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配偶者の一方の「強度の精神病」と離婚-具体的方途論

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平成20年 2月 1日(金):初稿
○民法第770条で裁判上の離婚原因として次のように定めています。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。


○この中で1号「不貞行為」、2号「悪意の遺棄」、3号「3年以上生死不明」は一方に責任がある場合が殆どですが、4号「強度の精神病」については、一般的に精神病は本人の責任によって発症するものではなく、精神病離婚は破綻主義離婚法の典型であり、現行法が有責主義離婚法から破綻主義離婚法に移行したことを端的に示すものと解説されています。

○「強度の精神病」とは精神病の程度が夫婦としての同居・協力義務を履行できない程重症であることで、「回復の見込みがない」とは、読んで字の如くですが、具体的事案について「回復の見込みがない」との認定は、精神科専門医の鑑定などの客観的資料による裏付けが必要です。

○本人に責任が全くないのに不治の精神病にかかったことを理由に離婚して放り出されるのは余りに可哀相ではないかと言う考え方から、最高裁は民法770条2項の「一切の事情」を理由として、いわゆる具体的方途論と呼ばれる2点を要求しました(最高裁昭和33年7月25日判決)。
①夫婦の一方が不治の精神病にかかった場合、病者の今後の療養、生活などについて出来る限りの具体的方策を講じ、ある程度その見込みがたつこと
②精神病離婚手続においては禁治産宣告(現在は成年後見開始決定)を得て(成年)後見人となり後見監督人を被告として訴えること

○この具体的方途論については、これを要求したのでは具体的方途を講じる経済的余裕のあるお金持ちでなければ「不治の精神病」を原因とする離婚が出来なくなり、「不治の精神病」を離婚原因とした意味が無くなるし、そもそも具体的方途を強制的に実現する方法はないとして学説から強い反対がありましたが、最高裁はその後も同様の見解を繰り返し判示し(昭和45年3月12日、同年11月24日)実務上は具体的方途論が定着しています。
以上:1,004文字

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