平成20年 6月 2日(月):初稿 |
○「初めての公判整理手続事件-調書原則却下に面食らう」に記載したとおり、初めての公判整理手続事件で裁判員制度想定公判供述中心刑事裁判手続のため検察官提出証拠の殆どが却下となり面食らってしまいました。 ○何故面食らったかというと、これまでの調書裁判は、検察官提出供述調書の殆どを同意して、その調書中心の裁判手続だったからです。調書裁判における被告人質問或いは証人尋問は、被告人或いは証人の調書が裁判所に提出され裁判官がその調書を法廷外でじっくり読むことを前提にしており、法廷では調書を見ながら、その調書に記載のない点或いは不十分な点を補う形で被告人質問或いは証人尋問すれば足りました。 ○ところが裁判員制度想定の公判前整理手続では、時間の関係でこの調書を裁判員に読んで貰う訳にはいかず、原則証拠としては採用されませんので、被告人質問も証人尋問も調書は読まないことを前提に行わなければなりません。 ○と言うことはこれまでは調書に書いてあるので法廷で被告人質問或いは証人尋問の必要がなかった点も含めて被告人の言いたいこと、証人の言いたいことを全て法廷で述べなければなりません。この全て法廷で述べて貰うためには、その調書内容全てをじっくり時間をかけて検討し且つ被告人或いは証人と法廷での供述内容を詳細にじっくり時間をかけて打ち合わせしなければなりません。 ○要するに被告人供述調書或いは証人の供述調書は、裁判所で供述するための参考資料に過ぎず、これを元に法廷供述を組み立てる必要があります。供述調書は時に数冊の厚いものになりこれを全部法廷で述べるのは到底不可能です。ですから供述調書を読む時は、これからはこれをそのまま裁判所の証拠に使えないことを前提に、どのように裁判所で要領よく話して貰うかをチェックしながら読むとの姿勢が必要になります。 ○私が初めて経験した公判前整理手続での刑事裁判においては、当初、被告人本人供述調書は勿論のこと尋問予定の証人3名の供述調書と更に必要な関係者の供述調書が当然採用されて法廷で全文朗読され、それを前提に尋問を行えば良いと思っていました。しかし弁護側が同意して当然採用されると思っていた検察官提出証拠が殆ど却下され、弁護側としてもその証拠は必要と思うとの意見も容れて貰えませんでした。 ○そのため被告人質問も証人尋問も調書がないことを前提に調書内容の中で必要な点を述べて貰うため、その調書内容検討及び被告人・証人予定者との打合せ時間がこれまでの3倍以上かかりました。また当然証拠採用されると思っていた関係人の調書も却下されその調書内容についてのフォローも必要になり、証人予定者との打合せは相当神経を使わなければならず、これらが「慣れていないため大変しんどかった」と感じた次第です。 以上:1,141文字
|