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日本国憲法第16条請願権について小島和司教授講義ノート

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平成24年 8月24日(金):初稿
○私が法律の勉強を始めたのは、昭和47年4月の東北大学法学部2年次から始まる専門科目の憲法、刑法、民法の講義を聞き始めた20歳のときからです。当時、司法試験を受けるという考えがあり、また、法律の勉強は講義を真面目に聞くことが一番効率的とも聞いていましたので、専門科目で且つ司法試験受験科目の授業は真面目に聴講するつもりで、2年次から法律専門科目の講義は心待ちしていたものです。一浪してようやく大学に入学した1年次は教養部で法律専門科目授業はなく、法律の勉強は全く始まっていませんでした。

○2年次から聴講した専門科目の内小嶋和司先生の憲法、荘子邦雄先生の刑法総論は、大変格調高くも判りやすく感じて、懸命にノートを取り、結局、両先生の講義は、同じ内容のものを3年間継続して聴講しました。小嶋和司先生は、ちと近づきがたい感じがしましたが、講義での話が、一言一言をノートさせるべく大変ゆっくりしたもので、また、話の内容も判りやすく、懸命にノートを取ったものでした。2,3,4年次の3回同じ内容のノートを別々に取り、4年次には、既に2回も聴講しているので、時折、はさむ冗談も予想して、この冗談までノートに取る余裕が出来ました。

○そのため憲法講義ノートは大変充実し、当時、司法試験合格のためには、法律学全集の清宮憲法Ⅰ、宮沢憲法Ⅱが定番の教科書でこれらを読み込まないと合格は出来ないと言われていましたが、私は小嶋和司先生の講義ノートに、当時200頁足らずの小嶋和司先生著作「憲法概観」で補充したノートだけで司法試験に挑み、定番の教科書は殆ど読まずに済みました。3年間も継続して小嶋和司先生の講義を聴き、また、熱心にノートを取ったお陰で憲法は、好きな科目になり、当時、短答式試験合格のためには、憲法については正確な条文知識が必要とされ、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」から始まる前文から、「但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。」で終わる103条までの全憲法文言を一字一句漏らさず完全暗記しました。

○ところが、試験に合格して実務の世界に入ると、憲法は殆どと言うより全く使う必要がなくなり、司法修習時代までは、憲法条文を覚えていたものが、弁護士になって数年経ると折角全部暗記した憲法条文の忘却の彼方になりました。しかし、憲法は国家の根幹を定める法規であり、時に、復習しなければと思いながら、なかなか実行出来ません。そこで、丁度40年前の昭和47年から取り始めて4年次の昭和49年に取った小嶋和司教授憲法講義ノートを取り出し、復習を決意しました(^^;)。

先ずは、憲法第16条請願権で、条文内容の確認です。
第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

○小嶋和司講義ノート備忘録
請願権とは
参政権としての面-民意・民情を政治に反映させることをねらっての権利
自由権としての面-ひとたび請願権が認められると請願は自由に行われ、請願したからと言って差別待遇は受けない
ex.米国憲法では請願の自由と規定されている。

請願の法的効果-請願の内容を必ず実現して貰える保障ではない。請願とは民意・民情を述べて公務所に提出できることであるが、公務所の側ではこれを受理する義務があるだけで内容については自己の判断で処理する。
請願権の具体的効果は文書を受理して貰うだけ-国務請求権としての面

「平穏に請願する」と言うことが重要
請願は多くの場合、苦情の表明が多く、歴史的には平穏を欠いてなされることが多かった
ex.明治憲法第30条 日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得
公務員は天皇のservantである。

請願とは公務所に要望を述べるだけ。その効果は文書を受理して貰うだけで、その処理について公務所は報告義務もない。但し、請願法では誠実に処理すべきことを規定している。
請願権は参政権であるが、決定的意味がないので外国人にも認められる。法的効果のある参政権(選挙権等)は外国人には認められない。

参考請願法
請願法【目次】  昭和22・3・13・法律 13号  
第1条 請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。 
第2条 請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。 
第3条 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
2 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる。 
第4条 請願が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。 
第5条 この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。 
第6条 何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇を受けない。
附 則この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。




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