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解散による清算結了登記済みの株式会社の権利関係-関係判例紹介

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平成29年 3月 6日(月):初稿
○「解散による清算結了登記済みの株式会社の権利関係」の続きです。
このページで紹介している判例全文を以下の通り紹介します。


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大正5年3月17日大審院判決(民録22輯364頁、民抄録65巻14169頁、原文は旧漢字でカタカナ表記)
株式会社の清算結了したる旨の登記ある場合と雖も実際会社の財産に属する債権残存するときは清算結了の実なきを以て会社は未だ絶対に消滅したるものと謂うを得ず

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昭和35年6月27日東京高裁決定(下級民集11巻6号1374頁)
主  文

本件抗告を棄却する。

理  由
 本件抗告理由の要旨は、抗告人会社は昭和35年4月7日特別清算開始決定を受けたが、これより先、昭和35年2月22日清算結了報告の株主総会を開き、その承認決議を得、同日を以て清算を結了し、同月25日清算結了の登記を了した。よつて原決定に服して特別清算をすることはできないので、これが取消を求めるため本抗告に及ぶ、というにある。

 しかし、株式会社が清算事務を結了したとして株主総会を開き、計算承認の決議を得て清算結了の登記をしても、現に清算人のなすべき事務が残存している限り、実質的には清算は結了せず、会社はなおその処理のために存続するものというべく、また商法第431条によれば、会社に債務超過の疑あるときは、清算人は裁判所に対して特別清算開始の申立をなす義務を負うものであるから、普通清算の方法による清算事務を遂行することによつて、右申立の義務を免れることができないのは勿論である。

 然るところ、一件記録によれば抗告人会社が清算事務結了の報告総会を開いた当時、債務超過の疑があつて、清算人は裁判所に対し特別清算開始の申立をする義務を有していたものであること、及び清算人がその申立をしないため株主より申立がなされ、右特別清算事件は原裁判所に係属中であつたことが明かである。

 従つて清算人より特別清算開始の申立がなされなかつた以上抗告人会社としては前記の申立事件につき裁判があつてこれが確定するに至るまでは、清算結了のための株主総会を開くことはできず、仮令、その総会を経て清算結了の登記を了したとしても、会社はこれにより当然消滅するに至るものではないから、抗告人が清算結了の登記を経たことを理由に、特別清算の開始並にこれに伴う処分を命じた原決定に従い得ないとする抗告理由は、到底採用することができない。
 よつて抗告を棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。
 (裁判官 二宮節二郎 奥野利一 渡辺一雄)

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昭和36年12月14日最高裁判決(民集15巻11号2813頁)
主  文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理  由
上告代理人○○○○の上告理由第一点、第二点について。

 所論は訴訟法違反をいうのである。そして、訴の利益の有無が、裁判所の職権調査事項であることは所論のとおりであるが、原判決は、弁論に現われた事実に基づき、権利保護の利益を欠くことの上告人の主張を排斥していることは判文上明らかであり、原審の右判断は是認できる。所論は、ひつきよう原判決の認定に副わない事実関係を前提として原判決の違法をいうものであり、採るを得ない。

同第三点について。
 清算結了の登記が終つていても、株式譲渡の可能性のある株式につき名義書替未了であれば、未だ結了を要する現務が存在するものというべく、現務終了したとはいえない。名義書替に関する上告理由第七点所論定款13条の規定は訓示規定と解するを相当とし、たといこれに反したからといつて、株主たることを否定されるわけのものではなく、また現に株主たる者の名義書替請求が許されないわけのものではない。そして本件については、被上告人により適法に株式名義書替の請求がされたものであるとの原判示は、所論第七点に対する説示に述べるとおり正当である。しからば、原判決が当事者能力なき者に対する判決であるとの所論は、原判示に副わない独自の主張であつて、採るを得ない。

同第四点について。
 所論の企業再建整備法29条の2、1項は、特別経理会社につき決定整備計画の定めにより、その「株主の権利は、変更せられる」こととなる旨を規定するに止まつている。原判決の確定したところによれば、上告会社の株主の権利は右の整備計画の定めにより変更されたに止まり、消滅したものではないというのであり、右判示は正当である。しからば、本件において、株主の地位はこれを移転し得ないわけのものではなく、このことは、共益権が株主の地位から原始的に発生するものであることによつても何ら影響はない。これと同趣旨に出でた原判決は正当であり、所論は採るを得ない。

同第五点について。
 上告会社の定款12条が「本会社の株式は、取締役会の承諾なくして、之を譲渡することを得ず」と規定されていることは当事者間に争のないところである。そしてこの定款の規定は、昭和25年法律第167号による改正前の商法204条一項但書に基づくものであるが、右改正前の商法の規定は、株式の譲渡は原則として自由であるが、会社がその営業の継続中において、株式の譲受人たる新株主が介入することにより、株主全体の構成に変動を生じ、これにより従来の株主構成の下になされた会社の経営に予想しなかつた影響を生ずる惧れなきことを保し難く、このような惧れを防止し会社経営を安定せしめることを必要と認めた場合には、例外として、定款をもつて、会社の営業の存続を前提として、株式の自由譲渡を制限しうることを認めた規定と解するを相当とし、従つて、前記定款12条の規定の効力についても、このような立法趣旨の下に判断されなければならないのである。ところで、清算中の会社は、清算の目的の範囲内においてのみ存続し、営業の存続を前提とする法の規定は、清算会社には適用なきに至るものであるから、会社が一度解散して清算手続に入つた以上は、前記改正前の商法204条一項但書に基づく本件定款12条の規定による株式譲渡制限は、その必要なきこととなり、株式譲渡自由の原則に戻るべきものというべく、右定款の規定の効力は、清算手続中は停止されると解するを相当とする。原判決は、右と同趣旨に出でたものであつて正当であり、これと反する所論は採るを得ない。

同第六点について。
 所論は民法466条違反をいうが、株式が性質上譲渡を許さないものでないことは明らかであり、本件株式は企業再建整備法29条の2、1項によつても、その移転性を失つたものでないことは、所論第四点に対する説示において述べたとおりである。そして、前記改正前の商法204条による株式譲渡制限の規定が、所論第五点に対する説示において述べたとおり限られた目的の下に設けられたものである以上、本件につき民法466条の類推適用は許されないものであつて、これと同趣旨に出でた原判示は正当であり、所論は採るを得ない。

同第七点について。
 原判決の確定したところによれば、被上告人は昭和26年4月中上告会社に対し、白紙委任状を添付して本件株券を呈示し、被上告人名義に、その名義書替手続を請求した事実が認められる。そして、原判決は、本件においては、誰に対する名義書替を、誰が求めているかが明らかな限り、委任状の受任者欄の補充がなされていないにしても、会社としては、誰がその受任者であり、右受任者欄に補充されるべき者であるかは明らかであつた筈であり、委任年月日についても、昭和26年9月22日の記載は後に記入されたものであつて、委任年月日欄についても会社としては明らかであつた筈であるから、本件株式につき適法な名義書替請求がなされなかつたものとは到底解し得ないと判示しており、右判示はこれを肯認できる。しからば、所論は、本件につき適法な名義書替請求がされなかつたとの、原判示に副わない主張を前提とし、原判決を攻撃するものであつて、前提において失当であり、原判決には所論の違法は認められない。
 よつて、民訴396条、384条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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昭和38年5月18日東京地裁(判タ151号82頁、判時338号40頁)
主  文

原告の破産者有限会社A合金鋳造所に対する、東京地方裁判所昭和36年(フ)第232号破産事件における破産債権が、金109万9759円であることを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。

事実
 ≪省略≫

理  由

一、職権をもつて判断するに、本件訴状添付の原告会社登記簿謄本の記載によれば原告会社は、昭和34年10月5日株主総会の決議により解散して清算手続に入り、昭和35年5月25日清算結了し、同年6月6日この旨の登記がなされている事実を認めることができ、この事実によれば、原告が本訴につき当事者能力を有するかどうか疑いがないでもないが、およそ法人が清算結了登記をなしたときは、形式的にはそのときに人格も消滅し訴訟上の当事者能力を失うものであるが、清算結了登記当時債権が残存しているときは、実質的には右残存債権について清算手続を終了せず、したがつて右残存債権行使の範囲内ではなお当事者能力を有するものと解するのが相当であり、かような訴については、裁判所はその実体関係を審理し、債権の存在が認め得るときは実体上の判決を、これが認められないときは訴訟判決をなすべきものと考えるので、進んで実体関係について判断する。

二、成立に争いない第1ないし第6号証≪中略≫によれば、原告主張の請求原因1、2の事実はすべてこれを認めることができる。

三、有限会社A合金鋳造所が原告主張のように昭和36年12月26日破産宣告を受け、被告がその破産管財人に選任されたこと、原告が右損害金を含めて右破産事件の破産債権届出をなしたが、被告がこれを否認したことは当事者間に争いない。

四、被告は、原告からの融通手形の見返りとして破産会社はこれに対応する約束手形を原告に交付したから、右見返り手形を破産債権とすべきである旨主張し、右見返り手形の交付を受けたことは原告の認めるところであるが、原告代表者尋問の結果によれば、原告は右見返り手形は、融通手形を破産会社に買戻したときにいずれも同会社に返戻する約束で受領していたもので、これを流通の用に供したことはなく、一部はこれを同会社に返還し、一部は紛失した事実が認められるので、原告が右手形金債権を行使せず、自らの出捐によつて買戻した融通手形金相当の金員の損害賠償を求めることも何等不当ではない。

五、してみれば原告の破産会社に対する破産債権は、元金92万9920円及びこれに対する各手形金支払の日から破産宣告の前日までの遅延損害金が16万9839円であることは計数上明らかなので、その合計金109万9759円であり、これが確定を求める本訴請求は理由があるからすべて認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第89条を適用し、主文のように判決する。
 (裁判官 滝田薫)

以上:4,687文字

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