平成24年 7月10日(火):初稿 |
○平成24年7月9日、日弁連業務改革委員会が開催されましたが,委員会終了後、私が所属する新分野PT主催で信託法研究エキスパートの新井誠氏を講師に「今後の弁護士業務と信託ー立法課題の観点からー」と題する学習会が開催されました。新分野PT活動の一つに弁護士業務に信託業務を取り入れる方策の検討があり、この方策の一環としての勉強会でしたが、新分野PT所属メンバー僅か数名の参加のところ、全体で40名を超える参加者が居て、信託業務に関心を持っている方が多いのに驚きました。 ○ウィキペディアでは、 信託(しんたく、英: trust)は、ある人Aが自己の財産を信頼できる他人Bに譲渡するとともに、当該財産を運用・管理することで得られる利益をある人Cに与える旨をBと取り決めること、およびそれを基本形として構築された法的枠組みを意味する。Aを委託者(settlor, trustor)、Bを受託者(trustee)、Cを受益者(beneficiary)と呼ぶ。信託された財産を信託財産と呼ぶ。受託者は名目上信託財産の所有権を有するが、その管理・処分は受益者の利益のために行わなければならないという義務(忠実義務)を負う。と解説されています。 ○信託及び信託業務に関する基本条文は次の通りです。 信託法第2条(定義) この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。 2 この法律において「信託行為」とは、次の各号に掲げる信託の区分に応じ、当該各号に定めるものをいう。 1.次条第1号に掲げる方法による信託 同号の信託契約 2.次条第2号に掲げる方法による信託 同号の遺言 3.次条第3号に掲げる方法による信託 同号の書面又は電磁的記録(同号に規定する電磁的記録をいう。)によってする意思表示 3 この法律において「信託財産」とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。 4 この法律において「委託者」とは、次条各号に掲げる方法により信託をする者をいう。 5 この法律において「受託者」とは、信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。 6 この法律において「受益者」とは、受益権を有する者をいう。 (省略) 信託業法 第2条(定義) この法律において「信託業」とは、信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。 第3条(免許) 信託業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。 ○弁護士業務としては、上記のB受託者を業務として取り入れることが出来ないかどうかが検討されています。私自身は、弁護士業務として信託契約の内容検討・契約書作成等は成り立っても、弁護士自身が受託者となって信託契約の当事者になるのは、ちと難しいのではないかと思っておりました。上記の通り信託業法第3条で信託業を営業として行うには内閣総理大臣の免許が必要で、おそらく、現在は殆ど金融機関が独占しているのではないかと思われます。信託業務に免許が必要なのは、他人の重要財産の名目上所有権を取得して管理処分を権限を与えられるわけでその信用性・財務能力の担保が必要だからです。 ○弁護士業務をしていると、たとえば未成年者が交通事故で重篤な身体障害者になり、大きな金額の賠償金を取得した場合等に、本人が財産を管理処分する能力がなくなったので弁護士さんが預かって管理して欲しいと言うような要請を受けることがあります。過去には、未成年者が事故で視力を失い、大きな金額の賠償金を取得しましたが、当時18歳で風俗等の利用で浪費が激しいので、弁護士さんが預かって本人には毎月一定額しか渡さないようにして欲しいと母親から強く要請されたことがありました。弁護士はそこまでの業務は出来ませんとお断りしましたが、このような財産管理は信託によって実施出来ることもあるようです。 しかし、これまでの感覚からは,弁護士業務としてここまでは出来ないと感じていましたが、幅広いニーズに応えるサービス業としては、その方策について検討が必要と感じた次第です。 以上:1,892文字
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