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平成29年10月17日(火):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成29年10月16日発行第207号「弁護士殺し金の地獄」をお届けします。 ○「いずれにしても、お金は法制度に影響を与えます。」で「地獄の沙汰も金次第」という言葉を思い出しました。相談に来るお客様に、受けた損害については、結局、お金に換算してお金で回復するしかないんです、「地獄の沙汰も金次第」なんです、なんて説明をしていました。 ○しかし、この説明は誤りだったようです。ピクシブ百科事典というサイトの説明では、「地獄の沙汰も金次第」について、 一般において、「地獄の裁判も金の力で有利になる。この世はすべて金の力で左右されるというたとえ」などと書かれた辞書さえ存在するが、これは言葉の意味を履き違えたとんでもない誤解である。とされています。 ○地獄は、死後の世界即ちあの世であり、「そもそも金はあの世に持っていけないのだから、地獄の沙汰を金でどうこうするなど土台無理である。 」なんて説明もされています。ところが、故事ことわざ辞典では、「地獄での裁きでさえ金があれば有利にできるという意味から、何事も金の力さえあればどうにでもなるということ。『沙汰』とは、『裁判』『裁定』の意」とされています。 ○特殊浴場勤務女性との性関係は、お金で割り切った関係なので家庭の平和を乱さないとの理屈で、不法行為責任は認められないというのが建前論ですが、昔から女郎部屋に通い詰めて家庭の平和を乱す話しはいくらでもあります。それでも家庭の平和を乱した責任は夫にあり、女郎さんに責任を認められないとは思いますが。今時、「女郎」なんて言葉は使いませんが(^^;)。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護士殺し金の地獄 「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」は、近松門左衛門の代表作です。子供の頃にこの題名を見て、「一体どんな凄い話なんだろう?」と感動したのを、今でもよく覚えています。甘やかされて育った油屋の若旦那が、放蕩の末、勘当されます。その後、親切にしてくれていた、別の油屋のおかみさんを、遊ぶ金欲しさに殺すという話なんです。お金が人を狂わせるということですが、これは現代でも同じでしょう。さらにお金は、人を狂わせるだけでなく、法制度や道徳までも狂わせていると思うのです。 うちの事務所では刑事事件を多数扱っていますが、お金のおかげで刑罰を受けずに済む事案なんて、本当に沢山あるんです。しっかりとした弁護士を付けるかどうかで、刑罰が変わってくることはよくあります。もちろん、弁護士には相当の費用が掛かります。(す、済みません。。。でも、お金貰わないと、活動できないんです。)性犯罪なんて、最近刑罰がとても重くなってきています。そういう中で、被害者に相当のお金を支払い、許して貰えば刑罰を受けずに済むことが多々あります。同じような犯罪をしても、お金があるか否かで、本当に大きな違いがあるんです。 もっとも、こういう形でお金が司法に影響を及ぼしていることについて、多くの方は否定的にとらえているでしょう。その一方、お金による影響について、法律家も一般の人も、当然認められていると考えていることもあります。電車で、お年寄りや身体の不自由な人に席を譲るというのが、日本で認められている道徳ですよね。しかし、指定席の場合には、席を譲らなくてもよいというのもまた、一般的な道徳観念です。これなんかも私には不思議に思えます。今後、一般の電車でも、席に座る場合は数百円の別料金を支払うなんて制度になったら、「電車でお年寄りに席を譲る」なんて道徳は、消滅してしまうんでしょうか。。。 結婚している男性が、妻以外の女性と性的関係をもつと、不貞行為ということで、損害賠償責任が生じますね。このとき、相手の女性に対しても、損害賠償が認められるというのが、日本の法制度です。浮気した夫だけでなく、浮気相手の女性からも、賠償金をとれるのです。ところが、この原則には例外があるんです。相手の女性が、風俗関係の、お金でやり取りするプロの女性の場合には、責任を問われないことになっています。これは、六法にも、法律書にも書いてないことなんですけど、なぜか当然のこととして受け止められています。なぜそうなるのか、疑問に思う法律家は、私くらいかもしれません。そもそも一般の人も、裁判所と同じ考えのようです。特殊浴場の女性が、不貞行為の責任を追及されたなんて、聞いたことがないです。お金が絡むと、責任免除になるんです。 その一方、特殊浴場の女性が避妊せずに客の子供を産んでも、客の子供として認知されなかったはずです。以前はDNAの技術など発達してなかったこともありますが、それだけではないように思います。家族法のどこにもそんな記載はありませんが、お金を介する性的関係の場合は、家族法も事実上適用外だという共通認識があるように思えます。DNA鑑定技術が進歩し、子供の人権が強く主張されている現代で、こういった常識がいつまで認められるのか、気になりますね。風俗のプロが客を騙して子供を作った場合、その子供にも客の相続権が認められるかもしれません。 いずれにしても、お金は法制度に影響を与えます。法律の世界も、「金が仇の世の中」なのです! ******************************************* ◇ 弁護士より一言 息子が声変わりして、しばらくの間は、低い声で話しかけられると、「ど、どちら様でしょう?」なんて一瞬とまどってしまいました。しかし、話の内容は本当の子供っぽいのです。「今日のご飯なに?」と毎日聞いてきて、食べ始めると、「めちゃウマ。うまうま警報発令中!」なんて、喜んで声を上げてます。いずれ近いうちに、話の内容も、大人のようになるのかなと思うと、少し残念に感じるのです。 以上:2,463文字
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