令和 6年 5月27日(月):初稿 |
○弁護士4名でのZoom会議(コロナ禍以前は面談)による毎月1回の判例勉強会を現在も継続しています。順番制で、参加4名の弁護士のうち3名が報告を担当し、判例時報上旬・中旬・下旬の3巻から任意に選んだ判例をまとめて報告します。 ○判例時報令和6年5月号では、私は中旬5月11号が担当でした。この号に収録された判例は、民事1件、労働2件、知的財産権1件の4件のみで、民事・労働判決はいずれも長文で、最も短い判例が日東電工事件と呼ばれる令和5年3月16日津地裁判決(判例時報2586号73頁)で、この判例をレポートすることにしました。最も短いこの判例でも、判例時報での頁数が14頁もあり、他の判例は40数頁、30数頁の超長文判例です。 ○判例時報要旨として、「有期契約労働者と無期契約労働者との間で、扶養手当、リフレッシュ休暇、年次有給休暇の半日単位の取得及び特別休暇に関して相違があったことが、労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例」と説明されていますが、以下、この判例の概要説明です。 ・関連条文 旧;労働契約法20条 現;短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第8条(不合理な待遇の禁止) 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。 ・事案概要 期間の定めのない正社員ではない、有期雇用契約社員・準社員が、電気機器用品等製造・販売等を目的とする被告会社に ➊原告らと正社員との間で ①通勤手当 ②扶養手当 ③リフレッシュ休暇 ④賞与及び基本給 ⑤年次有給休暇の半日単位の取得 ⑥年次有給休暇日数 ⑦特別休暇及び ⑧福利厚生の違いがあり、 旧労契法20条違反不法行為に基づく損害賠償請求 ➋労働契約締結時有期雇用契約社員用就業帰属不存在を理由に全て準社員として準社員としての賞与額の不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求 ・判示概要 判示 請求額例X1 請求額 認容額 扶養手当 52万円 52万円 通勤手当 15万1900円 弁護士費用 6万7190円 5万2000円 小計1 73万9090円 57万2000円 リフレッシュ休暇6万9168円 6万9168円 賃金格差損害 110万円 財産・精神損害 50万円 5万円 特別休暇損害 0円 弁護士費用 5万円 5000円 小計2 55万円 5万5000円 計 245万8258円 69万6168円 ※原告Xらは60名に及び、請求額・認容額が一覧表化されていますが、一覧表最上部のX1の請求・認容額のみを記載します。請求額の約28%相当額が認容されています。 理由 不合理と認められるかどうかは、当該賃金項目の趣旨を個別的に考慮して解するのが相当として、請求根拠前記①乃至⑧のうち②・③・⑤・⑦の相違は不合理として一部認容 ➋は、準社員として労働契約をしたとは認められないとして棄却 ①通勤手当は、被告における代替手段(通勤バス等準備)を考慮し不合理とせず ②扶養手当・③リフレッシュ休暇は、②継続的雇用確保、③長期勤続者への報償から、正社員との差別は不合理、扶養手当に関しr2.10.15最高裁判決参照 本件原告らは6月乃至1年以内の有期雇用労働契約だが、反復更新が前提で10年以上勤務している者もいて相応に継続的勤務が見込まれると判断 ④賞与及び基本給は、正社員と原告らの職務内容等が大きく違い不合理とは言えない ⑤年次有給休暇の半日単位の取得・⑦特別休暇は、正社員と職務内容等に無関係でその相違は不合理 ⑥年次有給休暇日数は、その付与日数の違いは不合理ではない ⑧福利厚生の違いは、Q基金の会員になれないことは、同基金は被告とは別組織で被告が直接の権限がなく不法行為責任は無い 以上:1,768文字
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