平成22年 7月20日(火):初稿 |
○「ある交通事故事件の顛末-事故の具体的状況と治療経過」の続きです。 Aさんは平成16年10月2日の事故で右眼を強打して腫れ上がり、10日程右眼を開けらず、眼が開けるようになってからもしばらくの間真っ赤に充血した続き、右眼ではボンヤリとしか見えなくなり、10月26日に某総合病院眼科を受診して各種検査を受けた結果、右眼視力は事故前1.5が、事故後0.05に低下し、その後、6ヶ月間に12日通院し、各種目薬の投薬を受け、治療に努めました、回復せず、平成17年4月主治医より外傷性視神経損傷で回復可能性がないと宣言されました。 ○訴状請求の原因では次の通り、主張しました。 原告は、甲8の1乃至4記載の通り、○○病院B医師の診察を受け、本件事故後に右視力0.05までの低下と右視野狭窄の進行が認められ、薬物治療を受けるも改善せず、「外傷性視神経損傷の後遺症として右視力低下(0.05)及び視野狭窄が認められる」診断を受けている(甲8の3、甲9)。○ところが、加害者側保険会社は、一審段階では、顧問医の3通の意見書を根拠としてAさんの視力低下・視野狭窄は詐病(本当は見えているのに見えないふりをしている)であると強硬に主張してきました。 ○3通の意見書結論骨子は以下の通りです。 (1)平成18年10月20日意見書(乙1) 検査結果の信頼性は極めて低いと評価され、視力・視野検査はA殿の真の状況を表していないと判断(乙1) ※検査結果は詐病であると断言。 (2)平成19年8月27日意見書(乙5) 「患眼(右眼)が悪いことを強調しようと、健眼(左眼)の場合には過剰反応していた」という意味で、A殿の故意・作為を更に強調し、A殿の訴えられる視力低下・視野障害は事故に起因する器質的障害によるものだけでなく、(被検者の応答に依存する)自覚検査ゆえの異常。 ※検査結果は自覚検査ゆえの異常と詐病を示唆。 (3)平成19年12月10日意見書(乙7) 自覚検査結果と他覚検査結果の間に多くの矛盾があることからも、A殿の自覚検査結果そのものを信用することができない。 ※正に詐病と断言。 ○保険会社顧問医意見書理由等要点は論点毎に整理すると以下の通りです。 ①傷害部位 外傷性視神経症は、眉毛部外側の打撲により介達性に視神経管部視神経が障害されるものであり、原告の本件交通事故での傷害は右眉下方、右眼の上下に「裂創」であり、いずれも「眉毛部外側」ではなく、外傷性視神経症を惹起する受傷機序ではない ②視機能低下発生時期 原告は事故直後には視機能低下を訴えず、事故から25日間も経過した10月26日に眼科を初めて受診している視機能低下を訴えるのは、極めて不自然。 ③視神経損傷の存否 眼底の視神経萎縮と視神経乳頭の蒼白化が、原告右眼には出現していないので、外傷性視神経障害が存在しない。 ④外傷性の根拠 そもそも視神経損傷は存在しないのだから、外傷性視神経損傷は存在しない。 ⑤フリッカー計検査結果 原告のフリッカー計での中心フリッカー値は、健眼(左眼)28~32Hz、患眼(右眼)32~42Hzとなっており、視神経機能は右眼の方が左眼より良好であり、右眼だけの視力低下はあり得ない。 ⑥ゴールドマン視野計検査結果 原告の検査結果は、平成16年10月27日初診時1回目検査が最も視野範囲が広く感度も良好であり、中心部はⅠ/2視標が見えており、このような小さな視標が見える場合の視力は少なくとも1.0の視力はあったはず。 ⑦オクトパス視野検査結果 右目偽陰性率の検査結果評価は、平成16年10月26日が12.5%、同年12月2日が50%、平成17年4月1日が37.5%と後ろ2回が高い検査では、結果が不当に低く出ている可能性が高く、真実の原告の視野はもっと良好である可能性が極めて高い、要するに原告は本当は見えるのに見えないと申告している。 ⑧Swingingflashlight-test検査結果 右眼の「RAPD」(相対性瞳孔求心路障害)が陰性の結果となっており、陰性とは正常であるので、視力0.05に落ちているのはおかしい。 以上:1,730文字
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