仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 >    

フランチャイズ契約競業禁止条項信義則違反で無効認定地裁判決紹介

法律その他無料相談ご希望の方は、「法律その他相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 4年11月 3日(木):初稿
○久しぶりにフランチャイズに関する相談を受け、関係判例を探しています。

○被告との間でフランチャイズ契約を締結してショッピングモール内でフランチャイズの時計店を営んでいた原告が、被告の解約申入れにより同契約が終了した後、同モールにおいて直営の時計の販売及び修理業を営むにつき、被告から同契約上の競業禁止条項に基づく営業禁止の通知を受けたため、同条項は被告の解約申入れによる契約終了の場合には適用されない、又は被告の解約申入れの経緯等からすれば、同条項を本件に適用することは信義則に違反すると主張して、被告との間で、同契約の終了日の翌日から、同日から2年を経過する日である日までの間、同モールにおいて時計の販売及び修理業を営んではならないとの義務が存在しないことの確認を求めました。

○これについて、競業禁止条項は、被告の解約申入れの場合にも適用されるものの、本件条項に基づき、イオンモール倉敷における原告の時計店の営業が2年間も禁止されれば,原告は帰責性もないのに耐え難い経済的損失を被ることになるといえるとして、被告がイオンモール倉敷における原告時計店の営業の禁止を求めることは、信義則に反し許されないとして請求を認容した平成27年10月14日東京地裁判決(判時2301号96頁、判タ1425号328頁)判決主文・理由文を紹介します。

********************************************

主   文
1 原告と被告との間において,原告が,被告に対し,平成27年1月12日から平成29年1月11日までの間,岡山県倉敷市α×所在のイオンモール倉敷において時計の販売及び修理業を営んではならないとの義務が存在しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は,被告との間でフランチャイズ契約を締結してショッピングモール内でフランチャイズの時計店を営んでいた原告が,被告の解約申入れにより同契約が終了した後,同モールにおいて直営の時計の販売及び修理業を営むにつき,被告から同契約上の競業禁止条項に基づく営業禁止の通知を受けたため,
〔1〕同条項は被告の解約申入れによる契約終了の場合には適用されない,
〔2〕同条項は「優越的地位の濫用」によるものであり公序良俗に反し無効である,又は
〔3〕被告の解約申入れの経緯等からすれば,同条項を本件に適用することは信義則に違反する
と主張して,被告との間で,同契約の終了日の翌日である平成27年1月12日から,同日から2年を経過する日である平成29年1月11日までの間,同モールにおいて時計の販売及び修理業を営んではならないとの義務が存在しないことの確認を求めた事案である。

2 前提事実

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点〔1〕(本件条項は被告の解約申入れの場合に適用されるか)について

 本件条項は,平成22年10月25日に原被告間で締結された覚書(甲6)の5条を引き継ぐものである。同条項は,「(本件)契約書23条に以下の項目を追記する。」という柱書の下に本件条項と同一の規定(1項)を置いていることからすれば,本件契約書の23条を補完するものであり,これを引き継いだ本件条項も,本件契約書の23条を補完するものであると解される。本件覚書の5条の見出しは,本件契約書の23条及び平成22年10月25日に原被告間で締結された覚書の5条の見出しとほぼ同一であって,このこともこのような解釈をすべきことの裏付けといえる。

 ところで,本件契約書の24条3項は,被告による契約の終結の場合でも,原告は本件契約書の23条2項ないし6項に定める義務と同様の義務を負うと定めている。そうすると,被告の解約申入れによる契約の終結の場合でも,本件契約書の23条2項ないし6項の定める義務の内容を補完する本件覚書の5条1項ないし3項も,本件契約書の24条3項により準用されると解釈することが,本件契約書及び本件覚書の文理に合致するものといえる。
 したがって,本件条項は,被告の解約申入れの場合にも適用されると解するのが相当である。

2 争点〔3〕(本件条項を本件解約に適用することが信義則に違反するか)について
 本件条項に基づく競業避止義務の主たる内容は,原告が,本件契約終了時から2年間,イオンモール倉敷において時計店を営業することができないというものである。
 フランチャイズ契約が終了した場合にフランチャイジーに対して契約上課される競業避止義務は,フランチャイザーの運営するフランチャイズシステムの顧客及び商圏を保全するとともに,ノウハウ等の営業秘密を保持するという目的において,合理性を有するものである。他方,競業避止義務は,フランチャイジーの営業の自由を直接的に制約するものであるから,その制約の程度や契約終了の経緯等に照らして,これをフランチャイジーに対して主張することが信義則に違反する場合がある

 本件は,原告がイオンモール岡山にエイコー堂独自のノウハウによる自営店として時計店を出店しようとしたのに対し,被告が,その出店は本件契約書の3条2項にいう「店舗の新設」にあたるから被告の「文書による許可」がない限り許されない(したがって被告にロイヤリティーを支払わなければならない)と主張したことに端を発する(甲8,10,11,20)。そこで,本件契約書の3条2項をみるに,同項の「店舗」という文言は,同条1項の「『TCHシステム』による店舗(以下「店舗」と略称する。)」という規定を受けたものと解されるから,「TCHシステム」を用いた時計店でなければ同条2項の「店舗の新設」には該当しないものと解釈すべきである。

そして,「TCHシステム」は,本件契約書の1条1項にその定義があるところ,被告の商標等(同項5号,4号),被告プライベートブランドの時計(同項2号,甲18の理由〔1〕)及び被告物流センターを経由した仕入れ(同項3号,甲18の理由〔2〕)についてはともかくとして,それら以外の具体的な内容及び有用性を被告は明確に主張立証しておらず,結局のところ,保護に値する被告の「ノウハウ」が含まれていると認めることはできない。

さらに,原告は,平成11年に被告のフランチャイズ店として本件店舗を開店するより前の昭和44年(なお,法人化されたのは昭和46年)から地元で時計店を営んでおり,本件契約(フランチャイズ契約)を締結した目的は主としてイオンモール倉敷に出店するための信用を得ることにあったとうかがわれること(甲7),平成22年7月には原告のほうから本件契約を解消しようとして,被告から本件契約による制約を緩和することを条件に解約を慰留されたこと(甲17,18)も併せ考慮すると,原告が「TCHシステム」を用いた時計店をイオンモール岡山に出店しようとしたと認めることはできない。

したがって,イオンモール岡山への出店が本件契約書の3条2項の「店舗の新設」に該当するとはいえず,原告は,被告の文書による許可を得る必要があったとは認められない。よって,本件解約につき原告に解除事由となるべき事情が存在したとはいえない。

 このように,本件解約につき原告に帰責性があったとはいえないにもかかわらず,被告による本件解約の申入れにより本件契約が終了したのであるから,そのような本件契約終了の経緯を踏まえると,その後の被告のイオンモール倉敷における商圏を保全すべき正当性は乏しいといえる。他方,本件店舗は,平成19年1月期(36期)から平成26年8月期(44期)において,原告の総売上高の25%程度(甲15),時計部門だけでみれば売上高の50%程度(甲16)を占めていた。そうすると,イオンモール倉敷における原告の時計店の営業が2年間も禁止されれば,原告は帰責性もないのに耐え難い経済的損失を被ることになるといえる。

 以上に述べた事情からすれば,被告が本件条項に基づき原告に対してイオンモール倉敷における時計店の営業の禁止を求めることは,信義則に違反し許されないものというべきである
。したがって,その余の点(争点〔2〕)を検討するまでもなく,原告と被告との間において,原告は,被告に対し,平成27年1月12日から平成29年1月11日までの間,イオンモール倉敷において時計店を営んではならないとの義務を負わない。

第4 結論
 よって,原告の請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第33部 裁判長裁判官 原克也 裁判官 外山勝浩 裁判官 藤田直規

別紙「THE CLOCK HOUSE チェーン店舗開設契約書(抜粋)」
別紙〔1〕什器・備品一覧表
別紙〔2〕TCH什器&ツール一覧表
別紙〔3〕TCHラッピングツール一覧表
別紙「TCHシステムの内容」

以上:3,647文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
法律その他無料相談ご希望の方は、「法律その他相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > フランチャイズ契約競業禁止条項信義則違反で無効認定地裁判決紹介