平成23年 4月21日(木):初稿 |
○震災関連の無料相談を実施していますが、その相談の中で多いものに津波で死亡或いは行方不明になった方の関係者からの質問があります。最初に受けた質問は、介護施設に入所していた父の妹Aさん(70歳)が介護施設ごと流されてしまい、遺体で発見されたが、Aさんは独身で、身寄りは兄である父(75歳)だけのところ、父も高齢で身体が不自由なので、自分が遺体の確認に行ってきたが、父は災害弔慰金が貰えませんかというものでした。 ○そこで災害弔慰金の支給等に関する法律を確認すると、死亡災害弔慰金は第1条で「災害により死亡した者遺族」に、第2条で「災害」とは、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象により被害が生ずること」されており、「遺族」であれば受給権者になります。問題は、この「遺族」の範囲ですが、第3条2項で「死亡した者の死亡当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含み、離婚の届出をしていないが事実上離婚したと同様の事情にあつた者を除く。)、子、父母、孫及び祖父母の範囲とする。」と規定されており、兄弟姉妹はその範囲に含まれていません。従って前記の兄(75歳)は、Aさん死亡による災害弔慰金受給資格はなさそうです。 ○災害弔慰金で次に受ける質問は、受給権者の順位です。具体例としては、同居しているBさん(85歳、女性)とその長女Cさん(65歳、夫は既に死別)が共に津波で流されて死亡しましたが、同居家族は、Cさんの長男Dさん(40歳)の一家(夫婦と子供2人)の計6人でした。そしてこの6人の家族の生活は、Dさんが支えており、Dさんは祖母Bさんと母Cさんのいずれも扶養家族に入れていました。Bさんの相続人には、長男のEさん(55歳)も居ますが、折り合いが悪く20年以上前から別居しています。 ○この場合のCさん死亡による災害弔慰金は、配偶者が居ないので子Dさんになることは問題ありません。問題は、Bさん死亡による災害弔慰金の受給権者です。配偶者が居ないので子Cさんとなりますが、一緒に津波で流され死亡していますので、同時死亡となり、Cさんは受給権者になりません。すると折り合いが悪く別居していた子のEさんと言うことになります。しかし、Bさんの面倒はここ20年同居するC、Dさんが見てきたので、Cさんも死亡した以上、Dさんが受給権者となって然るべきと思います。 ○死亡災害弔慰金受給権者は、法律には、「配偶者(内縁も含む)、子、父母、孫、祖父母」と規定されており、孫であるDさんも受給資格範囲に入っています。問題はその順位です。順位については、災害弔慰金の支給等に関する法律施行令には記載が無く、災害弔慰金の支給等に関する条例に記載されています。 昭和49年9月29日仙台市条例第40号災害弔慰金の支給等に関する条例による受給権者の範囲・順位等は次のように規定されています。 第2章 災害弔慰金の支給 (災害弔慰金の支給) 第3条 本市は、市民が法第3条第1項に規定する災害(以下この章及び次章において単に「災害」という。)により死亡したときは、その者の遺族に対し、災害弔慰金を支給する。 (災害弔慰金を支給する遺族) 第4条 前条に規定する遺族は、法第3条第2項に規定する遺族とし、その順位は、死亡者の死亡当時において死亡者により生計を主として維持していた遺族を先にし、その他の遺族を後にする。この場合において、同順位の遺族については、次の各号に掲げる順序とする。 一 配偶者 二 子 三 父母 四 孫 五 祖父母 2 前項の場合において、同順位の父母については、養父母を先にし、実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし、実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし、実父母を後にする。 3 遺族が遠隔地にある場合その他の事情により、前2項の規定により難いときは、前2項の規定にかかわらず、第1項の遺族のうち、市長が適当と認める者に支給することができる。 4 前三項の場合において、災害弔慰金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人に対してした支給は、全員に対してされたものとみなす。 ○この第4条3項「3 遺族が遠隔地にある場合その他の事情により、前2項の規定により難いときは、前2項の規定にかかわらず、第1項の遺族のうち、市長が適当と認める者に支給することができる。」の規定に従って、先の例ではBさん死亡による災害弔慰金は、子Eさんではなく、孫Dさんとすべきと、仙台市長に談判する価値はありそうです。 以上:1,875文字
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