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アパート2階のてすりのない窓から転落死亡事故と大家の責任

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平成20年 1月31日(木):初稿
○Aさん(50歳)は家庭の主婦ですが、2階建てアパートの窓から身を乗り出して洗濯物を取ろうとして誤って窓から転落し、急性硬膜下血腫により10日後に死亡しました。Aさんの相続人である夫Bさんと子供達は、Aさんが窓から転落したのはアパートの窓に手すり、柵または金網等が設置されていなかったことにあるとし、アパートの大家さん側に債務不履行ないし不法行為責任があるとして約4280万円の損害賠償請求の訴えを出しました。

○民法第717条には、土地の工作物等の占有者及び所有者の責任として、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」と規定されており、アパートの窓に手すり、柵または金網等が設置しなかったことが、「工作物の設置・保存の瑕疵」に該当するとBさんは主張しました。

○床面から窓の下部まで73㎝で確かに多少低い位置に窓がありましたが、普通は身を乗り出しただけで転落するだろうかと不思議に思いましたが、この事件の第一審判決は、「日常生活において、窓から転落する危険性はなく、通常の注意を払えば転落することはなく、本件窓の設置・保存に瑕疵があったということはできない。」としてBさん側の訴えを退けました(福岡地裁小倉支部平成18年2月10日判決)。

○納得できないBさん側は控訴して争いました。Aさんが窓から身を乗り出したのは洗濯物の出し入れのためでしたが、その洗濯物を干す竿が窓から多少離れた位置にありました。アパートの窓の両脇に洗濯物干し竿受けがついていましたが、普通は伸縮するところ錆びて伸びたままになっていたためです。

○控訴審では、この錆びて伸びたままになっている洗濯物干し竿受けを放置していたことが正に「工作物の設置・保存の瑕疵」に該当するとBさんは強く訴えました。その結果、高裁では、「本件窓には手すりや柵などは設けられていなかったのであるから、身を乗り出した場合には、窓下に転落する可能性がないとはいえず、特に、本件では窓の外に設置された物干し竿受けが錆びて本来の伸縮機能を失っていたことから、洗濯物を干すためには、本件窓からある程度外に身を乗り出さなければならないと考えられ、万一身体のバランスを失った場合には、そのまま転落する危険がなくはなかったのであるから、本件窓の設置・保存に瑕疵があったというべき。」とAさんの主張を認めました。

○但し、「通常の注意を払えば転落することはなく、Bらは本件竿受けの不具合を修理・調整することも、補修を求めることもなかったのであるから、Aに極めて大きな過失があったことも否定できず、90%の過失相殺」をして、最終的に大家さん側に350万円の支払を命じました(福岡高裁平成19年3月20日判決)。アパートの大家さんは窓の洗濯物干し竿受けの錆びにも注意しなければなりません。
以上:1,201文字

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