平成17年 1月15日(土):初稿 平成17年 5月15日(日):更新 |
○実務に入って法律学学習の最終目的は、相手を説得する技術の習得と思うようになりました。簡単に言うと自分の言い分を認めて貰う方向に相手の気持ちを動かす技術です。 ○弁護士の仕事の大半は裁判所の裁判官に向けてお客様の言い分-依頼者の主張を訴え、裁判官から依頼者の主張に従った判断をして貰うことです。 具体的には依頼者の主張を記載した訴状を作成し、通常、相手方からその主張は理由がなく認められないとの答弁書が出され、それに対し、かくかくしかじかの理由で依頼者の主張に理由があるとの事情を記載した準備書面を記載し、依頼者側と相手側とでお互い自分の主張が正しいという準備書面の応酬が続きます。 ○話が難しくなって恐縮ですが、法律とは、世の中に発生する事実について、一定の要件に当てはまる場合に発生する法的効果-権利義務の得喪を規定するものです。 依頼者の主張は法に基づく権利の主張が大部分で、この権利の主張は ①先ず事実関係を記載し(事実)、 ②それが法の定める一定の要件に該当し(要件)、 ③その結果、このような権利が発生するという法的評価を記載し(効果) 依頼者の言い分が法的に正しいことを主張します。 ○上記①、②、③の記載何れもが、論旨明快・簡潔明瞭な文章で、相手方に説得力を持って伝える技術が弁護士にとって極めて重要な商売道具となります。 裁判官は、判断する役割で最終的には判決を書きますが、この判決が受け手を納得させるものにしなければなりません。納得できない判決ばかりでは世の中が乱れてしまいますから。 ○弁護士にしても裁判官にしてもつまるところ相手を納得させる文章を作成する技術が必要で、その技術の訓練が法律学学習の最終目的と思っております。 勿論、相手を納得させることは文章だけでなく口頭-言葉による場合もあり、最終的には「弁も筆も立つ」即ち全体的パフォーマンスが必要です。 ○そこで同業者を見渡すとさすがに皆さん、「弁も立ち筆も立つ」方ばかりです。 生まれつきシャイで、何事も謙虚で控えめで慎み深い私は、「弁も立ち筆も立つ」弁護士になれず、何時まで経っても商売繁盛には縁遠いところが悲しいところです。 以上:884文字
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