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2015年11月01日発行第160号”ヒポクラテスの弁護士倫理”

平成27年11月 2日(月):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成27年11月1日発行第160号「ヒポクラテスの弁護士倫理」をお届けします。

○今回の私の感想等は、後記します。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

ヒポクラテスの弁護士倫理


前回、倫理の話を書きましたので、今回は弁護士倫理について考えてみます。専門職の倫理と言いますと、なんといっても「ヒポクラテスの誓い」ですね。2500年ほど前に活躍した、名医の代名詞になっているヒポクラテス大先生が定めた、医者たるものが守るべき規範です。現代でも少し形を変えて受け継がれている、凄い教えです!

まず誓うべき内容は、医術を教えてくれた師を、実の親のように敬まえというものです。そして、師の子孫や弟子たちには、医学の知識を惜しみなく与えないといけません。その一方、それ以外の人達には、医術の知識を教えてはいけないというのです。これなんか、すごい仲間意識です。まさに、医療という領域を、自分たちの「縄張り」として考えているのでしょう。

さらに、どんな治療を行うかについても、定めがあります。まずは、たとえ患者から頼まれても、人を殺したり、堕胎させるような薬を与えてはいけないと定められています。安楽死を希望する患者さんの依頼を聞くことはできないですし、どんな理由があっても中絶の手伝いはできないというわけです。

さらに、医師としての判断で、患者にとって一番良いと思われる治療を行うことも誓いの内容になっています。患者さんがなんと言おうと、そんなことを聞く必要はないのです。あくまでも、専門家としての知識と誇りをもとに、自分が一番良いと考える治療を行う必要があるといいうことです。

お客様である患者の意思を尊重する「サービス業」とは、対極の考えでしょう。ヒポクラテス大先生は、治療の相手が男か女か、自由人か奴隷かを問わず、ベストの医術を行うことを誓わせています。医療というのはお金の対価としてなされる経済活動とは別物だという、強い自負心を感じますね。「医師はサービス業じゃない!」と明言する人は、現代でも沢山いるでしょう。

ということで、弁護士の話しです。日本の「弁護士倫理」は、「ヒポクラテスの誓い」にかなり近いように思えるんです。弁護士の仲間内では法的知識を共有することが奨励される一方、弁護士以外のものが法律業務に関係することには、強烈に反発します。司法書士や行政書士の人達を、弁護士の活動領域を侵害したという理由で刑事告発までします。法律業務は弁護士の「縄張り」かよと、突っ込みをいれたくなるのです。

仕事内容でも、顧客へのサービスなど考えずに、自分がベストと考える対応をすることが必要と思われてきました。その一方、報酬が安い国選事件でも、貧しい人に対しても、最高の対応をすべきというのが、「弁護士倫理」だったはずです。

「ヒポクラテスの誓い」自体、現在かなり批判されているようです。仲間意識による閉鎖性や、患者の希望を考慮しないところなど、批判されてもやむを得ないところもありそうです。患者を「お客様」と考えて大切にしろというのが、時代の流れに思えます。

同じことが弁護士の世界にも当てはまります。仲間意識が強くて、他の者を排除するような弁護士業界のあり方には、私自身、以前から疑問を感じていました。お金を払ってくれる「お客様」を大切にする、「サービス業」としての自覚も、もっと必要だと思います。

その一方、専門家としての知識と誇りを重視する「ヒポクラテスの誓い」は、弁護士の仕事をしていくうえで、本当に大切な「倫理」だと思うのです。

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◇ 弁護士より一言

私は、様々な分野で活躍している人のところに行って、お話を聞いてくるのが趣味?なんです。成功のヒントを勉強し、事務所の若手弁護士とも共有しています。先日、やり手の経営者のお話を聞きに行きました。若くて、背が高くて、とてもカッコいい人。

で驚いたのですが、経営スタイル、目の付け所、不屈の根性と、どれをとっても素晴らしい!本当に感動して、うちの妻にもその人の話をしました。いつになく真剣に聞いていた妻が、最後に一言だけ質問してきたんです。「その人って独身?」
あ、あほか!独身だったらどうするんだよ!!


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○例によって教養乏しい私は、ヒポクラテスの名前だけは知っていましたが、ヒポクラテスの誓いなんて知りませんでした(^^;)。勉強のためネット情報を拝借します。「ヒポクラテスの誓い」というサイトがありました。

【ヒポクラテスの誓い・原文:小川鼎三訳】
医神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。

○ この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わが財を分かって、その必要あるとき助ける。
○ その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
○ 私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
○ 頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
○ 純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
○ 結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするものに委せる。
○ いかなる患家を訪れる時もそれはただ病者を益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。女と男、自由人と奴隷の違いを考慮しない。
○ 医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る。
○ この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい。

The Oath of Hippocrates

I swear by Apollo the Physician, and Aesculapius, and Health, and All-heal, and all the gods and goddesses, that, according to my ability and judgment, I will keep this oath and this stipulation-to reckon him who taught me this art equally dear to me as my parents, to share my substance with him, and relieve his necessities if required; to look upon his offspring in the same footing as my own brothers, and to teach them this art, if they shall wish to learn it, without fee or stipulation; and that by precept, lecture, and every other mode of instruction, I will impart a knowledge of the art to my own sons, and those of my teachers, and to disciples bound by a stipulation and oath according to the law of medicine, but to none others. I will follow that system of regiment which, according to my ability and judgment, I consider for the benefit of my patients, and abstain from whatever is deleterious and mischievous. I will give no deadly medicine to anyone if asked, nor suggest any such counsel ; and in like manner I will not give to a woman a pessary to produce abortion. With purity and with holiness I will pass my life and practice my art. I will not cut persons laboring under the stone, but will leave this to be done by men who are practitioners of this work. Into whatever houses I enter, I will go into them for the benefit of the sick, and will abstain from every voluntary act of mischief and corruption of females or males, of freemen and slaves. Whatever, in connection with my professional practice, or not in connection with it, I see or hear, in the life of men, which ought not to be spoken of abroad, I will not divulge, as reckoning that all such should be kept secret. While I continue to keep this oath unviolated, may it be granted to me to enjoy life and the practice of the art, respected by all men, in all times ! But should I trespass and violate this oath, may the reverse be my lot!


○この「ヒポクラテスの誓い」、私には如何にも堅苦しく、ちと狭量に感じます。医師の方々には、「加茂淳整形外科医師著作で感激した記述紹介」で紹介した山田浩医師指導の「ドクターズルール10」を心得にして頂きたいものです。以下に、再度、紹介します。

1.死期を早めてはならない。不必要に死期を延ばしてはいけない。患者は死に至るまでの過程を大切にして欲しいと願っているのではないか。安らかに死ぬのも医療のうち。

2.臨床的証拠がないからといって、病気が存在しないという証拠にならない。患者の訴えは正しいものである。医学的にあり得ないと考えずに、訴えに耳を傾けること。患者は全身で24時間、疾病と対決している。

3.あなたが診ようが診まいが、殆どの外来患者の病気は治癒するものである。病人が治るのを邪魔しないのが良い医師である。

4.態度、言葉は医師の有するもっとも重要な手段である。その重要性を認識して賢明な使い方ができるようになりなさい。医師は役者でなければならない。相手、場合によっては態度、言葉を変更する必要がある。

5.ほかのことをしながら患者の話を聴いてはならない。患者が話している最中に病室から出てはならない。患者は常に自分のことに百パーセント関心を持ってほしいと願っている。患者は病気の治療に来るとともに安心を求めに来る。病院は安心を売る商売である。

6.患者を好きになる必要はないが、好きになれば役に立つことが多い。親切にすることが最大の医療の補助になる。

7.痛みはいかなるときも速やかに止めること。医療では完璧よりも急を尊ぶ場合が多い。

8.あなたが病院で医師として仕事ができるのは、多くの縁の下の力持ちの人たちがいることを忘れてはならない。夜間のナースからのコールは、医師の助けを求めていることを意味する。早く助けてあげること。

9.投与薬はできるだけ少数に絞ること。量が増えれば、副作用の起こる可能性は指数関数的に高くなる。老人のほとんどは服用している薬を中止すれと体調が良くなる。

10.すべての検査結果について、必ず患者名をチェックする習慣を身につけなさい。検査結果が違う患者のカルテに入っていることがしばしばある。「その患者のものであることを確かめること」
以上:5,477文字

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