平成20年 8月28日(木):初稿 |
○2人以上の者が共同で一つの物を所有することを共有と言い、例えば土地について3人で各3分の1ずつの共有の例などがよくあります。共有者同士仲がよいときは、問題ないのですが、何らかの事情で不仲になった場合、色々と不都合が生じ、例えば土地の利用方法を巡って争いが生じる場合があります。 ○民法では、例えば共有土地を農地から宅地に造成したり、共有山林の立木を伐採する場合などは、「変更」に当たるとして共有者全員の同意が(251条)、またその利用方法についての取り決めすることは、「管理」に当たるとして共有者の持ち分割合の過半数(252条)で決するとされています。 ○共有不動産の賃貸については、共有者全員の同意が必要な「変更」なのか或いは持ち分割合の過半数の同意で足りる「管理」に該当するのか、民法の教科書によって説明が異なります。例えば、我妻民法講義323頁では、「土地、建物の賃貸は、不動産賃借権が強化された現在、特に地価の6割以上にもなる高額の権利金を収受しての借地権の設定は問題であるが、判例は、変更ではなく管理に当たるという」とされ、最判昭和38.4.19民518頁を引用していますが、この判例は私の利用する判例データベースで検索するも見つからず、その内容は現時点では確認できません。 ○舟橋物権法384頁では、民法第252条「管理」を共有物の利用及び改良に関する事項として、たとえ部共有建物について、各共有者の持ち分に応ずる使用にまかせるのも、一つの利用方法となりうるけれども、これを他人に賃貸するとか、共有者の1人だけに利用させるかというような問題は、共有建物の利用に関する物で、「管理」に当たるような説明をしています。 ○注釈民法では「変更」とはおおむね共有物を事実上変形させる行為のみを「変更」に当たると説明し、法律的な変更としての共有物全部の処分は各共有者がその持ち分につきそれぞれ権利を設定する行為だから各自の意思に基づくことが必要であり、それは民法第251条の「変更」としてではなく、持ち分の性質上当然に必要となるとの説明がなされ、賃借権の設定には共有者全員の同意が必要になるようにも読めます。 ○これに対し、法学セミナー基本法コンメンタール120頁以下では、民法第251条の「変更」とは、共有権者の使用権能を制限する結果を招くことで、共有物の貸付、質入れ、転用、共有建物改築、地上権や抵当権の設定等が、この「変更」に該当するものであると説明し、更に共有物の売却その他の処分は、共有持分権も所有権に他ならないから所有者自らの意思に基づかず所有権を処分できない以上、所有者全員の同意が必要なことは「当然」のことと説明し、前記注釈民法の説明と同様にも読めます。 ○私は受験時代は、前記我妻・舟橋説明に従って、単純に、売却は「変更」で全員一致が必要、賃貸は「管理」で共有持分権割合過半数の同意が必要と覚えていましたが、教科書を良く検討するとそう単純ではないようで、賃貸は「変更」と考えた方が合理的なようです。但し、この問題を明快に判断した判例は現時点では私が利用する判例データベースでは見つけることが出来ません。 以上:1,298文字
|