令和 4年 1月21日(金):初稿 |
○相続で取得したマンションを相続後速やかに売却して、その売却金から仲介手数料・譲渡所得税等売却に伴い生じる経費を差し引いた残額を相続人で等分に分けるとの合意をした場合、その譲渡所得税はどのようになるでしょうかとの質問を受けました。 弁護士は税務の専門家ではありませんが、譲渡所得税に関する質問は、頻繁に受けますので、最低限の知識は必要です。最も参考になるのは国税庁HPで、その中に税に関する殆どの情報が判りやすく解説されています。相続によって取得した不動産を売却処分する場合については、「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」に解説されています。以下、その備忘録です。 ○相続や贈与によって取得した資産の取得費 ・譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算 ・取得費は、土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額 ・建物の場合は、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額 ・取得費不明の場合、取得費を売却金額の5%相当額とすることができる ○相続や贈与によって取得した資産の取得の時期 ・相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれる ・被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定する ○取得時の契約書・領収書等なく実際の取得費を計算する方法 取得費が全く不明の場合は、売却金額の5%相当額として計算せざるを得ない-概算取得費と呼ばれ売却金額の95%相当額が課税対象となり結構な課税額となる そこで可能な限り実際の取得費を計算して、課税対象額を小さくした方が良い ○実際取得費による課税額計算方法(実額法) ・「譲渡所得=譲渡(売却)収入金額−{(取得費−減価償却費)+譲渡費用}」 ・契約書・領収書等がなくても、実際の購入価額を証明できるものがある場合は、実額によって計算することができる ・証明書類をできるだけ用意して、購入時の状況説明と契約書類等の紛失理由を書いた「申述書」を確定申告書に添付し、税務署にその内容に信ぴょう性があると認められるとその申告(実額法での計算)は認められる ・証明書類の例示 ①預金通帳の出金・住宅ローンの支払状況 ②住宅ローンを借りた金銭消費貸借契約書のコピー、ローンの償還表 ③不動産全部事項証明書の乙欄で抵当権の設定金額の状況 ④購入当時の不動産業者の不動産価格が記載されているパンフレット ⑤土地については日本不動産研究所が公表している「市街地価格指数」 ⑥建物については「建物の標準的な建築価額表」 ○マンションの場合、不動産登録事項全部証明書と以前の閉鎖登記簿謄本によって、マンション新築時の売主まで調査することが可能であり、最初の売主に売出価格を照会することもでき、また、甲区欄でその後の売買の経緯が、乙区欄で売買に伴う抵当権設定状況も判明します。それによって被相続人が購入した時期、抵当権設定状況も判り、取得費が推定できます。 以上:1,294文字
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