平成28年 7月23日(土):初稿 |
○「マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決説明」を続けます。 マンション分譲業者Yは、昭和57年5月頃、マンション敷地を購入し、敷地にA、B2棟のマンションを建築して、Xらに分譲しましたが、敷地の一部に問題の駐車場建物を建築してY名義で所有権保存登記をして、合計106区画のマンション購入者用駐車場として提供し、駐車場料金はYが取得しました。なお、Yは、駐車場建物利用のためにマンション敷地に1万分の90の共有持分権を残しました。残りはマンション購入者共有持分権となりました。 ○マンション分譲業者が、分譲後も駐車場を自己所有として残し、マンション購入者に賃貸することは良くありました。私の事務所のあるマンションでは、駐車場用地は分譲の対象とせず分譲業者名のままに残し、駐車場用地は完全に分譲業者所有としてマンション購入者に賃貸して賃貸収入は全て分譲業者が取得していました。 ○福岡高裁判決事案の問題は、駐車場用地部分もマンション敷地として分譲の対象として、購入者の共有持分権の対象として、分譲業者Yは1万分の90の共有持分権で、駐車場建物敷地を専有使用したことでした。そして屋上駐車場60区画は月額7000円、1階46区画は月額1万1000円でマンション購入者に賃貸し合計月額約93万円の収入を得ていました。 ○マンション購入者のXらは、自分たちが共有持分権を有するマンション敷地の一角に分譲業者Yが駐車場建物を建築し、その駐車場から月額93万円の賃料収入を得るのは不合理であり、またYは、マンションA・B棟いずれも全区画をXらマンション購入者に分譲したのでその敷地に共有持分権を持つことはあり得ないとして、この駐車場建物は不法占拠であるから撤去し、且つ、駐車場収入は全てXらマンション敷地共有持分権者に返せと、平成元年に福岡地裁小倉支部に訴えを提起しました。 ○平成元年提起福岡地裁小倉支部判決は、平成5年3月17日になされていますが、データが入手できず、その内容は不明です。しかし、分譲業者Yが控訴し、原判決が変更されていますので、おそらくYにとって福岡高裁判決より不利だったと思われます。この福岡高裁判決は上告受理申立がなされていますが、そのデータもなく、おそらく却下で福岡高裁判決内容が確定したと思われます。 ○マンション敷地内駐車場は、マンション購入者の共用部分で、マンション購入者に専用使用権を与えてその対価はマンションの管理費に充当するのが普通ですが、おそらく昭和50年代に分譲された多くのマンションは、分譲業者がマンション分譲後も収益を継続して得る手段として、マンション購入者向け駐車場を自己所有物として残し、その賃料を継続して得る例が相当あったと思われます。 ○これに異を唱えたのが福岡高裁判決事案のマンション購入者Xらですが、分譲業者Y所有駐車場建物を不法占拠と断定することは難しく、かといって、地上権設定契約が成立していたと認定するのも困難で、「控訴人はマンション敷地内に駐車場建物を建築所有することを明らかにし、それらの土地、建物の状況を前提として、そのような土地利用形態を伴うマンションの購入契約の申込みの誘引をしたこと、マンションの購入者もこれに応じて本件駐車場建物の敷地について共有持分権を取得しても控訴人の本件駐車場建物の存在によって利用が制限されることを知った上で申込みをし、これを承諾した控訴人との間にマンションの各専有部分の売買契約が締結されたこと、即ち、少なくとも、マンションの購入者らは、控訴人に駐車場建物所有の目的でマンション敷地の一部を使用させることを承認して区分建物とその敷地権たる共有持分権を取得したと認めるほかない。」と苦しい理由付けで、「契約の法的性格は土地の使用貸借を伴う土地管理委託契約類似の無名契約」が成立したとしました。 ○ 以上:1,591文字
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