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取得時効要件”自主占有”に関する重要最高裁判決2件紹介

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平成26年 6月 4日(水):初稿
○占有における「所有の意思」の判断基準に関する昭和45年6月18日最高裁判決(判タ251号185頁、判時600号83頁)と昭和54年7月31日最高裁判決(判時942号39頁、金融法務事情923号42頁、判タ411号261頁)全文を紹介します。私なりの説明は、別コンテンツで行います。


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主  文
本件上告を棄即する。
上告費用は上告人の負担とする。 
 
理  由
 上告人の上告理由および上告代理人○○○○の上告理由について。
 所論指摘の事実関係に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、右認定判断の過程に何らの違法も存しない。上告人が昭和21年5月1日被上告人から賃借して占有するに至つた土地が、等一審判決添付目録記載の区画整理前の本件土地二筆であることは、原判文上、その挙示する証拠と対比して明らかであり、所論の甲号各証は、必ずしも原審の所論の事実認定の妨げとなるものではないから、原判決がこれらの書証を判文上いちいち排斥し、または排斥する理由を説示することがなくても、これをもつて所論の違法があるとすることはできない。

 そして、占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきであり、原審の確定した事実によれば、前示の賃貸借が農地調整法5条(昭和21年法律第42号による改正前のもの)所定の認可を受けなかつたため効力が生じないものであるとしても、上告人の占有をもつて他主占有というに妨げなく、同旨の原審の判断は正当として首肯することができる。

 したがつて、民法186第所定の所有の意思の推定はくつがえされたものというべきであり、上告人が同決185条の規定により右占有の性質が変じたことを主張立証しないかぎり、上告人において本件土地を時効により取得したとする余地はないところ、所論の主張事実により占有の性質が変じたとすることができないことはいうまでもなく、上告人は他に同条の規定の適用を受けるべき事実関係を主張立証しないのであるから、原審が上告人において所論の期間所論の土地を占有したかどうか、またその占有が自主占有であるか否かにつき、いちいち判示することがなくても、これをもつて違法とすることはできないのである。原判決に所論の違法はなく、論旨は、すべて、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するか、独自の見解に基づき原判決を攻撃するに帰し、採用することができない。
 よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 大隅健一郎)



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主  文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。 

理  由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由について
 原判決及び記録によると、原審は、被上告人が訴外Aによる本件土地の取得時効を主張するにあたり、まず同女が大正年間に訴外Bから本件土地を賃借してその占有を開始した旨を主張し、後に本件土地の取得時効の成立を争う上告人が右主張を援用するに及んでこれを撤回し、上告人がその撤回に異議を述べたのに対して、占有開始原因がどのようなものであるかは取得時効の要件ではなく、したがつて占有の開始が賃貸借による旨の被上告人の主張は自白にあたらないとの見解のもとに、その撤回を認め、訴外Aが大正15年6月30日当時本件土地に居住していたとの事実に基づいて同日を始期とする本件土地の取得時効の成立を認めたことが明らかである。

 しかしながら 占有者は所有の意思で占有するものと推定されるのであるから(民法186条一項)、占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が他主占有にあたることについての立証責任を負うというべきであり、占有が自主占有であるかどうかは占有開始原因たる事実によつて外形的客観的に定められるものであつて、賃貸借によつて開始された占有は他主占有とみられるのであるから(最高裁昭和45年(オ)第315号同年6月18日第一小法廷判決・裁判集民事99号375頁参照)、取得時効の効果を主張する者がその取得原因となる占有が賃貸借によつて開始された旨を主張する場合において、相手方が右主張を援用したときは、取得時効の原因となる占有が他主占有であることについて自白があつたものというべきである。

 してみると、本件においては、本件土地の占有が賃貸借によつて開始されたとする被上告人の供述が自白にあたることが明らかであるから、まず自白の撤回の点について右自白が真実に反しかつ錯誤に基づくものであるかどうかを審理し、その結果、自白の撤回が許される場合には本件土地の自主占有開始の時期及び原因について、自白の撤回が許されない場合には賃貸借による占有が自主占有に変更されたことを裏付ける新権原の存否について、それぞれ審理する必要があるものというべきであるところ、これと反する見解のもとに、これらの点について何ら審理をすることなく、訴外Aによる本件土地の取得時効の成立を認めた原判決には、法令の解釈の誤りによる審理不備の違法があるというべきであつて、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 そして、叙上の点についてはさらに審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法407条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  (横井大三 江里口清雄 高辻正己 環昌一)
 

以上:2,383文字

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