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建築基準法接道要件を満たす囲繞地通行権を否認した地裁判決紹介

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令和 6年 8月22日(木):初稿
○「建築基準法接道要件を満たす囲繞地通行権を否認した最高裁判決紹介」の続きで、この最高裁判決を引用して建築基準法接道要件を満たす囲繞地通行権を否認した地裁判決として平成20年8月25日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)関連部分を紹介します。

○当事者間では原告らに被告らの土地の一部について囲繞地通行権があることは争いがないものの、原告らはそれだけでは建築基準法上の接道要件を満たしていないためそれ以上の幅員の囲繞地通行権の確認を主位的に、予備的には明示ないし黙示の合意に基づく同様の通行権の確認を求めました。

○これに対し、東京地裁判決は、単に特定の土地が建築基準法上の接道要件を満たさないとの一事をもって当該要件を満たすべき囲繞地通行権が当然に認められるとはいえないという平成11年7月13日最高裁の判例を引用して主位的請求を排斥し、原告ら主張の通行権の合意も認められないとして予備的請求も排斥し、当事者間に争いのない範囲の囲繞地通行権の確認にとどめる一部認容としました。

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主   文
1 原告らと被告らとの間において,別紙図面のK.3,K.11,ア,イ,ウ,エ,K.6,K.5,K.4,K.3の各点を順に直線で結んだ範囲の土地について,原告らが通行権を有することを確認する。
2 原告らのその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 原告らと被告らとの間において,別紙土地目録記載2の土地(以下「被告土地」という。)の北東端の幅員2メートルの部分(別紙図面のA,B,K.6,K.5,K.4,K.3,Aの各点を順に直線で結んだ範囲の土地・以下「通路部分ア」という。)について,原告らが通行権を有することを確認する。

第2 事案の概要
 本件は,別紙土地目録記載1の土地(以下「原告土地」という。)を所有する原告らが被告土地を所有する被告らに対し,主位的には民法210条1項,213条1項の囲繞地通行権に基づき,予備的には,BとCとの間での通路部分アを通行の用に供する明示又は黙示の合意(以下「本件合意」という。)に基づき,原告らが通路部分アについて通行権を有することの確認を求める事案である。
1 争いのない事実等(末尾に証拠を略記しない事実は当事者間に争いがない。)

     (中略)

第3 争点に対する判断
1 判断の前提となる事実
(認定に用いた証拠を末尾に略記する。)

     (中略)

2 争点(1)(原告らが,民法210条1項,213条1項の囲繞地通行権に基づき,通路部分アについて通行権を有するかどうか。)について
 原告らは,現状では,原告土地は接道要件を満たしておらず,その上に建物を建てることができないなどとして,民法210条1項,213条1項に基づき,通路部分アについて通行権を有すると主張する。

 ところで,民法210条と建築基準法43条1項本文の接道要件との関係について,判例は次のように述べている。民法210条は,相隣接する土地の利用の調整を目的として,特定の土地がその利用に関する往来通行につき必要不可欠な公路に至る通路を欠き袋地に当たる場合に,囲繞地の所有者に対して袋地所有者が囲繞地を通行することを一定の範囲で受任すべき義務を課し,これによって,袋地の効用を全うさせようとするものである。

一方,建築基準法43条1項本文は,主として避難又は通行の安全を期して,接道要件を定め,建物の敷地につき公法上の規制を課している。このように,右各規定は,その趣旨,目的等を異にしており,単に特定の土地が接道要件を満たさないとの一事をもって,同土地の所有者のために隣接する他の土地につき接道要件を満たすべき内容の囲繞地通行権が当然に認められるとはいえない(最高裁判所第三小法廷平成8年(オ)第539号・平成11年7月13日判決)。

 本件では,原告らが,通路部分イについて通行権を有することは当事者間に争いがない。原告らは通路部分イを通って公道に至ることができるところ,これにとどまらず,接道要件を満たさなければ,原告土地に建築物を建てられないとして,通路部分アについて民法210条1項,213条1項に基づき被告らに対して通行権の確認を求めることは,上記判例の趣旨に照らしても,また,現在よりも被告らが負担する通路部分が広くなり被告土地の利用が妨げられることに照らしても,許されないというべきである。

以上:1,882文字

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