、学校で教えて貰って、妙に納得したのを覚えています。もっとも日本の法律でも、「対価」がない契約は認められ難いという規定はあります。贈与契約みたいに、対価無くして一方的にあげる契約の場合は、文書にしないと原則効力がないといった、制限が設けられているのです。やはり、対価の無い「うまい話」は、法律もなかなか認めてくれないようです。

「猿の手」の話に戻りますと、子供を亡くして、精神的におかしくなってしまった母親は、再び猿の手に願い事をします。「子供を生き返らせて下さい」ある晩、夫婦のもとに何か不吉なものが近づいてくる気配がします。何かとんでもないことが起こる不安を感じた夫が、3つ目の願いで、妻の願いをキャンセルして、この小説は終わります。

もっとも私は以前から、本当にこれで、猿の手の恐怖は去ったのか、疑問に思っていたのです。何故なら、2つ目の願いを無かったことにするという、3つ目の願いの対価が、まだ支払われていないからです。契約の場合、ひとたび締結したら、自由にキャンセルはできません。相手方が契約違反したような場合に、初めて法律上の解除が認められます。そうでない場合は、解除できるというオプションを予め購入しておかないと、違法なキャンセルの対価として、損害賠償を支払う必要があるのです。「対価」なくして、契約を無かったことにはできないということですね。そう考えますと、「猿の手」の場合も、実はその後、「キャンセルの対価」として何か恐ろしいことが発生していたのではないかと、心配になってしまうのです。

仮に私が「猿の手」を入手しても、対価が何か分からないと、不安で頼めませんね。例えば、20キロ減量したいなんて願ったときに、食欲がなくなるみたいな「対価」で痩せるのなら良いのですが、足の切断で体重が減るなんてことになったら嫌です。契約の場合、ここまで「対価」が分からない物はまずありえません。ただ、分かり難い契約で、気が付いたら非常に高い「対価」を支払うことになっていたなんてことは結構あるので、注意が必要です。

最後に「猿の手」ならぬ「弁護士の手」というのを考えてみました。それに願えばどんな裁判でも勝つことができます。その場合、「対価」は何だろうかと気になったのです。非常に高額な弁護士費用が対価なら、まあ、諦めて下さい!しかし、無理やり勝訴した対価として、それよりさらに大切なものを無くすこともあり得ます。親族友人との人間関係を完全に壊してしまうなんて「対価」もありそうで、これなど大変怖い話に思えるのです。

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◇ 弁護士より一言

今回のニュースレターは対価をテーマにして作るんだと内容の構想を妻に話すと「うんうん」と聞いていたと思ったら「ロクヨンゴの話ね!」と言われました。いったい何のことかヒントまでもらって考えていたら645年の「大化」の改新のことでした。「な、なんじゃそりゃ。いつも私のダジャレには冷たいくせに自分はいいんか!」との言葉を、ぐっと我慢したのです
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