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多数相続人相手の登記訴訟での注意事項-個人情報等

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平成23年12月13日(火):初稿
○「多数相続人相手の登記訴訟での注意事項-事前説明必要」を続けます。
 多数相続人を被告とする登記関係訴訟で請求の趣旨典型例を紹介します。
1 被告らは、原告に対し、別紙不動産目録記載の土地について、昭和○年○月○日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決。


○被告とされて訴状を送りつけられた方は、先ず被告とされたことに立腹し、更に訴状の請求の趣旨の中の「訴訟費用は被告らの負担とする。」とも文言に驚き、心配性の方は、ノイローゼ状態になるほどです(^^;)。そこで、事前に訴訟費用の負担はありませんから、心配されないようにとの説明文書を出すのですが、ある弁護士に話したら、「訴訟費用は被告らの負担とする。」なんて請求の趣旨に入れなければ良いのにと軽く言われて、ハタと「そりゃそうだ」と気付かされました(^^;)。

○習慣とは恐ろしいもので、訴状請求の趣旨には反射的に、と言うより、書式に必ず「訴訟費用は被告らの負担とする。」との文言が入ってるのでそのまま入れていましたが、考えてみると、これは必要的記載事項ではなく、必要なければ入れなくても良い文言でした。弁護士31年経過して初めて教えられ、今後は、この種訴訟に限らず、必要がないときに余計な文言は入れないように注意します(^^)。

○この多数相続人相手の訴訟の事前説明で更に気をつけなければならないことを最近痛感させられたことがあります。4代も遡る先祖名に登記されている不動産の登記抹消請求事件でしたが、被告が20名程ほどいて、司法書士さんが作成した2頁に渡る相続関係説明図と20名の被告全員の住所氏名を記載した被告目録付きの訴状を添付して、訴訟に至った経緯等説明した事前説明文書を20名の方全員に送付しました。この20名の方は同一先祖を持つ方々ですから親戚同士になります。

○ところが被告の中のある方から、他人の住所氏名を勝手に表示して個人情報保護法違反ではないか、私は、親戚付き合いが嫌で10年前から姿を隠して住所も親戚には教えていなかったのに、弁護士さんの文書のお陰で親戚みんなに明らかになった、一体、この精神的苦痛をどうしてくれるんだと強く抗議され、困惑しました。

○このような場合、住所なんて戸籍附票を追いかければ直ぐ判り住民票で公開されていることだし、訴状には被告全員の住所氏名を書かなければならないことになっているのだから仕方のないことだと、当初から理屈で高飛車に反論すると、相手の怒りは高まる一方となります。私は、当初は,ただひたすら配慮不足で申し訳ございませんでしたと、心からお詫びの言葉を発し、多少事情をうかがって、更にお怒りごもっともですと相手方に同調します。怒りの情を持った方に、理屈を説明すると益々怒りの情は高まるからです。最後は、私も弁護士相談して今後の対処を考えると言われましたが、弁護士に相談して仕方がないと説明を受けたのかどうか、その後、何も言ってきませんでした。

○更に相続関係説明図に対して抗議を受けたこともあります。夫が亡くなって妻と子供が相続人のところ、夫生前離婚して相続人ではなくなっていたことを示すため平成○年○月○日離婚との説明文言が相続関係説明図に記載されていたことに、なくなった夫の関係者から離婚の事実は親戚には伏せていたのにこの相続関係説明図のために明らかになってしまったと抗議されました。

○以上の2つの抗議を受け、この種訴えの事前説明文書には訴状は添付しても被告目録と相続関係説明図は絶対に添付してはいけないと事務処理マニュアルにシッカリ書き込みました(^^;)。なお、裁判所に上記事情を話して、裁判所が送達する訴状も被告目録と相続関係説明図を外すことは出来ませんかと相談したら、ダメだとアッサリ断られました。この種訴訟では、裁判所に個人情報保護の姿勢はなさそうです。
以上:1,593文字

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