平成28年 7月22日(金):初稿 |
○「マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決紹介1」の続きで概要説明です。 先ず事案概要です。 ・Yは、本件マンションを分譲業した業者で、マンションの敷地について登記簿上1万分の90の共有持分権を有し、マンション敷地一角に平家建ての駐車場(屋上も利用)を所有して賃貸 ・Xは、本件マンションの管理組合の理事長であり、管理組合の総会決議により訴訟追行権者に選任された者 ・Xは、Yに対し、本件マンションは完売されたから、Yに留保された本件土地の共有持分は存在せず、Yは駐車場建物により本件土地部分を不法に占有してとして、土地共有持分権侵害による損害賠償ないし駐車場建物敷地の利用による利得の返還を求めた ・Yは、マンション敷地の共有持分を留保しており、駐車場敷地については、地上権、使用借権、団地建物所有による敷地利用権を有すると主張 ○争点は以下の通りです。 1.マンション敷地共有権者 Xは、分譲マンション区分所有者全員の共有と主張し、Yは、自己も1万分の90の共有持分権利者と主張 2.Yの駐車場建物敷地占有権限の有無 Yは、本件マンション分譲に際し、Y所有駐車場建物の所有と専用使用することを説明し、Xらはこれを承認して分譲を受けたのでXらとの間で地上権設定契約成立、またはYは共有持分権に伴う敷地利用権があり、または8000万円を投じて駐車場建物を建築しXらに低廉価格で賃貸しているのに明渡を求めるのは権利濫用と主張 Xは、Yは共有持分権での議決権行使、費用負担もせず、実質は共有持分権を有していないのでYの敷地利用権の主張は前提を欠き、また、本件駐車場建物は原始管理規約においても団地建物の対象とされておらず地上権設定もない 3.金員請求権の存否 Xは、Yによる本件駐車場建物敷地部分使用について賃料相当額損害賠償義務ないし不当利得返還義務があると主張 Yは、本件駐車場建物敷地部分使用は、地上権ないし敷地利用権等法律上の原因があり、不法行為ないし不当利得による返還債務は生じないと主張 ○これについての福岡高裁判断概要は以下の通りです。 ・Yも1万分の90の共有持分権を有する共有者の一人 ・本件マンション分譲の際の重要事項説明書には、「一敷地内にA棟とB棟のマンションと駐車場(Y所有)と別敷地内にC棟(予定)からなっています」と記載 ・売買契約書・原始管理規約には、「駐車場」の記載はあるが「駐車場建物」の記載はない ・本件駐車場建物の屋上駐車場は一区画当たり月額7000円、一階駐車場は一区画当たり月額1万1000円であり、Yがその利益を収受 ・マンション分譲の際の「散らし」、「物件説明書」、「重要事項説明書」には、「駐車場(Y所有)」の記載はあるが、この駐車場の根拠となる権利・収益帰属先等の説明がなく地上権設定契約等は認められない ・Yが本件駐車場建物から生じる収益をもって本件駐車場建物の建設に要した費用を回収した暁には、本件駐車場建物の所有権を最終的にマンションの区分所有者らに帰属させることを内容とする土地の使用貸借を伴う土地管理委託契約類似の無名契約が成立 ・Yに本件駐車場建物敷地部分使用権限があることは認められるが、地上権設定契約は認められない ・Yに不法行為責任はないが、本件駐車場建物から生じる収益について独占する法律上の理由はなく、駐車場建物敷地部分賃料相当額について不当利得返還債務を負う ・ ○その結果、主文は以下の通りでした。 主 文 一 Yの控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。 1 YはXに対し (一)別紙認容金額一覧表記載の各賃料相当額及び各金員に対する同表の各利息起算日から完済までいずれも年5分の割合による金員 (二)平成7年10月1日からYが本件駐車場建物の建物の所有権をXに移転するまで月額金43万1876円の割合による金員を支払え。 2 Xのその余の請求(当審で拡張された請求を含む)を棄却する。 二 Xの附帯控訴を棄却する。 三 訴訟の総費用はこれを1分し、その1をXの負担とし、その余をYの負担とする 以上:1,662文字
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