令和 2年 9月19日(土):初稿 |
○「一般担保財産減少行為に不当性がないとして詐害行為否定最高裁判決紹介」に関連して続けます。 ○訴外A及び訴外Bに対し、確定判決に基づく売掛金債権を有する原告が、訴外人らが被告と本件各動産につき譲渡担保契約を締結した当時、被告及び訴外人らは、原告が訴外人らに対し売掛金債権を有しており、訴外人らが無資力であって、本件各動産が唯一の財産であることを知っていたと主張して、詐害行為取消権に基づき、譲渡担保契約の取消を求めました。 ○被告は契約当時原告を害することを知らなかった等と主張しましたが、第一審昭和40年2月12日広島地裁判決(最高裁判所民事判例集21巻9号2329頁)は、原告の請求を認容して、被告が行った譲渡担保契約を全て取り消しました。 ○この判決は、理由文が省略されていますが、控訴されて広島高裁によって覆されており、一審の理由文等含めて別コンテンツで紹介します。 ******************************************** 主 文 訴外Aが被告との間において、別紙第一目録記載の物件についてなした昭和36年6月22日広島法務局所属公証人藤田尹作成新第22、198号金銭債務弁済譲渡担保使用貸借契約公正証書による所有権譲渡行為。 訴外Bが被告との間において、別紙第二目録記載の物件についてなした右公正証書による所有権譲渡行為。 訴外Bが被告との間において、別紙第三目録記載の物件についてなした昭和37年7月13日追加譲渡担保契約による所有権譲渡行為。 はいずれもこれを取消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事 実 原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め,その請求の原因として次のとおり述べた。 「一、原告は訴外B、同Aに対し昭和33年11月24日広島地方裁判所福山支部において、言渡された同庁昭和33年(ワ)第160号売掛代金残額請求事件の確定判決に基き売掛金62万5675円の債権を有している。 二、被告は別紙第一、第二目録記載の物件について請求の趣旨第1、2項記載の公正証書により右第一目録記載の物件は訴外Aから、右第二目録記載の物件は訴外Bから、いずれも右Aに対する金10万円の貸金債権のための譲渡担保契約によりこれが所有権の譲渡を受け、別紙第三目録記載の物件は請求の趣旨第三項記載の追加譲渡担保契約により右Bからこれが所有権の譲渡を受けている。 三、ところで、ラジオ商を営んでいた右Bは、昭和33年多額の負債を残して倒産し、被告はその負債の処理に当つたもので、本件譲渡担保契約当時原告が右B及びその妻Aに対し第一項記載の売掛代金債権を有することは熟知し、また、右宇治田夫妻もAが昭和36年5月10日被告から借受けた金10万円の債務につき、その弁済のために前記記載の譲渡担保契約を締結した当時右B・A夫妻は無資力であつて、別紙第一ないし第三目録記載の動産がその唯一の財産であること及び原告が同人等に対する前記確定判決による債権を有していることを知つていたのであるから、B・A夫妻は右譲渡担保契約によつて債権者である原告を害することを知りながら同契約を締結したものである。 四、よつて原告は被告に対し、詐害行為取消権に基き前記譲渡担保契約の取消を求めるため本訴に及んだ次第である。」 なお、被告の抗弁事実は否認すると述べた。 証拠(省略) 被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として「請求原因第1、2項の事実は認める。同第三項につき訴外B・A夫妻が本件譲渡担保契約締結の際原告を害することを知つていたとの点は否認し、その余の事実は認める。なお、追加譲渡担保契約は昭和36年5月10日Aに貸与した金10万円と後に貸与した金6万円に対する担保の設定である。」と述べ、抗弁として「被告は右B・A夫妻と本件譲渡担保契約締結当時原告を害する意思はなかつたものである。即ち、被告は右B・A夫妻が生活費に困窮していたため、同人等の要請により金10万円を貸与したもので、その際には担保設定の話はなかつたが、その後に至り同人等から担保を差入れたいとの申入があつたので、同年6月22日本件公正証書による譲渡担保契約を締結したものであり、追加譲渡担保契約は右貸金10万円とその後に貸与した金6万円に対する担保の設定であつて、いずれも債権者として当然の措置を採つたもので、原告を害する意思はなかつたものである。」と述べた。 証拠(省略) (昭和40年2月12日 広島地方裁判所福山支部) 別紙 第一目録 1、タンス桐 12、整理タンス 13、着物 104、羽織 55、着物ウール 46、茶羽織ウール 17、女帯 五 第二目録 1、テレビ受像機シヤープ 12、水屋 1 第三目録 1、扇風機フジ 12、柱時計 13、電気冷蔵庫NEC 14、高机 15、椅子 4 以上:1,975文字
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