令和 6年 3月27日(水):初稿 |
○「共有物分割訴訟で全面的価格賠償による分割を認めた地裁判決紹介2」の続きで、原告と被告が持分2分の1の割合で共有する建物及び借地権について、原告が、被告に対し、共有物分割を求め、全面的価格賠償による分割を認めた令和4年11月4日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。 ○裁判所による共有建物・借地権の鑑定評価が行われ、その鑑定価格から抵当債務を差し引いた金額の2分の1相当額1億2844万5029円を原告が価格賠償金として被告に支払い原告の単独所有とするとの結論です。原告の価格賠償金支払能力は、銀行が融資をする容易があることを表明する文書を発行していたことで認められた大変シンプルな事案です。 ********************************************* 主 文 1 別紙物件目録記載1の借地権及び同目録記載2の建物を次のとおり分割する。 (1)別紙物件目録記載1の借地権及び同目録記載2の建物をいずれも原告の所有とする。 (2)原告は、被告に対し、被告から別紙物件目録記載2の建物の持分2分の1について共有物分割を原因とする持分移転登記手続を受けるのと引き換えに、1億2844万5029円を支払え。 (3)被告は、原告に対し、原告から1億2844万5029円の支払を受けるのと引換えに、別紙物件目録記載2の建物の持分2分の1について、共有物分割を原因とする持分移転登記手続をせよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、被告に対し、原告と被告が持分2分の1の割合で共有する別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)及び同目録記載1の借地権(以下「本件借地権」という。)の共有物分割を求める事案である。 2 前提事実 (1)原告と被告は、本件建物及び本件借地権をいずれも持分2分の1の割合で共有している。 (2)本件建物及び本件借地権の鑑定評価額は、合計3億9400万円(本件借地権2億7541万円、本件建物1億1859万円)(以下「本件鑑定評価額」という。)である(鑑定結果)。 (3)本件建物には、原告及び被告を債務者とする株式会社東日本銀行(以下「東日本銀行」という。)の根抵当権が設定されており、本件口頭弁論終結時における東日本銀行の原告及び被告に対する融資残高は、1億3710万9942円(以下「本件融資残高」という。)である(甲1の2、甲9)。 (4)東日本銀行は、原告に対して1億2200万円を限度として融資を行う用意があり、同融資を実行した場合には、被告に対する連帯債務契約を解除し、被告に対する債務を消滅させるとともに、本件建物の被告持分に対する根抵当権設定契約を解除する意向である(甲11)。 第3 当裁判所の判断 1 原告及び被告は、いずれも、本件建物及び本件借地権を原告の単独所有とし、原告から被告に対し、本件鑑定評価額から本件融資残高を控除した額の2分の1に当たる代償金を支払う方法、すなわち全面的価格賠償の方法により共有物を分割することを希望している。 2 そこで検討すると、本件建物及び本件借地権の現物分割は困難であること、本件建物及び本件借地権の価格は鑑定により適正に評価されており、本件鑑定評価額から本件融資残高を控除した額の2分の1に当たる額は、1億2844万5029円((3億9400万円-1億3710万9942円)÷2)となるところ、前提事実(4)及び証拠(甲8)によれば、原告にはその支払能力が認められること等からすると、本件建物及び本件借地権について、原告の単独所有とし、原告から被告に対して1億2844万5029円を支払う全面的価格賠償の方法により分割するのが相当である。 第4 結論 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第37部 裁判官 中井彩子 (別紙)物件目録 1 借地権 所在 大田区α×丁目 地番 ××番× 地目 宅地 地積 160.09平方メートル 所有者・賃貸人 C 2 建物 所在 大田区α×丁目 ××番地× 家屋番号 ××番×の× 種類 事務所 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根9階建 床面積 1階 112.94平方メートル 2階 117.84平方メートル 3階 117.84平方メートル 4階 117.84平方メートル 5階 117.84平方メートル 6階 117.84平方メートル 7階 117.84平方メートル 8階 117.84平方メートル 9階 104.13平方メートル 以上 以上:1,883文字
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