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平成30年 2月16日(金):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成30年2月16日発行第215号「弁護士も名を正さん」をお届けします。 ○私の弁護士と言う職業に対する考えは、「人助け意識を弁護士の思い上がりだ!と思う訳は?」に記載したとおりで、「『助けてやっている』なんて上から目線で思い上がるなと私は常に自分に言い聞かせています。」 ○弁護士の「弁護」とは、民事・刑事問わず、兎に角、お客様の弁護に努めるものであり、この名称は変える必要性は感じませんが、大山先生が言われるように「弁護士は人権擁護の偉い職業だから、特別扱いしてもらって当然!」なんて勘違いしないよう今後も気をつけていきます。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護士も名を正さん 「必ずや名を正さん」というのは、論語に出てくる孔子の言葉です。「政治を任されたら、先生はまず何をしますか?」という質問に対する、孔子の回答です。 子供の頃、この孔子の答えを読んで、なんか納得いかなかったのを覚えています。実質的な制度を変えないで、「名前」だけ正しくしても、あまり意味ないのではと思ったんですね。しかし、最近になってようやく、「名を正す」ことの重要性が分かってきたのです! 「国民総背番号制」ってありましたよね。個人に番号を割り振って、管理しようというものです。これに対して、本当に多くの人たちが反対しましたね。国民に背番号を付けて国家権力による統制をするなど、国民の人権侵害だなんていって、多くの弁護士も大反対していたはずです。ところが、「国民総背番号制」が「マイナンバー」だなんて訳の分からない名前になると、大した反対もなしに、あれよあれよという間に制度化されてしまいました。特に国民の人権が弾圧されたという話も聞きません。 こうなりますと、反対していた人たちというのは、ただ「名前」に反応していただけであり、「名を正し」たら問題解決したとしか思えないのです。政治の世界では、本当に「名前」が大切だなと感じます。 医療費の負担問題でも、「後期高齢者」なんて「名前」を付けたために、凄くもめました。「どういう属性の人たちに、どれだけの自己負担を求めるか?」という問題なんですが、名前に拒絶反応を示して、ほとんど議論もできなくなったと記憶しています。たとえば、「甲種医療費負担」みたいな、訳の分からない名称にしておけば、ここまで反発されなかったのではと思うのです。 この他にも「名を正」したほうが良いなと思うことは沢山あります。弁護士の場合、国の責任を追及するのが好きなんですね。悪の国家権力から賠償金をとってやったという感じです。でも、「国」のお金というのは「税金」のことです。要は、国民の税金を、どのように分配するかという問題なんですね。「国」という名前を「税金」という名前に正したなら、国家賠償に対する国民の意識も違ってくるように思うのです。 ということで、法律の話です。法律の世界でも、名前を正した方が良いことが沢山あると思うのです。以前から一番気になっていたので、民事訴訟での「原告」「被告」という言葉ですね。「被告」というのは、原告に訴えられた人というだけの意味なんですが、かなりの人が「犯罪者のように扱われた!」ということで、大変怒るのです。「被告」だなんて言われた以上、絶対に和解はできないなんて意地になる人もいるんですね。間違った名前によって、もめなくてもいいところでもめているような気がします。 そこで「名を正」して、訴えた方を「甲方」、訴えられた方を「乙方」みたいに呼ぶようにすれば、大いに紛争解決に役立つと思うのです!さらに、余計なお世話かもしれませんが、「検察官」という名前は、どうにも今一つのように感じていました。犯罪者を適切に処罰して、国民の安全を守るのが仕事のわけですから、「護民官」みたいに名前を正せば、もっと人気の出る職業になりそうです。 以前も書きましたが、「弁護士」という名前は、実態を無視した、かなり変な名前だと思います。弁護士の仕事の9割以上は、個人間の紛争で、一方当事者のために働くものです。「名を正」して、「紛争代理人」とか「民事代理人」とすれば、少なくとも今のように、「弁護士は人権擁護の偉い職業だから、特別扱いしてもらって当然!」と勘違いする「弁護士」も、少しは減少していくのではと期待しているのです。 ******************************************* ◇ 弁護士より一言 久しぶりに風邪をひいて、一週間も寝込んでしまいました。モウロウとした意識の中で、かつて娘が風邪をひいて、寝込んでいたときを思い出したのです。普段は食いしん坊の娘が、ぐったりして苦しそうでした。妻が枕もとで、「何か食べたいものある?何でも言ってね。」と伝えました。すると娘は、とぎれとぎれに言ったんです。「か、からあげ。ポテト、アイス。。。」まだまだ、余裕じゃん!と安心したのを覚えています。今回娘の「からあげ」の声がよみがえってきて、私の風邪も快方に向かったのでした。 以上:2,151文字
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