平成21年 2月17日(火):初稿 |
○「恩師からの手紙-如何に書くかの工夫と努力を」記載の通り、私は受験勉強時代、恩師Uさんから通信添削で100通の論文を見て頂き、これが論文式試験合格最大の原動力になりましたが、大学4年、卒1,卒2と連続3回択一(短答式)試験に落ち、根強い苦手意識を持ちました。 ○当時気仙沼で1人受験勉強を続けていた私は、短答式式試験に強い危機感を持ち、受験新報と言う受験雑誌の合格体験記を貪り読み、これはと思った方に図々しく短答式試験攻略方法質問の手紙を書きまくりました。質問を書いた方全員から懇切丁寧なご返事を頂きましたが,一番丁寧なご返事を頂いた方の手紙を備忘録として以下に残します。 *************************************** 前略 貴兄のお便り拝見いたしました。私のつたない文章を読んでいただいたそうで恐縮です。それとともに、どうにかして合格への道を切り開こうという貴兄の熱意には感心しました。 お手紙を拝見しますと、貴兄は真剣に受験と取り組んでいるようですが、それにも拘らず実力が上昇しないところに悩みがあるようですね。あまり良い答えにならないと思いますが、私の未熟な体験から考えていることを書きます。 (一)短答式対策について (イ)問題集の利用方法ですが、合格するためには過去の問題集だけで充分だと思います。要は、それを完全に理解し、完全に記憶することです。それには、ただ問題をやるだけでなく、関連する基本書の部分、条文、判例には、必ずあたって確実なものにしていくことが大切です。たとえ、自分では知っていると思っても、自分の頭を信用せず、体で覚えさせるようにして下さい。貴兄はすでに二、三回やったそうですが、もう一度じっくりやってみてください。少しあきてきているなら、条文別にやってみるとか、いつも間違うものを重要的にやってみるとか、いろいろ工夫してみて下さい。 それから、過去の問題だけに絞るべきかということですが、それは人によって異なるので答えられません。確かに、合格するにはそれだけで充分だと考えていますが、人によっては同じものを何回もやっていると興味を失ってしまうことがあります。そういう人は、気分をかえるため他の問題集に手を出すのも良いかも知れません。ただ、次々に新しい問題集に手を出すのは絶対避けるべきです。記憶がちっとも蓄積しないからです。何冊かに絞って(できるだけ少数に)、それを徹底的にやるの方が実力がアップすると思います。 徹底的にやろうとすると、かなり時間がかかりますから、その点からみても新しい問題集に手を出すひまはないだろうと思います。私の場合は、過去の問題と真法会答練でやった問題を反復してやりました。一度、自分でやった問題はなじみがあるので、理解度、記憶度がずっと深まります。あなたは、受験新報を毎月読んでいると思いますが、時間があったら、それに掲載されている答練での練習問題だけはやっておいた方が良いと思います。最近の判例や問題点を知るには絶好だと思います。ただし、これはあくまでも時間があったらということです。 (ロ)民法の条文を全部暗記する必要はありませんが、過去の問題や予想問題を分析して、出そうだと思う条文は完全に暗記すべきです。私の場合、今年はどうも根抵当のあたりが出ると予測していたものですから、かなりそこをよく読んでいったら、案の定、出題されたので助かりました。身分法のところは毎年五題程出るのですから、絶対によく読むべきです。 (ニ)論文対策について 論文ノートの作り方は、各人の好みによりますが、最低のところでは、問題点の所在とそれに対する自説、およびその理由づけ、さらには反対説とその根拠及びそれに対する批判が書いてあり、そのノートを見れば答案が書けるようなのであれば良いと思います。簡潔なものでもかまわないのです。反対説がたくさんあるときは、どれか一つ代表的なものを選べば足ります。論点ノート作成の目標は、自説をハッキリさせるところにあります。自説の長所と短所を確実に押さえるようなものであれば良いのです。私は、論点毎に、約二時間かけ、ノートの表面一頁にまとめるようにしました。 (三)その他気のついた点について (イ)短答対策と論文対策にかける時間の割合ですが、今年は前者に六、後者に四の比率が良いと思います。今年は思い切って短答対策に重点を置いて下さい。短答試験後、その他の科目についてはかなり追い込みがききます。そのかわり短答試験終了までに、憲民刑については完全にマスターしておいて下さい。 (ロ)短答対策をうまく論文対策に役立てて下さい。短答問題をやっていると、論文に出そうなところが必ず出てきます。そのときは、もしここが論文に出たら自分ではどう書こうかと頭の中でまとめるようにして下さい。(時間があれば、すぐ論点ノートを作るのが良いのですが) (ハ)短答対策は、三月頃になって始めるのではなく、今すぐはじめて下さい。そうすると、基本書だけを何回も読むという時間はなくなりますが、問題をやりながら関連箇所を必ず基本書で確認していくようにすれば、自然と基本書を何回も読んだことになりますから。 (ニ)貴兄は、現在独りで勉強しておられるとのことですが、できれば同じ大学の人などと受験友達になった方が良いと思います。独りで勉強するのが好きならそれでも良いのですが。重要なのは、自分の現在の力を客観的に把握することです。そのためには答案練習会に参加するのが一番良いのですが、貴兄のように東京から離れている場合は、それは無理ですから、受験新報の模擬問題に応募して下さい。あれは、真法会答練と同じ基準で採点しますから、自分の実力がわかると思います。また、十二月には答練入会試験問題が掲載しますからやって見て下さい。他学出身者の合格点に達することができれば、来年合格のメドがつきます。また、来年一月号から、答練で出題された論文問題が掲載されますから、それを答案作成して見て、私の方へ送って下されば採点しても良いと思います。私は、真法会答練の助手に依頼されていますので、客観的基準で採点できると思います。 以上、私の考えを書きましたが、疑問がありましたらまた、お便りを下さい。 それでは、来年合格に向かって頑張って下さい。 敬具 S生 以上:2,736文字
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