平成29年 2月28日(火):初稿 |
○フランチャイズ契約での競業避止義務等についての質問を受け、関連判例を探しています。 原告が,本件各商標権者から本件各商標(「ゴーゴーカレー」)の独占的使用権の許諾を受け,被告らとの間でライセンス使用契約・連帯保証契約を締結し,本件使用契約締結者の被告が本件各商標を使用してカレー店営業をしていたところ,ロイヤリティ不払による本件契約解除後も本件各商標を継続使用したことから,契約上の競業避止・商標等取扱各義務に違反し,商標権侵害・不正競争に当たるとして,被告らに対し,契約上の各義務違反に基づく違約金,及び商標権侵害等に基づく損害賠償約2000万円の支払を求めました。 ○これに対し、原告による本件契約解除は有効であり,本件契約上の各義務違反,本件各商標権の侵害・不正競争の成立も認められる等とし,約定による違約金支払条項(各義務違反に基づく)に基づく各違約金合計額約1000万円の支払を命じた平成27年12月22日東京地裁判決(LLI/DB判例秘書、ウエストロー・ジャパン)全文を3回に分けて紹介します。 ○「渡邊大司先生の思い出-追悼文の渡邊大司講話から」記載渡邊大司先生の「できる限り判決を集めよ。」の教えを忠実に守り、判決を集めていきます。 *************************************** 主 文 1 被告Aは,原告に対し,被告B及び被告Cと連帯して,1037万5584円及びこれに対する平成26年11月5日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,原告に対し,1037万5584円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を(1037万5584円及びこれに対する同月3日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員の限度で被告Cと連帯して,また,1037万5584円及びこれに対する同月5日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員の限度で被告Aと連帯して)支払え。 3 被告Cは,原告に対し,1037万5584円及びこれに対する平成26年11月3日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を(全額について被告Bと連帯して,また,1037万5584円及びこれに対する同月5日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員の限度で被告Aと連帯して)支払え。 4 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 5 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して2008万6024円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Aについて平成26年11月5日,被告Bについて同月1日,被告Cについて同月3日)から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 原告は,別紙商標目録1ないし4記載の各登録商標(以下,これらを併せて「本件各商標」といい,本件各商標に係る各商標権を「本件各商標権」という。)の商標権者から本件各商標の独占的通常使用権の許諾を受けて使用しているところ,被告Aとの間において平成23年12月27日付けライセンス契約(以下「本件契約」という。)を,また,被告B及び同Cとの間において同日付け連帯保証契約(以下「本件各連帯保証契約」という。)を,それぞれ締結した。被告Aは,本件契約に基づき,ゴーゴーカレー大宮東口スタジアム(以下「本件店舗」という。)において,本件各商標を使用してカレー店の営業を行っていた。 本件は,原告が,被告Aにおいて本件契約が定めるロイヤリティの支払を複数回にわたり懈怠したため,被告Aの債務不履行を理由に本件契約を解除したにもかかわらず,被告Aにおいて本件契約の解除後も本件各商標の使用及び本件店舗におけるカレー店の営業を継続したことが,本件契約の定める競業避止義務及び商標等取扱義務に違反し,また,商標権侵害(不法行為)及び不正競争(不正競争防止法2条1条1号)に当たると主張して,被告らに対し,次のとおりの連帯支払を求める事案である。 (1) 被告Aに対し,①本件契約が定める競業避止義務に違反したことに基づく違約金として518万7792円,②本件契約が定める本件各商標等の取扱義務に違反したことに基づく違約金として518万7792円,③商標権侵害の不法行為(民法709条,商標法38条2項)ないしは不正競争(不正競争防止法4条,2条1項1号)に基づく損害賠償金として971万0440円,以上の合計額である2008万6024円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで約定利率である年1割2分5厘の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 被告B及び同Cに対し,本件各連帯保証契約に基づき,上記(1)と同額の各支払を求める。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 当事者 原告は,飲食店業,カレーの製造・加工販売,飲食店のフランチャイズ本部の運営等を目的とする株式会社(平成15年12月設立,資本金5500万円)である。原告は,本件各商標権を有している有限会社みやぢ(代表者は原告代表者と同一である。)から本件各商標の独占的通常使用権の許諾を受けている。本件各商標は,原告の営業表示として消費者の間で広く認識されている。 被告Aは,被告のフランチャイジーとして,平成24年2月から本件店舗で本件各商標を使用してカレー店の営業をしていた者であり,被告B及び被告Cは,いずれも,被告Aが原告に対して負担する債務につき,原告に対し,連帯保証した者である。(甲1,弁論の全趣旨) (2) 本件契約等の締結及び営業の開始 ア 原告は,平成23年12月27日,被告Aとの間において本件契約を締結し,これによって,被告Aが本件店舗(住所は省略)において,原告のライセンシーとして,カレー店の営業を行うことを許諾した。なお,本件契約には,次の内容の条項が定められている。 (ア) 原告は,被告Aに対し,被告Aが原告の指定する商品を販売するために,本件店舗において,原告の商標・サービスマーク・その他の標章を使用することができる。(3条1項) (イ) 被告Aは,原告に対し,本件店舗の総売上に5.5%を乗じた金額に,消費税を加算した金額をロイヤリティとして支払う。ロイヤリティの算定期間は,暦月の1日から末日までの総売上を基礎に算出し,被告Aは,翌月20日までに原告指定の口座に振り込む方法により支払う。ただし,金融機関が休日の場合は,翌営業日までに入金するものとする。(5条1項,2項,別紙1) (ウ) 被告Aは,原告に対し,業務連絡,通達及び管理業務(売上管理,発注仕入管理,勤怠管理)に用いるシステムの使用料として,月額1万5750円(消費税込み)を支払う。システムの使用料は暦月の1日から末日までの分を,翌月20日までに原告指定の口座に振り込む方法により支払う。(6条) (エ) 原告は,被告Aに対し,原告指定の商品を継続的に販売し,被告Aはこれを購入する。被告Aは,暦月の1日から末日までに原告が納品した商品の代金を,翌月20日までに原告指定の口座に振り込む方法により支払う。(7条1項,2項) (オ) 被告Aは,本件契約終了後に原告の商標等を使用してはならない。(19条4項) (カ) 「乙(判決注:被告A)が本条(判決注:19条)の定めに反した場合は,乙は,通常のロイヤリティとは別に少なくても違約金として違反が発生した直近月のロイヤリティの24ヶ月分を甲(判決注:原告)に対して支払うものとする。当該違約金は,甲から乙への損害賠償及び本条以外に定められた違約金の請求を妨げるものではない。」(19条5項。以下「本件違約金条項1」という。) (キ) 「乙(判決注:被告A)(中略)は,本契約中並びに本契約終了後5年間は,甲(判決注:原告)の書面による承諾がない限り,甲と競合する事業に,経営,出資,従事等により関与してはならない。なお,乙が本条の定めに反した場合は,乙は,違約金として少なくてもロイヤリティの24ヶ月相当額を甲に対して支払うものとする。当該違約金は,これを上回る甲から乙への損害賠償及び本条以外に定められた違約金の請求を妨げるものではない。」(20条。以下,上記第2文及び第3文の定めを「本件違約金条項2」といい,本件違約金条項1と併せて「本件各違約金条項」という。) (ク) 被告Aが次の各号の一つに該当するときには,原告は催告を要せず直ちに本件契約を解除することができる。(27条1項) (8)号 本件契約に基づく金員の支払を怠ったときその他本件契約及びこれに付随する契約の各条項に違反したとき (ケ) 被告Aは,本件契約及びこれに付随する契約により負担する債務の支払を期日までに履行しなかったときには,その遅延分につき年利12.5%の割合の遅延損害金を原告に支払うものとする。(30条) イ 原告は,平成23年12月27日,被告B及び同Cとの間で,本件契約から生ずる被告Aの一切の債務について,被告B及び同Cがそれぞれ連帯して保証する旨の本件各連帯保証契約を締結した。 ウ 被告Aは,本件契約に基づき,平成24年2月15日から本件店舗において「ゴーゴーカレー」の店舗として本件各商標を使用してカレー店の営業を開始し,原告は,本件契約に基づき,被告Aに対し,システムの提供,指定商品の販売及び販促活動等を行った。(甲4) (4) 未払ロイヤリティ等 被告Aは,本件契約に基づく平成26年1月分以降のロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等につき,次のとおり,その全部又は一部を支払っていない。 ア 平成26年1月分 163万0764円 イ 同年2月分 152万1892円 ウ 同年3月分 126万8716円 エ 被告Aは,同年3月31日,原告に対し,同年1月分及び2月分のロイヤリティ等の一部である33万0764円を支払い,同年4月21日,原告に対し,同年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の一部である50万円を支払った。 (5) 本件契約の解除 原告は,平成26年4月23日,被告らに対して,同年1月分から3月分までのロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等合計409万0608円の不払を理由に本件契約を解除するとともに(本件契約27条1項8号による解除。以下「本件解除」という。),同額の支払を求める書面を送付し,同書面は,同月24日,被告A及び同Bに到達した。 (6) 本件解除後における営業等の継続等 被告Aは,本件契約の解除後も,平成26年8月26日まで,本件店舗の内外に本件各商標と同一の標章を多数表示し,本件店舗において「ゴーゴーカレー」の店舗としてカレー店の営業を継続した。 原告は,同年7月17日,東京地方裁判所に対し,商標法及び不正競争防止法に基づき,被告Aによる本件各商標と同一の標章の使用差止等を求める仮処分を申し立て,同裁判所は,同年8月14日,被告に対し,カレー店を営むに当たって本件各商標と同一の標章を付した店舗の看板等の使用を差し止めることなどを内容とする仮処分決定をした。原告は,さいたま地方裁判所執行官に対し,同仮処分決定に基づく保全執行を申し立て,同月27日,同保全執行が実施された。 (甲15,16,20~22。枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ。) 3 争点 被告らは,①本件解除が無効であるから,被告Aによる本件各商標の使用等は本件契約に基づき原告から許諾されたものであるとして,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),商標権侵害及び不正競争の各成立を争うとともに,②原告の損害額及び③本件各違約金条項の法的性質をそれぞれ争い,さらに,④被告Aの原告に対する不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とする相殺を主張する。 したがって,本件の争点は次の(1)ないし(4)である。 (1) 本件解除の有効性(争点1) (2) 原告の損害額(争点2) (3) 本件各違約金条項の法的性質(争点3) (4) 相殺の成否(争点4) 以上:5,009文字
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