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令和 3年12月17日(金):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和3年12月16日発行第307号「弁護士の壁職人」をお届けします。 ○「「専門家」のこだわりで、訴訟の勝ち負けだけ考えてはダメでしょう。」は、正にその通りです。数年かけて徹底して調査・研究して膨大な準備書面を書き、徹底的な立証活動をしていたような事件は、専門家の立場としては、結論を聞いてみたいと思うものがあります。 ○しかし、お客様が長い裁判に嫌気が差して、相当譲歩しても良いから早く訴訟を終わらせたいと考えている場合、そのお客様の希望に沿った訴訟活動にすべきです。現在、正にそのような事件を複数抱えており、大山先生から、貴重な忠告を受けました(^^)。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護士の壁職人 今年最後のニュースレターは、壁職人と弁護士業との共通点について考察しちゃいます。「トム・ソーヤの冒険」に壁塗りの話がありますね。いたずらの罰としてトムが壁塗りをさせられていると、それを見た友達にからかわれるわけです。ところが、壁塗りを楽しそうにやってみせると、皆やりたがる。そこで最後は、友達からお金を取って、壁を塗らせるという話です。 この辺は人を使うコツといえそうです。私が面白そうに準備書面を書いていると、若手がみんなやりたがる、なんてことがあれば良いですね。準備書面を書くためには、私にお金を払うことになります。あ、あほか。壁塗り職人と言えば、教会の壁を塗っている二人の職人の話も有名です。あなたは何の仕事をしているんですかと聞かれて、「毎日壁を塗っている。退屈な仕事ですよ」と、一人の職人は答えた。一方、もう一人の職人は、「神のお住まいを作っています。とてもやりがいのある、名誉な仕事です」と答えたそうです。 これは、仕事に取り組む心構えの話ですね。同じ仕事でも、誇りと使命感を持って働くことの大切さを示す話です。考えてみますと、松下幸之助にも似たような話がありました。電球を磨いている職人がつまらなそうに仕事をしていたわけです。松下幸之助がその人に、「あんたの仕事は、電球磨きやない。電球の光の下で、幸せに暮らしている家族の笑顔を作る仕事なんや」と教えてあげたという話ですね。その職人は、その後誇りを持って仕事に取り組んだということです。「さすが松下先生。うまいこと言って働かせたな!」なんて皮肉なことは思いません。ほ、本当です。自分の仕事に誇りを持つことは大切なことだと信じています。 私も、「あんたの仕事は、悪人を守ることやない。今後の更生のため、一番良い方法のお手伝いをすることや」と、うちの若手弁護士に話して、「この人の弁護はちょっと。。。」と尻込みしたくなる被告人の弁護をして貰おうと思ったのです。おいおい。。。という冗談は別にして、自分の仕事に誇りを待つ壁職人の話は、とても感動的なのは間違いありません。 ところが、この壁職人の話、全く違う見方があるんですね。こちらは、かの有名な経営学者、ピーター・ドラッカー先生の本に出てきます。こちらの話でも、二人の壁塗り職人が登場します。「何をしているのか?」と聞かれて、一人の職人は答えます。「お金を稼ぐために、壁を塗っているんだよ」もう一人の職人も答えます。「素晴らしい教会にするために、完璧な壁を作っているんだ!」ところが、ドラッカー先生によると、「お金のために仕事をしている」という職人の方は、壁塗りという専門職として問題ないんだそうです。その一方、完璧な壁を作っていると答えた職人は、専門職として問題だそうです。 壁というのは、建造物全体の中の一部にすぎません。泥棒除けや、目隠しのために、どんなものでも良いから必要ということもあります。そうだとすれば、出来映えは悪くても、取り敢えず早く作ることが大切になってきます。ところが、完璧な壁を作ろうとする「職人気質」の人は、このことを理解できないというのです。 これって、確かに弁護士にも、よくある話だと思います。企業の法律問題の処理は、あくまでも経営という全体像の一部についての、専門職の担当する仕事に過ぎません。例えば訴訟の場合を考えても、経営の立場から見た全体最適でいえば、不利な内容の和解でも、早期に訴訟を終結させることが必要な場合もあります。「専門家」のこだわりで、訴訟の勝ち負けだけ考えてはダメでしょう。自分の仕事に誇りを持ちながら、顧客の目的を忘れず仕事をする、そんな専門職になりたいものです。 ******************************************* ◇ 弁護士より一言 もうすぐクリスマスです。うちの子供たちは、サンタさんがプレゼントをくれるということを長いこと信じてました。「この子達大丈夫かな?」と少し心配になったものです。 しかし、去年のクリスマスには、子供たちが、両親へのプレゼントをクリスマスツリーの下にプレゼントを置いといてくれました。嬉しいような、少し寂しいような気持になったのでした。 以上:2,125文字
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