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2017年10月01日発行第206号”趙盾の刑事責任”

平成29年10月 2日(月):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成29年10月1日発行第206号「趙盾の刑事責任」をお届けします。

○大山先生の言われる「自分の会社に起こったことは、全て自分の責任だと考える人の会社が、伸びていると思います。」には正に同感です。その覚悟がなくて、社長に就くべきではないと思います。弁護士にも、事務員が破産手続開始決定書を偽造して公文書偽造罪に問われた例が過去に何件かありましたが、これなんかは、事務員の責任より、事務員をそこまで追い込んだ弁護士の責任の方が遙かに重いはずです。然るにその弁護士には何らの刑事責任を問われないことに強い違和感を感じていました。

○政治家でも「秘書が、秘書が」と言い訳をする例が数多くあります。しかし、秘書の責任は全て雇い主の政治家の責任と自覚すべきです。弁護士も同様に、勤務弁護士や事務員の行う事務所業務は、全て弁護士の責任と自覚して事務経営に当たるべきと自覚して行きます。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

趙盾の刑事責任


少し前に、電通の新人女性が、過労のあまり自殺した事件がありました。とても痛ましい事件です。世間もマスコミも、電通を強く非難していました。当然です。

その後、電通の社長が、違法な残業をさせていたということで、刑事裁判を受け、罰金刑の判決を受けたというニュースがありました。電通のような大企業の社長としては、顔も名前も知らないであろう新入社員の自殺を契機に、処罰されたわけです。こういう風に、会社のトップが刑事事件で裁かれるのは、今回の電通のケースが初めてというわけではありません。これまでにもいくつもありました。火事で宿泊客に犠牲者を出したホテルの社長とか、電車脱線で人身事故を起こした鉄道会社の社長なんかの例ですね。

こういう裁判の場合、社長によっては、自分には責任がないとして争う人もいます。私も法律家としては、「いくら何でも、社長に法的責任問うのは難しいのでは?」なんて思ってしまいます。法律上の責任、特に刑事責任となると、認められるために厳格な要件があります。具体的にどういう法的義務があり、それにどういう形で違反し、その違反と因果関係の認められるどのような結果が発生したのかなど、厳しく確認されます。こういう観点からすると、「社長の刑事罰など安易に認められない。」という見解はもっともなことです。これで、前科者になるのかと思えば、社長としても争いたくなるでしょう。それでも私は、トップというのは、組織に起こったことはすべて自分の責任と考えて、責任を受ける方がカッコいい気がします。

こういうニュースを聞くと、私は中国の趙盾(ちょうとん)の話を思い出すのです。今から2600年以上前に活躍した、一国の総理大臣です。暗愚な国王を補佐して頑張っていたのですが、かえって国王に殺されそうになります。やむなく亡命しよう逃げたところで反乱がおこり、国王は殺されます。この事件について、国の歴史家は、「趙盾が主君を殺した。」と、歴史書に記載したんです。さすがにこれは勘弁してくれと苦情を述べた趙盾に対して、その歴史家が言います。その言い分は、必ずしもよく分からないんですが、要は「あなたは国のトップにいたのだから、そこで起こったことに対する責任はあなたにある。」ということです。

これに対して趙盾は、「ふざけんな!お前はクビだ。」なんて言わないで、この記載を受け入れたのです。趙盾は、国の歴史書には、主君を殺したと書かれている一方、非常に偉大な人だとして語り継がれています。たとえ、「○○社長電車の乗客を殺す」などと判決に書かれても、「責任を甘んじて受けた、偉大な社長だった。」と語り継がれることはあるはずです。

弁護士をしていると、多くの経営者の方と知り合いになります。自分の会社に起こったことは、全て自分の責任だと考える人の会社が、伸びていると思います。

会社の従業員による横領事件など、多くの会社で起こるんですね。あとから話を聞くと、本当にずさんな経理処理をしている会社も多いですね。こういう事件が起こると、経営者の器量が試されるように思います。「取ったやつが悪い!」というのはその通りなんですが、それと同時に「自分の会社の経理処理がいい加減だったせいで、出来心を起こさせてしまったのは自分の責任だ。今後に生かしていこう。」と考える経営者も多数いるんです。私も、うちの事務所で起こったことは、全て自分が責任をとることを、お約束します!

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◇ 弁護士より一言
昔から娘は、分からない言葉があると質問してきました。数年前に、「パパ、『成人向け』ってどういうこと?」って、聞かれたのです。とっさに、「人間じゃなくて、バルタン星人向けって意味だよ!」と回答しました。娘は、何となく冷たい目で見てきます。

すると、2人の会話を聞いていた息子が、「バルタン星人、カッコいいじゃん!」と言ってくれました。いずれ息子に、「パパのせいで、『成人向け』の意味を間違って覚えて、恥をかいた!」と言われたら、親としての責任を甘んじて受けたいと思ったのでした。
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