令和 7年 4月14日(月):初稿 |
○妻が夫のスマホのline等のメールデータを無断で読んで写真撮影するなどの行為は不正アクセス禁止法に違反しませんかとの質問を受けました。IDやパスワードで保護されたデータを、IDやパスワードを入力して閲覧した場合は、不正アクセス禁止法に違反しますが、そのような保護がされていないメールデータを閲覧するだけでは、不正アクセス禁止法には違反しないと覚えていましたが、不正アクセス禁止法の条文をシッカリ確認したことはありませんでした。そこで、以下、不正アクセス禁止法の条文の備忘録です。 ○不正アクセスの定義は、以下の不正アクセス禁止法第2条第4項に、 「アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為」 「アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為」 と大変難しい表現で記述されています。 特定電子計算機とはパソコンやスマホを言い、識別符合とはID・パスワードのことで、要するにパスワード等でロックがかけられているパソコン・スマホにパスワードを入力してログインしてロックされたデータを閲覧できる状態にすることを言うようです。従ってロックされていないlineデータを見ただけでは不正アクセスには該当しないようです。 ○不正アクセスに至らなくても、無断で夫や妻のスマホを見る行為は違法ではないかとの質問を受けましたが、プライバシー権(私生活情報コントロール権)の侵害に当たることは間違いありません。スマホlineを無断で見たことを理由に不法行為として慰謝料請求が認められた裁判例を探しているのですが、現時点では見つかっていません。 ○「メールデータを違法収集証拠として請求を棄却した裁判例紹介2」では、別居して離婚調停中の妻の携帯電話メールデータを取得した夫がそのデータを不貞証拠として提出しましたが、違法収集証拠として排斥された珍しい裁判例を紹介しています。 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第1条(目的) この法律は、不正アクセス行為を禁止するとともに、これについての罰則及びその再発防止のための都道府県公安委員会による援助措置等を定めることにより、電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止及びアクセス制御機能により実現される電気通信に関する秩序の維持を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的とする。 第2条(定義) この法律において「アクセス管理者」とは、電気通信回線に接続している電子計算機(以下「特定電子計算機」という。)の利用(当該電気通信回線を通じて行うものに限る。以下「特定利用」という。)につき当該特定電子計算機の動作を管理する者をいう。 2 この法律において「識別符号」とは、特定電子計算機の特定利用をすることについて当該特定利用に係るアクセス管理者の許諾を得た者(以下「利用権者」という。)及び当該アクセス管理者(以下この項において「利用権者等」という。)に、当該アクセス管理者において当該利用権者等を他の利用権者等と区別して識別することができるように付される符号であって、次のいずれかに該当するもの又は次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたものをいう。 一 当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号 二 当該利用権者等の身体の全部若しくは一部の影像又は音声を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号 三 当該利用権者等の署名を用いて当該アクセス管理者が定める方法により作成される符号 3 この法律において「アクセス制御機能」とは、特定電子計算機の特定利用を自動的に制御するために当該特定利用に係るアクセス管理者によって当該特定電子計算機又は当該特定電子計算機に電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機に付加されている機能であって、当該特定利用をしようとする者により当該機能を有する特定電子計算機に入力された符号が当該特定利用に係る識別符号(識別符号を用いて当該アクセス管理者の定める方法により作成される符号と当該識別符号の一部を組み合わせた符号を含む。次項第一号及び第二号において同じ。)であることを確認して、当該特定利用の制限の全部又は一部を解除するものをいう。 4 この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。 一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。) 二 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。) 三 電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為 第3条(不正アクセス行為の禁止) 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。 第4条(他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止) 何人も、不正アクセス行為(第2条第4項第一号に該当するものに限る。第6条及び第12条第二号において同じ。)の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。 (中略) 第11条(罰則) 第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。 以上:2,682文字
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