平成25年10月23日(水):初稿 |
○「昭和49年5月2日東北大学法学部小嶋和司教授講義ノート紹介」の続きです。 とある事情で、私の大学時代の講義ノートを示す必要があるためと、私自身、昭和52年10月司法試験合格後は、殆ど、憲法に触れることがなくなり、人権感覚が徐々に希薄化し、「日弁連は、人権、人権と五月蠅すぎる、人権なんて多少はないがしろにされた方が、人間強くなる!」なんて公言する、「トンデモ」弁護士になってしまったため、少しは、大昔に習った憲法を復習しようという気持にもなったからです(^^;)。私の司法試験受験当時は、有斐閣法律学全集の清宮憲法、宮沢憲法の2冊が絶対の教科書で、必読の書と言われましたが、私は、この2冊購入した記憶はありますが、読んだ記憶は殆どありません(^^;)。 ○私の受験時代の憲法学習は、この小嶋憲法講義ノートの復習に尽きました。昭和49年5月2日の「マッカーサー草案から始まる」講義ノートを第1頁として、昭和50年2月1日最終日までの全講義内容を全280頁で、小嶋憲法講義で話された内容を冗談まで含めて、ほぼそのままノートに小さな文字でビッシリと記載し、青色B5版ファイルで「憲法講義Ⅰ、Ⅱ」の2分冊にしていました。 ○この講義ノート「憲法講義Ⅰ」、「憲法講義Ⅱ」のルーズリーフには表側だけに記載して裏側は余白となっていました。そこで、、この裏側に関連する判例・学説等を後日補充していきましたが、全体量を10とすれば、8が小嶋講義内容で、補充分は2にもなりません。この青色B5版ファイル2冊の憲法講義ノートが、私の大切な唯一の受験教科書であり、上記、伝統ある有斐閣法律学全集清宮憲法、宮沢憲法の2冊より、私にとっては遙かに重要な憲法文献です。有斐閣法律学全集清宮憲法、宮沢憲法の2冊は、殆ど読まなくても、この講義ノートを繰り返し読んでその内容を出来の悪い頭に叩き込んだだけで司法試験に合格出来ましたので。 **************************************** 東北大学法学部 小嶋和司教授講義ノート 5/9 ②政令の所管事項-以上の法形式において何を規定しうるか 政令の所管事項は憲法§73-6に規定 <§73内閣の職権> この憲法及び法律の規定を実施するためのもの-執行命令 (ア)政令は実施対象たる規定の存在が前提となる 憲法の規定は全103条のみ。憲法の条文を検討すると政令による実施になじむものがあるかどうかは疑問。あるとしても1,2ヶ条。 政令の所管事項は主として法律の規定実施のためものになる。 (イ)実施対象たる規定の目的・内容実現を志向するものでなければならない (具体化・細則化) (ウ)実施対象たる規定に違反し得ない (エ)独自的に国民の権利・自由への制約を創ってはならない §41からくる制約 独自的でなければ国民の権利・自由への制約を創設してよい →法律の委任がある場合(後述P165) 内閣法§11 政令には法律の委任がなければ義務を課し、権利を制限する規定を設けることはできない。 ※自由の制限 訓示的規定? (オ)法律Aの実施のための政令a’が制定された後、Aが廃止された場合、a’は所管事項の前提を失うから廃止手続を待たず効力を失う。 政令は法律の下請的な存在と考えられる 総理府(※現在名称は内閣府)令・省令の所管事項 国家行政組織法§12Ⅰ §14 法律・政令を実施するために制定、法律の委任があれば省令で罰則を設けても良い 「条例」地方公共団体の法 §94「法律の範囲内」で条例を制定できる。 -法律が定める所管事項の範囲内 地方自治法§14 普通地方公共団体-都道府市町村-は2条2項-都道府市町村が処理しうる事務-の事務に関し法令に違反しない限り条例を制定できる。 「法令」-法-法律 令-命令 命令は行政機関が制定する法…政令、総理府令、省令 条例の形式的効力は総理府令・省令に劣る。 法律→政令→総理府令…→条例 →省令 →実施する関係 …→違反しない限りにおいて→前述(ア)(イ)(エ)は適用されない。従って条例の所管事項はかなり広くなる。 実施対象たる規定の存在は必要ない。又、その目的内容の実施を指向しなくてもよい。独自的に住民の権利、自由を制限をも創りうる。 ex長野県みそ検査条例、飼犬取締条例 条例制定権とは地方公共団体の自主(自治)立法権である。 法律による授権は要しない。但し、罰則を定める場合は法律による特別委任が必要(判例)-後述P267 独自的に権利自由の制約のできるのはどの段階か ①法律-国会の議決により制定 ②条例-地方議会の議決により制定…法律が国会の議決により制定される場合とパラレルな関係。 同一法形式の間-法律と法律の間-に内容の矛盾のある場合。 ・一般法と特別法の関係の場合は特別法優位の原則あり。 ex民法より、借地法、借家法が優先 ・後法は前法に優位する。 (二)「最高法規」の意味 §98 「違反しえない」という意味での最高法規 憲法は国政の内容を網羅している訳ではない。法律は独自的に国政の内容を規定できる。 「効力を有しない」…民法でいう無効とは異なる。 独自的国家機関は自らの権限及び権限行使の態様について第1次認定権をもつ。他に公的認定権者が存在して、公式に効力を否認しない限り当該機関の行為は有効なものとされる。従って、国会の制定した法律は他に公的認定権者が存在して公式に効力を否認しない限り有効 「効力を有しない」とは取消しうべき違法に類すべきものである。 「法規」とは 前世紀のヨーロッパ諸国では法律に対してこれが違法であるかどうか公的認定機関は存在しなかった。立法部が第一次的認定権をもち、もはや他の機関は立法の効力を左右できなかった。行政部は立法部と同様の地位しかなく、立法部の行為に対して、三権の同権性を被るような行為はできなかった。 この結果、憲法典は観念的には、supreme lawとされたが、現実には立法部の自律によって守られ、立法部に自律がなかったとしても立法部の行為は実際上の効力をもった。憲法典は立法部に対して他律的現範としての意味をもたなかった。 かくてヨーロッパでは憲法典は厳格な意味の法ではなく政治原則の宣言にすぎないという考え方があった。 米国では、裁判規範のみがlawであると考えられ、しかも憲法典自身が自己をsupreme lawと称しているため、裁判所は適式に訴訟がもちだされ、その中で立法の違憲性が争われると原則として立法の合憲性についても判断するとという態度が確立された(19c初)。ここでは憲法は原則として裁判規範とされた。 このように19cにおいては、米国とヨーロッパでは憲法典の考え方が対立していた。 しかし、第1次大戦後は米国の考え方がヨーロッパに影響を与えた。例えばドイツでは1919年、ワイマール憲法下で米国流の考え方が裁判所で採用された。又1920年のオーストリー憲法は、憲法裁判所制度を始めて創り、立法も裁判の対象とした。 1948年イタリア憲法は憲法裁判所制度を採用し、1949年もボン憲法もこれにならった。 日本国憲法の最高「法規」は原則として米国的裁判規範を意味する。これを§81が側面から支持。 §81の結果…最高裁判所の憲法判例は憲法典に準ずる重要な法源となる。 (三)旧法令の効力 新憲法は立法その他の手続を変更するのが通常→一応旧法令は旧手続により定められたものであるからその効力が一応問題となる。 そのため、この点につき規定を設けるのが普通、明治憲法には§76にこの点を規定…憲法に矛盾しない限り現行の法令は効力をもつ。ex.決闘罪に関する件は有効、 制定手続の問題ではなく、専ら内容の問題-内容的に矛盾しない限りという意味 日本国憲法にはこのような明確な規定はない。 (最判)23.6.23最高裁大法廷判決 憲法§98Ⅰにいう法律・命令には旧憲法時代のものも含む。従って§98Ⅰは旧憲法時代の法律・命令でも内容的に新憲法に矛盾しなければ有効であるということを示す役割も果している。 明治憲法下の緊急勅令の問題 緊急勅令は後に帝国議会の承諾があれば法律としての効力をもつことになり現行憲法下でもその効力を有する。 明治憲法以前の法令の効力…太政官布告65号(明治6年)…死刑の執行方法を決めたもの (最判)36.7.19大 太政官布告65号は明治憲法76条により法律になった。従って23.6.23最高裁判決により現行憲法下でも法律としての効力をもつ。 以上:3,506文字
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