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2020年06月01日発行第270号”結婚弁護士の一人説(1)”

令和 2年 6月 2日(火):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和2年6月1日発行第270号「結婚弁護士の一人説(1)」をお届けします。

○確かに30数年前の私の独身時代は、女性が結婚することを「永久就職」と表現していましたが、最近は余りというか、殆ど聞かなくなりました。そんなことを言うとやれ「女性差別」だ、「セクハラ」だ、「モラハラ」だとか叱られそうで、怖くなったからかも知れません。

○この時代に、一人説として、法律上の結婚は、「正社員」としての「就職」にあたるんですなんて、唱える大山先生の勇気には感服いたします(^^)。結婚しての「不倫」は、労働者の「副業」に当たるなんて説も、言われてみるとなるほどと納得する面もあります。

○ただ「不倫」については民法第770条で「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。一 配偶者に不貞な行為があったとき。(後略)」と規定されているため、違法行為とされていますが、一般の民間労働者には、副業禁止即ち職務専念義務の規定はないのですね。公務員に関しては、例えば地方公務員法第35条(職務に専念する義務)に「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」と規定されています。

○民間労働者については、職務専念義務が明文化された法律はないようですが、最高裁判例で「身体活動の面だけでなく、精神的活動の面でも注意力のすべてを職務の遂行に向けていなければならない」とされているようです。また、職務専念義務違反は、職務遂行に実際に支障をきたした場合だけ成立するのか、支障をきたしたか否かを問わず、職務に専念していない行為をしただけで成立するのか、という点については、後者の考えの裁判例が多いようです。

○「ようです」と記載したのは、不勉強で、まだシッカリ判例等を調査していなかったからです。これを機会に、この分野もシッカリ勉強します。大山先生の一人説、まだ続きがあるとのことで、楽しみです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

結婚弁護士の一人説(1)


法律の世界にも、多数説・有力説・少数説みたいに、色々な学説があります。そんな中、たった一人しか主張していない学説は「一人説」と呼ばれてます。基本的に変な学説なんですが、私はこういうの大好きなんです。そんなわけで、結婚関連の法律について、一人説を披露します!

私の若いころは、女性の結婚のことが、「永久就職」なんて呼ばれてました。女性も結婚後仕事を持つのが当たり前の現代では、こんな言い方したら大変怒られそうです。その一方現代でも、経済的に弱い立場の配偶者(一般的には女性です)にとって結婚が、就職に類似しているというのは、あながち間違いとも言えないでしょう。

就職の場合は、「労働法」という法律が適用されます。一方結婚の場合は、夫婦や家族に関する別の法律が適用されるんです。しかし、結婚にも労働法を適用できないか、一人説を考えてみました。実際問題として、結婚の法律と労働の法律は、かなり似ているんですね。まず、雇用主は従業員に、給与を支払わないといけませんが、結婚の場合も、婚姻費用分担ということで、やはり相応の費用を支払わないといけないのです。

一方、従業員の側は雇用主のために仕事をしないといけないことになっています。ところが、ほとんど成果を出していない従業員も世の中にはいます。雇用主は怒りますが、「仕事をしない」「役に立たない」というだけでは解雇は認められないのが日本の法律です。私の若いころには、「休まず、遅れず、働かず」なんて言葉がありました。形だけ職場に来てるだけで、何の成果もあげていない従業員を表す言葉です。実際今の時代でも、労働裁判などの場で、雇用主から怒りの声を聴いたことは何度もあります。「挨拶一つしないで、いつもブスッとしている。お客様にお茶を出すのに、ドンとたたきつけるように置く。何か頼まれても、本当に嫌そうにだらだらする」ような従業員を、「なんで首にできないのか!」というわけです。

でもこれって、「永久就職」である結婚の場合も同じなんです。「家事も育児もしないで、昼寝ばかりしている」ような人だからといって、それだけで離婚が認められる可能性は低いのです。この辺も、労働法と結婚法は、とても似ています。それなら、どんな場合には離婚できるかと言いますと、不貞行為があったときですね。家事も育児も完璧で、どんなに夫に尽くしていても、「余暇」の時間に「不倫」をしたら、離婚が認められるのです。

「余暇は自由時間だから、ゲームしようがテニスしようが不倫しようが同じじゃないか」という理屈は通用しないのです。それでは、労働法の方では、どうなっているのかと言いますと、「不倫」に匹敵するような行為があるんです。それが「副業」です。理屈から言えば、労働者は自由時間には好きなことをしてて良いはずです。実際問題として、徹夜でゲームして、会社でボーッとしている人もいます。でも、解雇はできないんです。

一方、長時間副業していたなんてバレますと、たとえ会社でしっかり仕事していても、解雇の正当事由となります。普段は労働者の味方である弁護士や学者先生も、「副業」の場合は、従業員に厳しい態度をとります。私はこのことを、昔から不思議に思っていたんですが、「副業」というのは、「不倫」に匹敵する、会社に対する裏切り行為なんだと考えると、良く理解できるというのが、私の一人説なのです。ちなみに、法律上の結婚は、「正社員」としての「就職」にあたるんです。結婚してない場合は不倫の問題が生じないように、アルバイトの場合は、副業の禁止など、そもそも初めから問題になりません。ということで、くだらない一人説の話ですが、次回も続けます。

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◇ 弁護士より一言

4月から大学生になった次女は、まだ一度も登校していません。「これじゃあ友達ができないね」と嘆いていたので、「大丈夫。パパは友達いないけど、元気にやっているよ!」と励ましたところ、「パパの友達いないは笑えない。」と言われちゃいました。ううう。。。私も法律家の友達を作って、一人説を二人説、三人説へと発展させていこうと決意したのでした。
以上:2,715文字

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